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北軽井沢 虹の街 爽やかな風
スウィートグラスに生きる木々の物語(その1 カラマツ)
2012年09月19日
テーマ:テーマ無し
『「木を植えた男」を忘れない』というタイトルがついた一枚のDVDがある。それには、「木を植えた男」すなわちスウィートグラス・オーナーが約20年前から木を植え続け、現在のスウィートグラスが出来上がったこと、それを引き継ぐ若いスタッフの思いが語られている。
18年前、スウィートグラスのフィールドは、荒れた火山灰土に広がる牧草地でした。
荒涼な大地と浅間山。
名も知れないキャンプ場、名もないこのフィールドに、千本以上の木を植え続けた男がいた。
火山灰の荒地に、毎年毎年、木を植えました。
明日の売上のことよりも・・・・・・男にとって木を植えることが、何よりも大切でした。
なぜそんなに木を植えるのだろうか・・・・・・その時は誰も、理解することができなかった。
男は十数年間、木を植え続けました。千数百本もの木を植えました。
数百本の木を枯らしながら、決してあきらめずに・・・・・・・
何もない大地は、年を追うごとに表情を変えていきました。
春の新緑は、溢れんばかりの生命力を見せ。夏には日差しを遮り、木陰を作る。
秋には、赤・黄・橙・紫の美しい彩りを見せ。
冬には、寒さの中でじっと春を待つ健気な姿を見せる。
男は、木を植えることで何を表現したかったのか・・・・・・
その男が伝えたかったこと・・・・男は、一言つぶやいた。
「自然に勝るものは何もない」
県道235号線は、北軽井沢交差点から嬬恋村大笹交差点に至る幹線道路で、通称北軽井沢大笹線と呼ばれている。北軽井沢方向からは左手に、嬬恋村方向からは右手に浅間山が見え隠れするこの道路は、いくつかの狭い箇所があり離合が困難な場所では、双方が譲り合って通行している。
北軽井沢側は国道146号に、嬬恋村では国道144号につながり全長はおよそ11㎞である。
北軽井沢方向から約600mほど進むと交差点があり、その交差点がスウィートグラスの入口で、交差点を左折するとスウィートグラス通りに入る。両サイドは牧草地で道路沿いに植えられた木々が茂り緑のトンネルをつくっていて、時折ニホンリスが横断する場面に遭遇する心が休まる通りだ。「スウィートグラス通り」は、私が勝手に命名したが、これから話す木々の物語に相応しい名前に違いない。
1・カラマツ
スウィートグラス通りの入口あたりは、上り坂になっているが数百メートル登ると右に蛇行する。
そして再び直線になったところから左手に北軽井沢スウィートグラスが現れる。そこから私の徒歩で約350歩ほどが通りに面していて、正面玄関までの道路沿いに17本のカラマツがそびえ立つ。
カラマツは、マツ科カラマツ属の落葉針葉樹。日本の固有種で、東北地方南部、関東地方、中部地方の亜高山帯から高山帯に分布する。
カラマツはマツ科の中では珍しい、落葉性の高木。本州の宮城・新潟県以南から中部山岳地帯に自然分布する。火山地帯に生育することが多く、荒れ地・痩せ地・湿地に生育し、パイオニア的性格を持つ。本来の生育地は亜高山帯からブナ帯上部であると考えられる。各地の高海抜地域に広く植林されている。樹高は30m近くになり、直径も1mを越えるものがある。葉は線形で長さ2〜3cm。短枝では葉は円形に配列され、枝先などの長枝では螺旋状に配列される。花は5月頃に咲く。和名は葉の付いた様子が唐文様に似ているとの意味であり、落葉するので落葉松、富士山に生育するのでフジマツの別名もある。秋には黄葉し、春は新緑が美しい。
戦後始まった拡大造林の時代、海抜が高い地域や痩せ地では植林に適した樹種が見あたらなかった。その中で取り上げられたのがカラマツである。ブナ帯ではスギの植林は成功しにくく、美林には仕立てにくい。湿原の周辺や、火山灰の痩せ地なども同様である。このような立地でも生育が比較的良好なカラマツが注目されたわけであるが、植栽した時点で、十分な用材利用の見通しがあったわけではない。カラマツの材は建築用材や土木資材として良材であるが、若い材にはねじれがあり、板材として使いにくい点、ヤニをたくさん含んでおり、パルプ用材としては使いにくいなどの欠点があった。大規模な造林が始まった時点においては、これらを解決する手段は開発されていなかったようで、大きく生長して伐採時期になる頃には、開発されているであろうとの見込み発車であったという。その後、国産材の需要はやすい外材によって冷え込むことになってしまい、放置されている場所がほとんどである。とはいっても、大きく育った天然のカラマツは良材であり、銘木として珍重されている。植林されたものでも、あと百年もたてば、良材になるのかもしれない。ねじれの少ない品種も開発されているとの事。
カラマツは落葉であるので、葉の量はスギやヒノキに比べて少なく、林内は明るい。しかし、林床にはあまり植物が生育していなことが多い。カラマツの落葉が厚く堆積して菌糸層が発達するので、林床にほとんど植物が生育しない森林になってしまうのである。
軽井沢、北軽井沢を含む浅間高原には多くのカラマツが生息し、この地域のシンボルとも言える木になっている。雪解けを待って姿を現す新緑は針葉樹であるため目立たないが、その時期の澄んだ空気と清らかな空に映えて、何とも言えぬ味わいのあるものである。また、秋には見事な黄金色に黄葉し、群生している場所ではその景色の中で圧倒的な存在感を示すようになる。こちらに移住してきた2008年の秋、私は北軽井沢と高崎市の境にある二度上峠で偶然カラマツの黄葉に出会ったが、その時見た黄金色の黄葉は、身体をのけぞらせるほどの威力があった。その時の衝撃は今もはっきりと記憶している。一般的に秋の紅葉は、モミジなどの赤色を想像するが、黄葉がこれほどに美しいとは、そのときまで私は知らなかった。
北軽井沢スウィートグラスのイベントハウスの裏側には、28本のカラマツがそびえ立っている。
浅間ビューサイトと呼んでいるテントサイトから浅間山を望むとき、その左側にカラマツ群を確認できるが、この景色の中に、もしもこのカラマツ林がなかったら、きっと浅間ビューサイトも色あせたものになっていたに違いない。
また、カラマツとニホンリスの関係も記しておかなければならないだろう。このあたりにはニホンリスが生息しているが、ニホンリスは松林が大好きで、夏期から冬期にかけてオニグルミやマツ科の種子を好んで食べる。我が家では小鳥たちのために冬になると餌台にひまわりの種を与えているが、毎日のようにやって来るニホンリスは、ちゃっかりと餌台の主役を演じている。その餌を食べる姿が愛らしく、20センチそこそこの体長の小ささと相まって何とも微笑ましい素振りが、単調な冬の生活になくてはならない光景となっている。
そしてもう一つ、カラマツと大いに関係のあるキノコがある。それはハナイグチというキノコで、夏から秋にかけ、カラマツの樹下に生える。カラマツ以外の針葉樹の下には発生しないというハナイグチは、この地方ではジコボウまたはリコボウなどと呼ばれ食用キノコとして人気がある。
別荘地などでは、根が浅く倒れやすいことと、カラマツの落葉が屋根や家屋の害になると言うことで切り倒されることが多い。私も自分の家の周りのカラマツを同じ理由で切り倒したが、そのとき測量した木の長さは28メートルもあり、10階建てのビルの高さに匹敵する高さに驚いた。
スウィートグラスには、「おしぎっぱの森」があり、キャンパーたちの自然散策や子どもたちのイベントに重要な役割を果たしている。そして、その入口付近では、背の高いカラマツが訪れる人々を出迎えている。
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