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「菜種梅雨」 

2016年05月01日 ナビトモブログ記事
テーマ:俳句ポスト投稿

 「俳句ポスト365」は、愛媛県の松山市が運営する俳句の投稿サイトだ。その第143回 2016年3月17日週の兼題は、「菜種梅雨」である。

 俳句集団「宇宙(そら)」のメンバー5人による「菜種梅雨」対する投稿の入選結果は、次のとおりである。

 北斎の波の欠片や菜種梅雨      津軽わさお  人選
  
 口減らしの花いちもんめ菜種梅雨    津軽まつ   人選

 水郷の女船頭菜種梅雨          野々原ラピ  人選 
 
 釣り堀を貸切りにさせ菜種梅雨     津軽ちゃう  並選

 菜種梅雨雀の遊ぶ保育園         篠田ピンク  並選

   
 「俳句ポスト365」では、全体3,000句程度の投句に対し、入選が「天、地、人、並」に分かれる。入選の「天、地、人、並」の内訳は、各回、天の俳句1句、地の俳句9句のほか、大体、人選の俳句200句、並選の俳句300句だ。

 今回の俳句集団「宇宙(そら)」による「菜種梅雨」対する投稿の入選結果は、言わば、人選の3句は、上位210句内の句、並選の2句は、その下の300句内の句である。まあ、それでも、3,000句中の堂々の入選句だ。


 
 それでは、3,000句中の栄えある一等賞の天の句は、どんな句か。何事も勉強の意味で、天の句及び選者の夏井いつき先生の講評を以下に掲げる。

 菜種梅雨切り絵の蝶に囲まれて      矢野リンド   天選

 「菜種梅雨」とは、菜の花が満開となる頃にしとしとと降り続く雨です。雨が降れば外に出て遊べない。長雨が続くと農作業も滞る。雨の続く日々の退屈しのぎに何をするか。その選択肢に「切り絵」があってもよいでしょう。

 長雨の日々の手持ちぶさたに「切り絵」をしてみる。幾つもいくつも「切り絵」で「蝶」を作ってみる。「切り絵の蝶に囲まれて」という措辞は明るい雰囲気を持ちつつも、長雨の手すさびという退屈で憂鬱な気分をも表現します。

 さりげなく巧いのが下五「囲まれて」という措辞です。退屈にまかせて、出来不出来のある「切り絵の蝶」たちを、己の身の周りに、切り散らかせている様子が、「囲まれて」というさりげない表現で巧く述べられています。

 菜の花は強い花ですから、長雨に打たれても花を保ちます。雨が止んだ日、辺り一面の菜の花たちは首をもたげ、太陽に顔を向け始めます。広い広い菜の花畑に、虫や鳥たちも戻ってきます。そんな菜の花の光景へ一番最初に解き放たれるのが、「切り絵の蝶」たちかもしれないと、そんな幻想も抱かせてくれた作品です。

 長雨にもさまざまな表情がありますが、「梅雨」とは違う「菜種梅雨」という季語が内包する明るさ。その明るさの芯にある愁いめいた湿度。それら季語の成分を余すところなく見事に描いている作品です。


 以上に関する津軽わさおの勉強したところを以下に掲げる。

  「菜種梅雨」という長雨は、菜種・菜の花による明るさ、梅雨の鬱陶しさによる暗さといった、明暗両面の気分を内包している。したがって、「菜種梅雨」を季語として詠む場合は、この明暗両面の気分を踏まえる必要がある。

 一等賞の句の作者は、まず、長雨が続く中での退屈しのぎとして「切り絵」を選択する。

 次に、「切り絵の蝶に囲まれて」という措辞が来る。囲まれるくらいの蝶だから、「幾つもいくつも」の「切り絵」の「蝶」がある。

 「切り絵」の「蝶」を作るのは、まずは楽しい。しかし、「幾つもいくつも」となると、流石に鬱陶しさがつきまとってくる。つまり、くだんの「菜種梅雨」の明暗両面の気分を表すものとして、「切り絵」→「切り絵」の「蝶」→「幾つもいくつも」と、思考回路が動き、結果、「切り絵の蝶に囲まれて」の措辞になっている。

 そして、今回、私が学んだのは、「表現する力」=「読み解く力」、「読み解く力」=「表現する力」であり、両者は表裏一体である。



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