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敏洋’s 昭和の恋物語り

長編恋愛小説 〜水たまりの中の青空〜(十四) 麗子さんに酔ったみたいです 

2015年07月15日 外部ブログ記事
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突然に、麗子が顔を上げた。
間近にある麗子の唇が、悩ましく感じられる。

「麗子さんに酔ったみたいです‥」
脳裏に浮かんだ言葉は、かすれ気味の声で発せられた。

少しの沈黙が、麗子の動揺を物語った。
思いも寄らぬ彼の言葉に、麗子はカッと体が火照った。
彼にしても、同様だった。

「お変わりになったわね、武士さん」
「…‥」
「私の知らない、武士さんだわ」
「れ、麗子さんだって」

「そうね、お互い様ですわね。うふふ。何だか、恋人みたい」
麗子の甘えるような声に、彼はどう反応すべきなのか、迷いが消えない。
いつ豹変するかもしれない、という恐怖感が頭から離れないのだ。

彼は弁当の折り箱を、袋の中に入れた。
もう食事どころではない。
鼓動の高鳴りが、耳に激しく波打っている。
じっと前を見据えながら、麗子の次に対し身構えていた。

「色々と、教えて頂いたみたいね。不倫中の女性ですもの。さぞかし、手取り足取りだったんでしょ?」
どこか棘のある声だった。チクリと、胸が痛む。

「三角関係、とでもいうのかしら。いえ、奥様がいらっしゃるのだから、四画関係? 
武士さんも、災難ね。好きになった女性が、それでは」

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