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吾喰楽家の食卓

四月中席(桂歌丸)後篇 

2015年04月15日 ナビトモブログ記事
テーマ:古典芸能

国立演芸場の出演者の持ち時間は、上席と中席だと、若手15分、中堅以上20分、トリ30分が一般的のようだ。
今回の中席は、いつもより出演者が一人少ない。
その分、トリの桂歌丸の持ち時間が、50分と長い。
演目は、初代三遊亭圓朝が創作した、『塩原多助』のうち「青の別れ」という人情噺である。
実在の塩原太助を、モデルにしている。
歌舞伎でも、『塩原多助一代記』は、お馴染みの演目だ。
また、昭和初期まで、修身の教科書でも扱われていたので、ご高齢の方なら誰でもご存知だと思う。

トリが三遊亭小遊三や林家正蔵の日よりも、かなり混んでいたのは、桂歌丸の人気ということなのだろう。
日曜日だからという訳でもない。
寄席はシニア層の客が多いからか、たとえ日曜日でも、平日より少し混む程度である。
また、上席や中席は事前に演目が判らないのだが、今回は違った。
桂歌丸だけは、演目が公表されていた。
演目に惹かれて来た人も、居たのかもしれない。
私といえば、少し違う。
健康状態が、心配な師匠である。
テレビで観るだけでなく、以前、カセットテープで聴いていたほど、好きな噺家の一人だ。
師匠が元気なうちに、一度は実演を観たいと思っていた。

やなぎ南玉の曲独楽が終わった。
落語と同じ、座布団に座っての芸である。
いつもなら幕を下げずに、前座が座布団を直すだけなのだが、今回は違った。
再び幕が上がったとき、すでに桂歌丸は座布団の上だ。
そういえば、テレビの“笑点”でも、歩かなくなっている。
日頃は、車椅子を使っていると、聞いたことがある。
楽屋では、横たわっていることも多いらしい。
初めてお会いする師匠は、テレビで見ているのと全く同じだった。
これ以上、痩せようがない体だ。
色白な顔だが、目には生気があった。

噺が始まると、それまでの拍手が、ピタッと止んだ。
極めて短いマクラに続き、すぐ本題に入った。
誰一人、声を立てずに、聴き入っている。
見事な話術としか、云いようがない。
後半、二・三回の軽い冗談に、少し笑いが出た。
圧巻は、愛馬の青と別れる場面である。
それまで、体の大きな動きはなかったのが、膝立ちして青の頭を抱えるしぐさをした。
本当に、馬が居るかのようなしぐさだった。
程なく、噺はお開きになった。
割れんばかりの拍手の中、師匠は両手を着いて、口を動かしているのが見えた。
挨拶をしているらしいが、拍手に消されて、何も聞こえて来ない。
幕が下りても、拍手は鳴り止まなかった。



写真
4月12日(日)の演題



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シシーマニアさんへ

吾喰楽さん

コメント、ありがとうございます。

ピアノの世界でも、年齢や経験が醸し出す、風格があるのでしょうね。

今月は、もう一度、国立演芸場へ行きます。
トリは、圓歌師匠です。
芸風は歌丸師匠とはかなり違いますが、風格は甲乙つけ難いのではと、期待しています。

2015/04/16 16:05:15

風格ですか・・。

シシーマニアさん

吾喰楽さんの感動が、伝わって来ますね。
歌丸は、既に一線を越えているのでしょうか。時折、病後の、あるいは高齢のピアニストで、あちらの世界から聴こえてくる様な表現をする人がいます。作品でも、ベートーヴェンの後記のソナタや、シューベルト晩年の作品に感じます。
俗人には、近寄りがたい風格ですね。
ブログを読んでいて、そんな印象を受けました。

2015/04/16 14:55:51

澪つくしさんへ

吾喰楽さん

おはようございます。

中席は20日までです。
ご都合がついたら、如何ですか。

今、調べました。
良い席は売れていますが、まあまあの席は残っていますよ。
1枚だけですが、「19日5列13番」がありました。
電話でも予約できますよ。
澪つくしさんは、シルバー料金に該当するはずです。(笑)

2015/04/15 09:31:40

私も拝聴したいですね!

澪つくしさん

吾喰楽さん お早うございます。

歌丸師匠は「笑点」でお馴染みですが、
お身体が気になるところですね〜!
私もお元気な内にと、寄席を探したのですが、
人気が高くて、何処も完売状態でした。

2015/04/15 09:17:33

SOYOKAZEさんへ

吾喰楽さん

おはようございます。

「青の別れ」は知っている方も多いと思い、筋は省略しました。
YouTubeで聴くことも出来ます。
昨日、志ん生と聴き比べました。
近日、圓生を聴く予定です。

姉弟子に、お褒め頂き恐縮です。
感情表現は、極力、抑えました。
「ピタッと止んだ拍手」と「鳴り止まぬ拍手」が、全てを表していると思います。

このブログ、自信作ではありません。
でも、寄席に行きたくなった方が、複数いらっしゃいます。
少しは、成功したかな・・・

2015/04/15 09:07:38

見たかった!

さん

吾喰楽さん、おはようございます。

歌丸師匠の落語、お元気な内に、一度拝見したいと思っています。

かなり、お悪いようですが、さすが芸人、高座の上では、微塵も辛さを見せない。
その魂に感じ入りました。

ゴクさんの文章にも、師匠の気迫が乗り移ったか?
素晴らしい!
私は、このブログを心待ちにしていたのです。 ありがとう!

2015/04/15 08:45:32

Rriさんへ

吾喰楽さん

おはようございます。

少し褒めすぎですよ。

私も手が痛くなるほど、拍手をしました。
10枚が多すぎますが、座布団を頂けたのは、テーマを絞ったからかもしれません。

2015/04/15 08:44:11

参った…

Reiさん

歌丸さんの落語…そして、ゴク兄さんの文章!
抑えたなかにも、感動が静かに伝わってくるブログでした。

自分が感動したことを、どうやって文章で伝えようかと、いつも悩んでしまいます。
でも、今日のゴク兄さんのブログには、座布団10枚!
(偉そうにゴメンナサイ)

2015/04/15 08:33:06

喜美さんへ

吾喰楽さん

おはようございます。

私も、家に居るときは必ず、笑点を観ています。
歴代の司会者、全てを知っていますよ。
昔は、圓窓が好きでした。
残念ながら、若死にしたんです。

歌丸と円楽、小遊三とたい平、張り合っています。
実は、みなさん、実にチームワークがいいんですよね。

2015/04/15 07:53:50

彩々さんへ

吾喰楽さん

おはようございます。

勝手な想像ですが、師匠は「高座で倒れるのなら本望だ」と、思っているかもしれません。
でも、声には張りがあります。
語り口だけ聴いていると、元気そのものです。

彩々さんなら、新宿の末広亭が良いかもしれませんね。
末広亭の周辺には、居酒屋さんがたくさんあります。

2015/04/15 07:48:35

マリーへ

吾喰楽さん

おはようございます。

中トリだった雷門助六も、痩せています。
「私のように痩せていると、寒さが身に染みます。誰とは云いませんよ。私より寒い人が、楽屋に居ます」と云って、笑いを誘っていました。

浅草や上野にも寄席があります。
是非!

2015/04/15 07:39:45

好きです

喜美さん

笑点の長続きするのも 皆面白く努力されているからですね

此の間病院で待っていましたら
皆さんが話していました
歌丸さん此処の病院に入院していたと横浜の人だ此処は県立の心臓と胸の専門の病院だから さもあらんと聞いていました

2015/04/15 07:37:26

いや〜

彩々さん

読ませますねぇ〜

毎週「笑点」を観ているので歌丸の体調の
善し悪しは解りますがが、吾喰楽さんの
Blogを拝見する限り、以前より安定された
ようですね。

しかし、さすがの芸の歴史を感じさせる凄さが
あるのですね。
歌舞伎、落語と、日本の伝統芸能を目に焼き付け、
聞き入ることができる年齢になったと思わざる
得ません。
私も、出掛けてみようかなぁ…。

2015/04/15 07:28:16

やはり

さん

歌丸さんはこれ以上痩せようがないくらいの体で、車椅子の介助が必要なのですね。
テレビは少しふっくら映るというから実物は更に痩せていたでしょうか。

吾喰楽さんに影響されて私も落語に首を突っ込みたくなりました。

2015/04/15 07:17:21

うきふねさんへ

吾喰楽さん

おはようございます。

拙いブログですが、楽しんで頂けたようで何よりです。
歌丸師匠のほかにも、印象に残った演目がありました。
長くなる過ぎるので、的を絞りました。
また、「青の別れ」の筋は、ご存じの方が多いと思い、省きました。

2015/04/15 06:57:51

おはようさんです

うきふねさん

とても臨場感があって、引き込まれて読ませて頂きました。歌丸さんはヒザ痛のサプリのCMに出ておられますね。

大昔、職場の先輩方に連れられて、京都会館へ月一回の市民寄席に通ったことを懐かしく思い出しました。久しぶりに落語が聴きたくなりました。有難うございました(^^)

2015/04/15 06:46:18

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