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納税がお好き? 

2016年10月01日 ナビトモブログ記事
テーマ:テーマ無し

私は長いこと、商店経営をやって来た。
経営者最大の関心事、それは売り上げであった。
欲と二人連れ、寝ても覚めても、売り上げの増加を考えていた。

一方で、税金対策もまた、重要な仕事であった。
汗水垂らして、一年を働き、師走を過ぎると、
じきに申告書が送られて来る。
利益があれば当然に、税金を払わねばならない。
所得税を払うと、追いかけるように、地方税が来る。
さらには、その額に連動する形で、健康保険料を払わねばならない。
利益は欲しいが、儲かれば、後が怖い。
節税というものに、敏感にならざるを得なかった。

店の経費で落ちそうなものは、少額といえども、計上した。
塵も積もれば、何とやら……である。

幸いに、税に関し、ペナルティを受けたことはない。
一度、税務署に乗り込まれたことがあった。
税務調査というやつだ。
伝票やレシートの控えを、入念に調べられ、帳簿を精査された。

同じく、商店主である友人達は、調査を受けたが最後、
なにがしかの問題点を指摘され、追加納税を余儀なくされた。
これを修正申告という。
私は幸運であった。
修正にも是正にも、至らなかった。
概ね正直にやっていたのが、良かったのであろう。
「概ね」である。
完璧にとは、とても言い難い。
そこに運があったとも思っている。
これを友人達は「悪運が強い」と言った。

税金はいやだ。
出来るなら、払いたくない。
納めた税金が、世の役に立つなら、まだいい。
定数削減も出来ない議会の議員が、政務調査費などという、
いい加減な名目で、私達の血税を使いまくっている。
それを考えただけで、納税意欲が薄れる。
舛添前知事の問題もそうだ。
都民税なんか、誰が納めてやるもんかと思う。
結局は、払わざるを得ないのだが。

 * * *

私はこの度、本を出版した。
その表紙を、イラストでもって、飾ることにした。
内容の薄い本は、外観で勝負するよりない。
イラストレーターは、未知の方であり、女性である。
出版社を通し、依頼をした。

報酬を支払う段になり、出版社の社長が言った。
当社を経由すると、源泉徴収を行わねばなりません。
所得税に、復興税です。
その分、あちらの、手取りが減ります。
直接、著者の方から支払って頂いた方が、あちらにとって、お得です。
いかがですか、と言った。

私に、否やのあろうはずがない。
こちらの払う金額に、変りはない。
あちらの手取りが、減らないで済む。
それは、この際の名案であると思われた。
私は、彼女にメールで連絡し、その名案を伝えた。

おそらくは、主婦であろう。
主婦の傍ら、副業に、絵を描いていると思われた。
私の提案は、喜んで、受け入れられると思っていた。
しかし、届いた返信は、意外なものだった。

「折角のご好意ですので お言葉に甘えて…
と 申し上げたい所ですが、確定申告がございますので 
やはり出版社様を通して… と、思います。
お心遣いにとても感謝しております」
あくまで、税金を納めたいらしい。

私には、出来ないことだ。

私は、金物店を営んでいた。
配達に行った、顧客の家で、雑事を頼まれることがある。
曰く、戸の建て付けが悪い、カギの調子がよくない、などと。
金物屋にとっては、お手の物だ。
簡単なことなら、その場で直してあげる。
あるいは、道具を取りに戻り、また出直して、直してあげる。
「お幾らでしょうか」と聞かれるから、そこで、若干のお金を頂く。
千円、あるいは高くても、二〜三千円程度のことである。
これを売り上げに計上しない。
つまり、ポケットに入れる。

物品を販売したわけではない。
腕力と技術を、少々貸してあげただけだ。
客からの、心遣いだと思っている。
旅館の仲居さんへの、チップのようなものだ。
タクシーの運転手に「釣りは要らないよ」というようなものだ。

そんなもの、誰が表に出すものか。
どんな商売にだって、余得というものがある。
その一つだと思っていた。

女性は何か、勘違いをしていないだろうか。
私は再度、彼女にメールを出した。
本当に、よろしいのでしょうか?
もし、お気持が変わりましたら、まだ日にちがあります。
今からでも、間に合いますと。

そうしたら、すぐに返事が来た。
彼女の気持は、全く変わっていなかった。

「私は絵を描かせて頂ける事がとても有り難く、
どちらかというと やりがいで続けている所があります
ですからご依頼頂ける事が嬉しくて、描 いている感じでして 
感謝しながら なるべくバチが当たらないように 納税しております」

仕事と納税への、彼女なりの、哲学を持っているらしい。
私達商人のような、欲にまみれた日常とは、大違いなのである。
その彼女に、私は脱税を勧めたことになる。
さながら、相手を修道尼と気付かずに、ちょっかいを出した、
慌て者のようなものだ。

 * * *

世の中には、いろいろな人がいる。
私は、清濁を合わせ飲んでいた。
そのつもりであった。
濁を飲まない人も居る。
私は、本の出版から、意外な「人物」に出会ってしまった。



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偉人なのかも……

パトラッシュさん

喜美さん、
珍しい人がいますね。
普通は逆だと思うのですが……
つまり、人には気前よく、税については、ケチだと言う……
もしかすると、その人、稀に見る、模範的国民なのかもしれません。

私はとても、その人の真似は出来ません。

2016/10/01 17:15:44

パトラッシュさん

沙希さん、
税金でお悩みのようですね。

確かに、使われ方には、大いに不満がありますね。
考えると、納税がばかばかしくなります。

仲居さんの時代に、チップはもらいましたか?
そんな臨時収入にまで、手を突っ込まれたくは、ないでよね。

私としては、そんなつもりで書きましたのですが、
件のイラストレーターは、職業として、誇りを持ち、あくまで筋を通したいようです。

2016/10/01 17:11:37

謝礼がいい

パトラッシュさん

シシーマニアさん、
依頼主が企業や団体だと、源泉徴収が課せられているようです。
個人間の頼まれ事だと、謝礼と言う形で、現金の手渡しが普通でしょう。(もちろん、封筒には入っているでしょうけれど)

仮に私が、シシーマニアさんに、出演を依頼する場合は、後者といたします。(笑)

源泉徴収って、国家の手先になるみたいで、私はようやりません。(笑)

2016/10/01 17:01:43

同県人です

パトラッシュさん

吾喰楽さん、
えらいです。
私欲より、公共を重んじる。
なかなか出来ることではありません。

件のイラストレーターさん、埼玉の人だそうです。
吾喰楽さんが出版する際は、挿絵を描いて頂きましょうか。(笑)

2016/10/01 16:55:26

納めたがる

喜美さん

私の友達で税金納める事を
誇り(自慢)に思っている人があります
偉い人ね 其の人皆には凄くケチなの不思議な人でしょう 

我が家が仕事している頃は景気が良くて我が家も随分払っていたと思います
その代りお中元 お歳暮は私がデパートで送りながら自分の物買っても
同じ領収書で何ともなく無事でした
今だったら大変な事と思います

2016/10/01 16:14:20

私は・・

さん

パトラッシュ師匠

こんにちは。

私は、納税は、極力控えたいです。
だって、こちらには、四角四面、少しでも取るくせに、使う方は膨大な無駄遣いが、半ば放置されているのが現状ですから。

隠せるものなら、隠したいのが本音です。
だって、相続税を取り、土地を処分して得た金からは雑所得として、かなりの税金を取った上に、健康保険税も、目の玉が飛び出るほどの金額(50万以上100万未満)がかせられるのですから。

そうは言っても追徴課税は嫌ですから、申告しますが、不本意ですね。
取る方にかけるだけの査察を、使う方にもして欲しいが本音だし。
他人より頑張ったからの所得に、多く課税されるのも不本意です。

国民の義務にも不公平感を感じられて、腹立たしいです。
その一方、よんどころない事情で、苦しい生活を強いられている方の支援も、順調だとは言えません。
だから、納税意欲は、至って薄い私です。

2016/10/01 15:40:13

兼ね合いですが・・。

シシーマニアさん

私も同感です。

私は現役時代、通常源泉徴収で10パーセント引かれた額がギャラでしたので、確定申告の時期はむしろ楽しみでした。少額ながら、大抵払い戻しが来ますので・・。

仕事を頼まれて、源泉徴収されていない場合は、むしろちょっと「?」が残ります。
まああ、あちらにはあちらの事情があるのだろうと思い、黙っていますけれど・・。

2016/10/01 10:02:23

同感

吾喰楽さん

おはようございます。

私も同感です。
パトラッシュさんにではなく、イラストレーターの女性にですよ。

納税は国民の義務です。
勿論、その使われ方は、適切でなければいけません。
しかし、嘆かわしいことも、少なくありませんね。

現役時代、私も節税に無い知恵を絞りました。
民間企業は、利益を出さなければいけません。
脱税はいけませんが、節税は当然のことです。

でも、私がその女性と同じ立場になったら、源泉徴収を受けます。
繰り返しになりますが、納税は国民の義務だからです。

2016/10/01 09:18:19

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