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敏洋’s 昭和の恋物語り

長編恋愛小説 〜水たまりの中の青空・第一部〜 (十二) 

2015年05月15日 外部ブログ記事
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(百九十一)

彼は、ひと言も発することなく聞き入った。彼の母親にも通じる苦労に、言葉が出なかった。牧子は、彼の手をしっかりと握りしめて、話を続けた。

母の復讐心というのは、そんな苦労のせいじゃないの。お祖父さんの、毎晩の愚痴なの」
『おまえのせいで、息子は死んだんだ!』
『おまえが来てから、婆さんの気苦労が始まった。それが高じて死んだ!』

「それが、毎晩のように続いたの。殴られたことも、あったらしいわ。
でも、それだけじゃなかったの。それだけなら、母もこうまで憎みはしなかったと思うわ。
辛かったと思うわ。良く辛抱した、と思うわ。女盛りの三十代だったのよ、母も。
淋しかった筈よ、きっと。男性に甘えたいと思っても、仕方のないことよ。
でも、それがお祖父さんには許せなかったのね。詰られたらしいわ。
詰るだけじゃなく、相手の男性に金品を要求もしたらしいわ。
それが元で、淫乱女という噂も立って。家出しちゃったの、私が中学の時に。
結局、私のことが心配で。十日も経たぬ内に帰って来たけど」

重い空気が部屋に充満していた。
居たたまれぬ思いの彼だった。
彼の子供時代の話を聞きたがる牧子だったが、決して牧子自身のことを話すことはなかった。

「これ以上、母を苦しめたくないの。これ以上、母に辛い思いをさせたくないの。
見ちゃったのよ、私。母の復讐を。
傍から見ると、そりゃあ献身的に世話をしているの。
失禁してしまったお祖父さんの体を、丹念に拭いてやっているわ。
でもね、見ちゃったの。雑巾で体を拭いたり、氷水を使ったり‥‥。
自分の乳房に触らせて、お祖父さんのあれが立つのを冷ややかな目で見ているの。
あんな母は、イヤ! 可哀相すぎるわ、母が」

思いもかけぬ、悲惨な話だった。
かける言葉が分からない彼だった。
牧子の肩に手を回して、軽く叩くこと位しか思いつかぬ彼だった。
「ごめんね、イヤな話をして。
ボクちゃんに逢うと、きっと話さずにはいられなくなると思ったの。
だから、だから、逢いたくなかった。
でも、でも‥‥。ボクちゃんと、離れたくない。一緒に、居たい!」

「だったら、だったら。今結論を出さずにね、もう少し考えようよ。ねっ、そうしょうよ」
彼のそんな必死の説得に、牧子の気持ちも次第に和らいできた。
「そうね、そうよね。ボクちゃんの言うとおりだわ。少し時間をおきましょうね」

=注釈=
フィクションとしてお読み下さいね。
諸々の書物を読んで、色々のエピソードを元に書き上げていきます。
ですから、痴呆状態になられたからといって、全ての方がこのようになるとは限りません。
今現在介護をされている方全てが、このような心理状態になり、且つまた又このような行動を取られているわけではありません。

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