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パトラッシュが駆ける!

不思議な縁で 

2017年05月13日 ナビトモブログ記事
テーマ:テーマ無し

「清水育子」
この名を見て「ああ……」と頷かれる方は、まず、いないであろう。
いなくて当然。
ついこの間まで、まったく無名の人であった。

今年になり、彼女の孫が、この国の人々を、大いに驚かせた。
度肝を抜いた……と言ってもいい。
それも中学生で……と言えば、もうお分かりに、
なるかもしれない。

育子さんは、歌人でもある。
我が国有数の短歌誌である「コスモス」に加わり、歌作を続けられている。
その四月号に、彼女の歌が載っていた。

「願ひたる棋士の世界をあゆみゆく孫の行く末われは見るべし」

ここまで来れば、もうお分かりの方も、少なくないであろう。
ちなみに「べし」は推量の助動詞であり
「見ることが出来そうだ」くらいの意味と思われる。
彼女の、自慢の孫であろう。
その将来を、楽しみにしておられるようだ。

僅か十四歳で、将棋のプロになった。
以来、負け知らず。
公式戦、目下破竹の、十六連勝……と言っていたら、
昨日、一勝を加え、十七連勝となってしまった。
非公式戦ながら、羽生元名人にも勝っている。

こうなると、いやでも、その将来への、期待が膨らむ。
名人間違いなしだろう。
それは何時か……
制度上の問題があることは、相撲と同じだ。
幕下で優勝したからと言って、すぐに横綱には、
なれないようなものだ。
その地位を、ワンステップずつ、上げて行かねばならない。
「飛び級」なんてものの、ない世界である。

将棋を知らない人々までもが、その動向に注目している。
かつて、なかったことだ。
普段は、世間の皆さんの、口の端にも上らない、
特殊な世界なのである。

その将棋を、私は、小学校において、教えている。
もちろん、正課ではなく、クラブ活動であるのだが。
そしてまた、自宅において、囲碁サロンを開いてもいる。
しかし、世間の皆さんの、囲碁将棋に対する、認知度は低い。
中には、両者の区別すら、つかぬ人さえいる。

その中で、将棋への関心を、高めてくれた。
T小囲碁将棋部には、今年度、七人の新入生が入部した。
異例のことだ。
多分、藤井君の影響だろう。
私達関係者は、一人の天才少年に、感謝しなければならない。

その少年が五歳の時に、初めて将棋を教えたのが、
育子さんだったとか。
いや、指導したわけではない。
むしろ逆だ。

一通りの、駒の動かし方を知った少年は、祖母を相手に、
十枚落ちで勝ってしまった。
相手は、通常の布陣。
自陣は、王将と歩兵のみ。
戦争で言えば、竹槍抱えた歩兵が、重戦車の群れに、
向かって行くようなものだ。
それでも勝った。

逆でなくてよかった。
例えば、私なんかでも、初心者を相手に、駒を落とす。
ハンディキャップを設け、力を拮抗させる。
そうしておいて、勝たせてあげる。
木端微塵に、やっつけることはたやすいが、それはしない。
一人の入門者の、やる気を削ぎ、将棋に対する興味を、
失わしめてはいけないからだ。

 * * *

私は昔、短歌の同人誌に、加わっていたことがある。
これは、将棋より、もっとずっと、マイナーな世界であった。
「短歌に目を向けられ、作ってみようと、お思いになった。
それだけでも、短歌に対する、一つの才能があるのです」
会の主宰者は、言った。
これ、新人を育成しようとする、指導者の思いが溢れている。
いきなりの初心者に、厳しいことは言わない。
やる気を削がれ、さっさと止めてしまうからだ。

同人数、わずか二十人ほどの、小結社であった。
当時、歌壇には、会員数千人を擁する、大結社があった。
「アララギ」などと並び「コスモス」も、その一つであった。
宮柊二先生が、創立し、主宰しておられた。

「寄らば大結社」という考えもある。
しかし私は、敢えて小さな会を選んだ。
この辺に、私の気質がよく出ている。
よく言えば、これを、気概と言うこともできる。
「鶏口(けいこう)となるも牛後(ぎゅうご)となるなかれ」である。
悪く言えば、人間が小さいとも言える。
人は所詮、おのれの器に、合った穴しか掘れない。
その矮小性を、よく表しているとも言えた。

私は、よくよく変人なのであろう。
例えばゴルフのように、多くの人が好むものには、
ことさらに背を向け、世間の関心度の低いものばかり、手がけて来た。
短歌など、俵万智さん以降、若い人の参入もあるけれど、
実態はほとんどが、老人の世界である。

前述の「コスモス」だって、最盛期には、
出詠者四千人を誇ったが、今は二千人であるそうだ。
先行きを考えると、決して安閑として居られない。

 * * *

私の囲碁サロンに、何人かの、女性の生徒さんがいる。
その中の一人、K子さんが、清水育子さんの情報をもたらしてくれた。
ほら、これですと、示してくれたのが、下の歌だ。

「謙虚にてあれと願ひぬ十四でプロ棋士となれる孫の聡太よ」

こちらには、はっきりと名前が出ている。
藤井聡太君のことである。

K子さんもまた、コスモスの同人である。
その歌歴は、長い。
そしていい歌を詠む。
例え、花鳥風月を扱うにしても、表面を、
さらり撫でるような歌は作らない。
対象に向き合う、鋭い目を持っているからだろう、
彼女独自の感性が、必ず、歌の中で光っている。

四年前、その歌人が、偶然ながら、私のサロンに入門して来た。
そして、ぐんぐんと、囲碁の力を伸ばしつつある。
運命の不思議さを、思わないわけに行かない。

聡太君の住んでいるのが、愛知県の瀬戸市。
師匠が、杉本昌隆七段。
私の知人に、名古屋市在住の、囲碁将棋好きが居て、
その名を「ナカさん」。
元NHKのアナウンサーであったこともあり、顔が広い。
杉本七段とは、昵懇にしていると聞いている。
今度会ったら、藤井君の話が出るであろう。

この世では、かすかな縁が、不思議につながっている。
だから面白い。
だから、縁というものを、大事にしなければいけない。



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楽しみで……

パトラッシュさん

みさきさん、
おっしゃるように、彼、あどけない顔ですね。
何処に、あの強さが、潜んでいるのかと、不思議に思われるくらいに。

私ごときは「縁」とも「つながり」とも、言えないくらいの、か細い「こじつけ」です。
それでも、嬉しいですね、その活躍は……

2017/05/14 07:17:27

ご縁

みさきさん

中学生とは思えないしっかりとしたお顔立ち。でも、笑うとちょっとあどけなさがのぞくような、藤井聡太棋士。テレビに映る度に思わず注目です。
点の様なご縁が、繋がり、交わり、広がっていくのも面白いものですね。

2017/05/14 01:22:17

新星現る

パトラッシュさん

シシーマニアさん、
N大の付属ともなると、俊秀があまた、集まるのでしょうね。
「また尾張から、天下を取る者が現れた」と尾張の皆さんは、喜んでいるかもしれませんね。

若者が、旧弊を打ち破り(なんて言ったら、他の将棋プロに怒られるでしょうけれど)その世界の頂点を目指して行く。その姿を、目の当たりにするのは、確かに気分の良いものです。

2017/05/13 11:21:43

この勢い

パトラッシュさん

山すみれさん、
ほんのかすかな縁ですが、それでも、つながっているのは、うれしいものです。
今日の新聞にも、記事が出ていました。
この勢い、何時まで続くのでしょうか……

2017/05/13 11:14:21

藤井君は

シシーマニアさん

キャンパスが我が家と隣接していて、主人が最近まで勤務していた、N大学の附属中学校の生徒さんだそうです。
勝手に親近感を持って応援していましたが、今や応援では無くファンですね。

こういった素晴らしい才能の人が出てくると、どこか気持ちが明るくなります。

2017/05/13 09:21:04

もしや

山すみれさん

と〜

凄い事ですね〜

沈みがちの昨今
に一筋の光を
もたらせてくれました〜♪

やはり
ご縁は何処にあるか解りませんねぇ〜♪

2017/05/13 09:12:22

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