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パトラッシュが駆ける!

んなバカな 

2017年08月12日 ナビトモブログ記事
テーマ:テーマ無し

「小説は、お書きにならないんですか?」
女性の読者さんから、尋ねられたことがある。
「書きません。というより、書けないんです」
「あら……」
小説も随筆も、文学と言う畑の中の、作物の一つに変わりはない。
種蒔きから、収穫まで、農作業に、大きな違いはないと、思われている。
しかし、違うのだな、これが。

先ずは、投入する、エネルギーの問題がある。
随筆は、短文でもあり、何かやりながらの、片手間でも書ける。
小説を書くには、本腰を入れねばならない。
没頭しなければ、ならない。
枚数の問題もあるけれど、それでも費やす時間は、随筆の比ではない。

「人間が、馬鹿正直に出来てるんでしょうね。嘘八百を書けないのです」
「ほほほ……」
彼女には「小説こそ文学の華」との思いが、あるのかもしれない。
「魚は鯛がいい」と言っているようなものだ。
私には、高級魚を釣る能力がなく、専ら釣りやすい、鯵や鰯などの、雑魚ばかり釣っている。

「随筆だって、誇張や粉飾はやります。時に、虚構を交えたりもします。
しかし、大筋のところで、ないものを、あったように書くのは、苦手なのです」
ここにおいて、私と言う人間の、矮小さが現れている。
小さい嘘はつけても、大きなそれは、よく為し得ない。
所詮は、肝っ玉の小さな人間ということになる。

私が、不倫をしたら、すぐにばれるであろう。
週刊誌は来ないが、妻により、すぐに、気付かれてしまうだろう。

 * * *

毎朝、NHKテレビの、朝ドラを見ている。
ちょうど我が家の、朝食時間に重なる関係で、見るのが習性になっている。
これを、惰性ということも出来る。

半年間、放映される、ロングドラマであり、今回の「ひよっこ」も、
既にして、終盤に入りつつある。
最近になり、ヒロインの父が、発見された。
彼は、茨城県から、東京に出稼ぎに来ていて、二年前から、
行方不明となっていた。

警察に、捜索願いを出しても、一向に、手がかりが得られなかった。
一家の大黒柱を失い、そりゃ、家族は困惑する。
しかし、ヒロイン初め、登場人物は皆、健気に生きている。
街の人々との交歓にも、見るべきものがあり、この部分において、
好感度の高い、ホームドラマと言えなくもなかった。

ところが、ひょんなことから、父が見つかった。
二年前、強奪事件に遭い、持ち金を奪われた彼は、
その時、受けた打撲が原因で、記憶喪失に陥っていた。
帰る宛もなく、公園のベンチで、雨に濡れているところへ、
声をかけてくれた者が居る。
女性である。
それも、驚くなかれ、今をときめく人気女優である。

そんなことが、実際にあり得るだろうか。
一人住まいの女性が、正体不明、言動の定かでないおじさんを、
自宅に連れ帰り、住まわせたのである。
それも、二年間も。
「んな、ばかな……」である。
現実社会で、あり得ないことを、平然とドラマに仕立てる。
作者のその、臆面のなさに、妙に感心している。

記憶喪失を用いるのは、また、便利な手法だ。
彼は、何もかも、覚えてない。
だから、連絡が途絶えていたとしても、不思議ではない。
それまで積み重ねた、視聴者の疑問を、一挙に氷解させることが出来る。
成立し難い物語を、簡単に整合させることが出来る。
だから、これを、安易な手法と言うことも出来る。

私には、こういう方法が取れない。
ストーリーを、無理やり組み立てることに、大いなるためらいがある。
気後れしてしまう。
これを乗り越えない限り、私が、小説が書くことは難しいだろう。

 * * *

「記憶にございません」
テレビのニュースが、こんな場面を、しきりに伝えている。
これは、記憶喪失とは違う。
単なる記憶力の減衰であろう。

それにしても、立派な肩書を持つ方々だ。
最高学府を出て、要職に就き、識見豊かであられるはずの人が、
いとも簡単に、記憶を失っておられる。
「んなばかな」
私はここでも、言ってやりたくなる。

このところ、テレビのニュースを見ないようにしている。
見たくない顔ばかりが、出るからだ。
朝ドラとて、どうなるかわからない。
私の、唯一見ているドラマだが、
今後も「んなばかな」が続くようなら、
見るのを、止めちまおうかと思っている。



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確かに

パトラッシュさん

漫歩さん、
耐久力はなくなりました。
これじゃ、いかんと思いながら、つい億劫になってしまうことが、多くなりました。

短文が好ましくなりました。

2017/08/13 20:37:30

世捨て人にはまだ早い。

漫歩さん

私がテレビで観るのは、朝昼晩のNHKニュースと大河ドラマだけです。前者は、食事をしながらその時点での世出来事が判るから、後者は時代物が好きだからです。
その番組が終われば消してその座を離れます。

小説は読まなくなりました。
今は専ら、同時代の人が感じる現代の日の本世相、特に団塊の世代より若い人たちの行動様式や考え方をテーマにした随想に目がゆきます。
共鳴することが多いし、短文だからです。

要するに、観たり読んだりする耐久力がなくなってしまったのですね。(笑)

2017/08/13 12:23:37

えらいです

パトラッシュさん

吾喰楽さん、
テレビは、惰性で見るのが、よくないのです。
(と言いながら、私は惰性で、朝ドラを見ているのですが)
真に見たいものを、選んで見る。
この姿勢が大事だと思います。
吾喰楽さんは、これを地で行っているようです。

2017/08/12 19:38:05

連続ドラマ

吾喰楽さん

こんにちは。

私は、長いこと、大河ドラマと朝ドラを見ていません。
止めたのは、“つまらない”という、理由ではありません。
日曜日や、平日の朝、同じ時間に拘束されるのが、負担に感じたからです。
始めの内は、物寂しさを感じましたが、平気になりました。
見ない分、時間を有効に使えるようになった気がします。

毎日が日曜日の身分になっても、何故か、見たいとは思いません。

2017/08/12 14:58:19

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