似た者夫婦

メニュー

テーマ

テーマ無し（ 470 ）

カレンダー

月別

パトラッシュが駆ける！

2017年05月20日ナビトモブログ記事
テーマ：テーマ無し

昔、柄にもない文を、書いたことがあった。
「夫婦論」
論とは名ばかり、五百字ほどの、小文であり、
単に思い付きを、並べたに過ぎない。

しかし、まんざら、的外れでもなかったと見え、
朝日新聞に投稿したら、掲載してくれた。
こうなると、私はすぐに、図に乗る。
増長する。
友人の息子の、結婚披露宴でのスピーチに、これを利用した。

「若い人の結婚観には、異口同音のように
『価値観の近い人』が出て来ます。それも結構ですが、
互いの価値観の隔たりを、長い年月かけて埋めて行くのも、
『人と添う』ことの面白さでは、ないでしょうか」

先輩面して喋った。
偉そうに、後輩を諭す。
それが、回り回って、己の自慢になる。
これこそが、スピーチを不興ならしめる、原因とされている。
しかし私には、他に喋ることがない。
本来、人前で喋るのは、苦手なのである。
友からの、懇請を断り難く、やむを得ず、スピーチを引き受けた経緯があった。

「新郎新婦が、歩み寄り、時にアクセル、時にブレーキの
役を果たし合い、共に、進んで行ってほしいと思います」
「夫婦は似て来る。そして『似て来なければならない』
というのが、私の到達した『夫婦論』です」
と、こう結んだ。

スピーチさえ終えれば、もう、こっちのものだ。
卓上には、山海の珍味が並んでいる。
私は、それらを食することに専念した。
酒も料理も、格別に美味かった。
大役を終えるまで、おちおち飲んで居られなかったのだ。

　＊　＊　＊

今しも、ある夫婦が、メディアを賑わしている。
国会でも、取り上げられている。
ワイドショーなどでの、連日にわたる、その騒ぎたるやない。

彼ら夫婦の、その特異な人間性に、問題があるのではないか。
二人は、似過ぎているのでは、ないだろうか。
ということを、テレビを見ながら、思っている。

性格や価値観、それから来る行動が、あまりにも酷似している。
長年の陶冶を経て、両者の中間に収斂して来た。
とは、思えない。
彼らの場合は、当初から似ていたのでは、あるまいか。

人の事は言えない。
私だって、特異なことでは、人に負けない。
世間の皆さんと、考えることが、しばしば違っている。
つい世間との摩擦も生じる。

そういう時、後ろから袂を掴み、引き留める者が居る。
妻だ。
「やめときなさい」
何事につけ、言われる。
私は、衣食住のすべてを、妻に依存して生きている。
そこに引け目がある。
家庭平和を乱してまで、独断専行を、貫くのは、
とても難しいことになっている。

しかし、これで良いのかもしれない。
私が、大きく道を外すことは、妻ある限り、ないと思われる。
離婚を覚悟に、それでもやらねばならぬことなど、この私にはない。
とっくにない。
だから、気楽に妥協の道を、選んでいるとも言える。

　＊　＊　＊

似過ぎている。
特に、その独善性においてだ。
倨傲であり、狡猾でもあり、それらを恥じるということがない。
あの二人の場合、足し算ではない。
特異なる、因子と因子が、結び付き、化学反応を
起こしているような、そんな風に見えないでもない。

夫婦は似るべし。
但し、似過ぎてもいけない。
私の夫婦論は、ここに来て、修正を加えなければ、
いけなくなっている。