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吾喰楽家の食卓

お買い得な『花形演芸会』 

2016年07月26日 ナビトモブログ記事
テーマ:古典芸能

国立演芸場では、1日から20日までの定席のほかに、21日からは、国立名人会などの公演がある。
若手の登竜門と云われている、花形演芸会もその一つだ。
今月の公演は、第446回だったので、37年も続いていることになる。
持ち時間が30分だった、三人の噺家に的を絞って感想を述べる。

   *****

■『蒟蒻問答』瀧川鯉橋
にわか住職の蒟蒻屋の主人と旅の僧侶が繰り広げる、頓珍漢な禅問答の噺である。
後半、パントマイムによる問答が続くので、音だけ聴いていても面白くない。
だから、ラジオで放送されることは少ないらしい。
初めて観る実演のはずだが、あら筋は知っていた。
何処で得た知識なのか、記憶にない。
鯉橋は数年前に真打に昇進したばかりの若手ながら、安心して観ていられた。
ところが、演者には申し訳なかったが、睡魔と闘いながらである。
勿論、芸が拙かったからではない。
好みの噺家だ。

■『人情八百屋』立川志ら乃
志ら乃は、鯉橋と同じ年に真打に昇進している。
私が知る限り、孫弟子ながら、家元である談志の芸風を、誰よりも継いでいる噺家だと思った。
と云っても、知っている立川流の噺家は少ないのだが。
観ていて、疲れる噺家である。
談志にも、その傾向はあったが、疲れることは談志以上である。
『人情八百屋』は、『唐茄子屋政談』に酷似し、人に掛けた情けが仇になる噺だ。
感情が入り過ぎる話し方は、観ていて気が休まらない。
人情噺なのに、しんみりとさせてくれないのだ。
歳を重ねることで、芸が枯れて来れば、落語界を背負う噺家になるかも知れない。

■『紙屑屋』笑福亭たま
道楽をし過ぎて勘当され、棟梁の家に居候している若旦那の噺である。
棟梁が持って来た紙屑屋の仕事をしながら、古紙の中で見つけた都々逸や義太夫の底本を読み、唄ったり踊ったりする音曲噺だ。
今までに国立演芸場で、馬桜と正雀の口演を観ている。
今回は上方落語だ。
座布団から離れず、扇子と手拭だけを使う江戸落語とは、趣が異なる。
腰を落とした姿勢で、踊りながら上手から退場し、前座を連れて下手から再登場した。
勿論、アヒルのような歩き方をしながらである。
実に面白いが、江戸落語を観慣れた者には、違和感を覚えるはずだ。
上方落語は、別物と考えた方が良いのだろう。

   *****

公演の様子は録画されており、観客に交じった演芸評論家により、採点もされている。
それに加え、日頃は機会の少ない、30分という長い持ち時間だ。
否が応でも、熱演せざるを得ない。
花形演芸会は定席と同じく、シルバー料金が設定されている。
このお買い得な公演を、これからも可能な限り観たい。

   *****

写真
7月24日(日)、花形演芸会の公演案内と演題



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