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「冷麦」 

2016年07月13日 ナビトモブログ記事
テーマ:俳句ポスト投稿

 「俳句ポスト365」は、愛媛県の松山市が運営する俳句の投稿サイトだ。その第148回 2016年5月26日週の兼題は、「冷麦」である。

 俳句集団「宇宙(そら)」のメンバー5人による「冷麦」に対する投稿の入選結果は、次のとおりである。

 じょんがらの泣き三味線や冷し麦  人選  津軽わさお  

 海峡を渡る担ぎ屋冷し麦  人選  津軽ちゃう    

 もろもろの折合いつけて冷し麦  人選  篠田ピンク  

 妻茹でて夫冷し切る冷麦屋  並選  津軽まつ   

 東京の空が無い下冷麦食う  並選  野々原ラピ  


 「俳句ポスト365」では、全体3,000句程度の投句に対し、入選が「天、地、人、並」に分かれる。入選の「天、地、人、並」の内訳は、各回、天の俳句1句、地の俳句9句のほか、大体、人選の俳句200句、並選の俳句300句だ。

 今回の俳句集団「宇宙(そら)」による「冷麦」に対する投稿の入選結果は、言わば、人選の3句は、上位210句内の句、並選の2句は、その下の300句内の句である。まあ、それでも、3,000句中の堂々の入選句だ。

 
 それでは、3,000句中の栄えある一等賞の天の句は、どんな句か。何事も勉強の意味で、天の句及び選者の夏井いつき先生の講評を以下に掲げる。

 冷麦のなんと気楽や箸の国  天選  みなと 

  「冷麦」と「冷索麺」も、まさに似て非なる季語たち。火曜日「俳句道場」でも話題になっていましたが、両者の違いは太さのみというのですから、その違いをどう表現するべきか、悩んでしまいます。

 (ブログ主による中略)「冷索麺」のほうがポピュラーだけど、食べてみると「冷麦」も美味しい!と感じる人も多いはず。ほんの少し太いだけの「冷麦」ですが、その喉ごしの良さが特徴。夏の食べ物の季語ですから、いかにも心地よく美味そうな句を探したいと思っていた心に、この句が飛び込んできました。

 索麺よりもちょっと太いから茹でるのにも時間がかかるんじゃないかしらと思っていたけれど、実際に茹でてみれば、あっという間に茹だるし、喉ごしも気持ちいいし! そんな実感が思わず「冷麦のなんと気楽や」という言葉になって転がり出たのでしょう。「や」はすぐ上の言葉を強調します。この句の場合は「気楽」という心持ちが、「や」の一音によって、弾むように読み手の心に飛び込んでくるのです。

 「冷麦」という季語を含む上五中下のフレーズで、言いたいことはほぼ言い得ているわけですから、このようなタイプの句の難しさは、下五をどうまとめるか。「お昼時」なんて時間、「夫婦にて」なんて人物を述べたのでは、一句はちまちましてきます。「箸の国」という悠々たる収め方のなんとも巧いことか! 「箸」というモノの形の美しさ、機能、「箸」に挟まれた「冷麦」の美しさに、改めて感じ入ります。「箸の国」の人として、私たちは「箸」という食文化を使いこなし、器用に美しく、今年の「冷麦」をいただきましょう。


 以上に関する津軽わさおの勉強したところを以下に掲げる。

 「決定版 一億人の俳句入門 長谷川櫂」によれば、俳句には、「一物仕立て(いちぶつじたて)」と「取り合わせ」という二つの型がある。

 一物仕立てとは、一つの素材(一物)を詠んで仕立てた句である。この型の句は、次のように、AはBであるという形(A=B)をとる。

行く春を近江の人とおしみける 松尾芭蕉

 取り合わせとは、二つの素材を取り合わせる(組み合わせる)ことをして詠んだ句である。この型の句は、次のように、AとBという形(A+B)をとる。

旅人と我が名よばれん初しぐれ 松尾芭蕉 

 天の俳句は、「冷麦のなんと気楽や」と「箸の国」の取り合わせであり、「箸の国」がしっかり決まっている。「お昼時」なんて時間、「夫婦にて」なんて人物との取り合わせと比べると、一目瞭然である。

 それと、津軽わさお流に解釈すると、「冷麦のなんと気楽や」のうちの中七「なんと気楽や」は、本来、「なんと気楽なことや」のはずであり、これだと中十になってしまう。

 こういう場合は、「気楽なことや」を省略して「気楽や」と表現し、「なんと気楽や」の中七に収めることができるってことなんだね。

 ということで、天の俳句は、まさに、夏井いつき先生が常々おっしゃる「発想のオリジナリティと描写のリアリティ」に優れ、「上質な詩になっている」、ということであろう。



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