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北軽井沢 虹の街 爽やかな風

小説その23 

2016年05月06日 外部ブログ記事
テーマ:テーマ無し


翌日目を覚ますと爽太は急いでカーテンを開けた。そこは、辺り一面真っ白の銀世界だった。
20m以上の木々がそびえる森の中、木々の枝には雪があり枝の本来の色はない。小さな枝の先まで雪に覆われている。葉を落とした冬にだけ見えるペンションひまわりのブルーの屋根も真っ白だった。まったく別世界のような光景に爽太はしばらく唖然とした。そしてしばらくは感激のあまりその窓から見える光景に震えがくるほどの感動を得た。階下ではすでに起きている千恵子の気配があった。爽太は我に帰って身支度をする。「雪掻きだ」と誰かが言ったような気がした。
「降ったね」爽太は階下に降りて千恵子に言った。
「うんすごいよ、何センチ積もってるか見てきて」
「それにしてもこの景色はすばらしい」
「もう胸がドキドキ、ワクワクしたの私」
「何度だった」
「マイナス3」
「気温はそんなに低くないね」
「まあ、先に腹ごしらえするか」
炬燵に入り外の景色を見ながらの食事は格別だった。
「きれいね、すてき、こんな景色の中に住んでいるなんて、感激だわ」
何度も感嘆の声を上げる千恵子だったが、爽太はいつまでも感激しているわけにはいかない。
爽太は雪掻きの準備をして外に出た。静かだった。何の音もない森の中はピーンと張り詰めたような気配だったが、そんなに寒くはなかった。そしてそれは爽太にとって初めての雪掻きだった。ホームセンターで買っておいた雪掻きスコップを持って玄関の階段を下りる。
長靴で雪の中に降りた。新雪は柔らかい。積雪は40センチほどで、スコップは音もなく雪の中に入っていく。爽太の家は道路から約5〜60センチ低いので道路までは緩やかなスロープになっている。足が滑って危ないのでこのアプローチを何とかしてくれと千恵子に言われているが、雪解けの春を待たなければどうすることもできなかった。雪を掻きながら道路まで出たとき、除雪車らしい大きなエンジン音が聞こえてきた。爽太の頬から思わず微笑みが漏れた。爽太にとってそれは何ともたくましい存在に見えた。近づいてくる除雪車に爽太は思わず手を振ってしまったが、除雪車はガーと雪を押してあっという間に通り過ぎていく。
その両脇には大きな雪の壁が残っていく。爽太の家は南北が道路に接しているが、玄関のある北側の道路はほとんど車の通行がない。冬は爽太の専用道路のようなものだった。車が出られるように除雪車の残していった雪の壁を道路の反対側にはねのけながら、爽太は今度雪が降ったら、除雪車がくる前に道路の中央辺りに雪を投げておけば、除雪車が運んでくれるということを思いついていた。爽太は車の屋根にある雪を下ろし、フロントガラスの雪を払い、いったん車を道路に出して、車庫部分の除雪にとりかかった。まだ降ったばかりの雪は軽く、スコップもサクっと気持ちのいい感触だ。額に汗がにじむ。身体はぽかぽかに暖かい。
東西の通路も除雪して、雪掻き作業が終わるころ、再び雪がちらついてきたが、今度はしばらくして雪は止んだ。初めての除雪作業は難なく終わったが、これから先、どのくらい雪が降るか予測はできない。この度の積雪は40センチだった。これは不動産屋が言う、「降っても最大40センチ」の最大に匹敵する。まだ始まったばかりの最初の冬はこれからが長い。
しかし、なぜか爽太は雪かきを無事終えた自信からか、抱いていた一抹の不安は吹っ飛んでいた。そして、いつの間にか空は晴れわたり、太陽の光が照らす雪はキラキラと輝いていた。
 
 
 

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