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同窓会報 

2017年06月24日 ナビトモブログ記事
テーマ:テーマ無し

毎年、初夏の頃に、高校の同窓会報が届く。
それに「住所不明者」という欄がある。
番号が付されているから、数えなくてもわかる。
五十一人。
六クラス、約三百人の学年であったから、意外に多いとも言える。
いや、卒業して半世紀以上、経っているのだから、
よくこの数字で収まっていると、得心する向きもあるだろう。

私もその一人。
こんなもんだと思っている。
私はかつて、小学校のクラス会幹事を、やったことがある。
行方不明者の追跡調査に、努力をした。
しかし、私立探偵でもあるまいし、そこには自ずと、限界がある。
不明者の側に、連絡する気がない。
それはつまり、懐旧の情が薄いということだ。
となると、幹事が、いくら頑張っても、どうにもならない。

「物故者」の欄にも、番号が付されている。
四十五人。
多いクラスでは十人。
少ないクラスでも、五人が亡くなっている。
こんなものかなあ……と、私はここでも頷いている。

不明者と物故者を合わせれば、約百人。
ざっと三人に一人が、会報を読むことのない、身となっている。
私は、幸いに、二人の側に、入っている。
昔の私のようだ。
号令が鳴っても、率先して、走り出すことはない。
それでいて、仲間から、遅れることもない。
クラスでも学年でも、脚光を浴びることなく、
常に群れの中に埋もれていた。
いかにも私らしいと、言えなくもない。

アイツが?……と思われる奴が、死んでいる。
Kは、元気溌剌とし、叩いても死なないような、
体躯の持ち主であった。
女子の名もある。
背が高く、女優にでもなったら、さぞ見栄えがするだろう
と思われた、W子が、既にして鬼籍に入っている。

神様は、人をあの世へと送り出す、その順番を、
どう決めているのだろう……
賢愚は関係ない。
膂力、知性、貧富、美醜……まったく関係ない。
不思議ではあるけれど、ともかく私は、生き残り組に入っている。
文句を言うことは、ないのかなと、思ったりする。

 * * *

行方不明者の中に、Uが居る。
私の結婚披露宴に、出てもらった一人だ。
彼は、ある合唱団に入っていて、唄うことが得意であった。
宴の中で、一曲唄ってくれた。
身体は小さいが、意外に声量があり、澄んだテノールを聞かせてくれた。

家が貧しかったようだ。
社会人となり、じきに共産党の活動をやるようになった。
選挙がある度に、私の家にやって来た。
「入党したのか」と聞いたら「まだだ」と答えた。
その懇請の度が増し、次第に、鬱陶しくなった。
「投票は出来ない」
はっきり断ったこともあった。
今なら遠まわしに言うものを、その頃は、私も若かった。

Uが、何時から来なくなったのかを、はっきりと思い出せない。
年賀状も、何時の間にか、途絶えてしまった。
結婚は、しなかったと思われる。
私は、声がかかれば、歌は唄えないが、その披露宴には、
出るつもりでいた。

 * * * 

会報が来た翌日、私は郵便局へと行く。
同窓会費と寄付金を払い込むためだ。
歩いて行くのだが、気分としては奔っている。

うっかり先送りすると、すぐに忘れてしまう。
かつて実際に、そんなことがあった。
会費を払わなくても、同窓会報は、送られて来る。
但し、巻末に、会費納入者の欄があり、そこに私の名がなかった。

いけねえ……
一年経って、未払いに気付いたって、もう遅い。
会報を丹念に見ているやつは、想像するかもしれない。
去年まで出ていた、私の名が消えている。
さては死んだかと、思われても仕方ない。
たかが二千円、寄付金を合わせても三千円、
これを払わず、死者になるのは割に合わない。
あれ以来、会報が来るや、日を置かず、
会費を払い込んでしまうことにしている。

 * * *

結婚式に出てもらった友人が、もう一人居る。
彼、Yとは、今も年賀状のやりとりがある。
もう十年も会っていないが、賀状が来るのだから、
健在であると思われる。

その賀状には、かつて「今年こそ会おうよ」と書いてあった。
そりゃ会いたいが、彼は大阪の寝屋川に住んでいる。
彼の上京ついでに、私の下阪ついでに、ということになるが、
これが簡単なようで、案外実現しない。
何時しか、その「会おうよ」も、Yの賀状から消えている。

同窓会報が来ると、もしやと思い、その名を探す。
何処にも見当たらない。
ついでに「会費納入者欄」にも、その名がない。
もう、何年にも渡って、その名を見ていない。

もしかすると、困窮しているのであろうか。
いや、そんなはずはない。
かつて、上場会社の営業部長まで務めた男だ。
持ち家もある。
そこそこの額の、年金を受け取っているはずだ。
僅々二千円の同窓会費を、払えないわけはない。

電話して、それとなく探ってみようか……
と思わないでもない。
しかし、用もないのに、それもおかしなものだ。
それで躊躇っている。
躊躇ったまま、何もしないでいる。

 * * *

「クラス会に出られるやつは、幸せなんだ」
「そうだなあ」
かつて、小学校のクラス会をやった時、友と話したものだ。

出席する気がないなら、それはそれでいい。
事情があって、出られない。
出たくても、出るに出られないとしたら、それは残念なことだ。
その事情とやらが、思いやられる。

たかが二千円……これも同じだ。
払える者は、幸せだ。
友への、無事の知らせである。

私は、同窓会報が届くと、まず「物故者」を確かめ、
次いで「行方不明者」を見、
さらに「会費納入者」を見ることにしている。
アイツ、変らずに、元気でいるんだな……
その名を確かめては、無事を喜んでいる。



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なるほど

パトラッシュさん

漫歩さんのハンドルネームには、そういう意味があるのですね。

2017/06/25 14:25:46

人生のゴール

漫歩さん

人生のオマケで生きていると、大方は同じような状況があって、同じような感慨を持っているのだ、と同感しました。

いつゴールインするのかなど所詮判りませんから、
その日までいつも通りに歩いてゆくのみですね。

2017/06/25 11:15:03

大丈夫

パトラッシュさん

喜美さん、
八十歳で、一区切り……
世の中の多くが、そのようですね。
高女の九十二歳の方は、えらいですね。
特別に、壮健なのでしょう。
長生きすると、認知の恐れが出て来ますね。
しかし、喜美さんは、大丈夫。
賢くて、しかも認知になるとは限らない、その見本のような人ですから。

2017/06/24 16:45:26

同窓会

喜美さん

小学校の同窓会は80歳で終わりました 本人が元気でも相手の看病やら
色々で 毎年伊豆長岡で楽しかったです ご近所さんばかりですから
高女の総会はやっていますし 其のあと学年の同窓会やっています 最も私5年前から行けません 総会は順番に
その年役員になりますからもう若い世代が役員です 最高92歳で東京からお見えになったとか 同級会の役員は
土地の方が毎年やっていましたけれど7〜8人中2人認知になったらしいです それも優等生だった人達です
賢いと成るのかしら皆驚いていました
そうなると私は認知にならない 良かった

2017/06/24 15:02:06

なるほど

パトラッシュさん

澪つくしさん、
今もクラス会が続いているとは、大したものです。
幹事の方の努力に、頭が下がります。
そして、皆さんの団結力にも……
20名に満たなくても、立派なものです。
出られる内が花、今後も是非、出席をなさって下さい。

澪さんの死生観、見事なものです。
納得しやすいですね。
このように収斂されるまでには、様々な思索を経たことでしょう。
見直しました。(笑)

次は、畏敬の念を持って、澪さんに対することにします。

2017/06/24 12:29:25

寿命の不思議

澪つくしさん

我々の時代は生徒数がおおかったですね!
私の中学も高校もマンモス校で、一クラス
50人以上で10クラスありました(@_@)

未だに盛んなクラス会は、高校時代の物で
毎年お呼びがかかり、遠路名古屋まで一泊で
懐かしい顔を見に出かけています。

亡くなった方、不明者の方合わせて10名ほど、
出席者は20名に満たないですね〜


>神様は、人をあの世へと送り出す、その順番を、
どう決めているのだろう……

ですよね〜。。。

私の勝手な解釈はこうです。
人は皆この世に「何かしらのお役目を持って生まれて来るのでは?と。。。
そしてそのお役目が終わると、あの世へ戻って行く。

幼くして無くなる子は、両親に会う事を目的に・・・
天寿を全うする方は、それ自体が目的かも・・・
辛い事悲しい事はそれを乗り越える修行の為に・・・

決して運命論者ではないのですが・・・
その人のお役目が終わったから旅立ちの日が来るのでは?
そう考える方が、自分にとって慰めになるからかもです!

脳天気な私の考えそうな事ですネ!(⌒▽⌒)アハハ!

2017/06/24 10:45:57

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