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北軽井沢 虹の街 爽やかな風

小説その38 

2016年09月18日 外部ブログ記事
テーマ:テーマ無し


野菜収穫作業が無罪放免となった爽太は、午後3時に店じまいをして仕事から解放された。身体が休まるのは言うまでもないが、精神的にも余裕が生まれ、何とか多く売る方法はないかと模索し始めた。開店後10日間でリピート客も何人かいたし、トマトが人気で早く売り切れることが分かった。いつもトマトを買ってくれる客に、爽太は自分の携帯電話の番号を教え、予約するように言う。客の名前も記憶してメモする。それからは、爽太に電話をしてくる客が徐々に増えていった。爽太は開店前に社長とチラシを配った時、脈のありそうなユースホステルに閉店後顔を出してみた。幸運にも担当者がいて話を聞いてくれた。ここではキャベツとレタスが欲しいという。前日に電話があれば、翌日に届けると約束し、商談は成立した。その後は週に二度レタス5個、キャベツ3個の予約がコンスタントにあった。爽太は、前もって社長と連絡を取り、その分だけ余分に積み込むことにした。たとえ800円でも確実に売れる見込みがあるのは大きい。爽太は毎日弁当を配達してくれる弁当屋にも交渉してみた。営業はダメで元々と営業マン精神がむくむくと頭を上げてくる。弁当屋はキャベツ、レタスの他、茄子や大根、キュウリなどの注文をくれた。そしてある日、毎年草津に避暑にきて一か月滞在するという老夫婦に会った。先日食べたトウモロコシが美味しかったので、30本ほど友人に送りたいという。爽太はすぐに社長に連絡を取る。翌日に段ボールを用意するから受けろという。ヤマト運輸の電話番号も聞いた。以来爽太はヤマト運輸を利用して、大口の注文者を開拓していった。すると毎日持ってくる200本のトウモロコシでは足らなくなり、ある時、明日は300本欲しいと社長に連絡した。しかし、たくさん売れて喜ぶに違いないと思った爽太の思惑は外れ、社長はそれは困るという。どうやら一回の収穫で200本が限度ということと、9月末日までコンスタントにトウモロコシが店頭に並ぶ必要があるという。収穫の時期を考えながら定植したトウモロコシには、そういう意味があったのだ。突然300、400と売る必要もなく、またそれは不可能だったのだ。
 
社長は、自分の畑で採れる大根は、たくさん買ってくれた客にサービスしてもいいという。大根は泥のついたままで葉もついたままだが、葉はいらないという客には切ってから新聞紙に包む。トウモロコシも中には実の付の悪いものもありクレームが出る。いつも買ってくれる近くの老夫人に、サービスで大根をプレゼントするが、いつもいつも大根ではもらう方も迷惑。そんな時、爽太はトウモロコシを渡し、その日は一本不良品があったことにする。だんだんと商売のコツが分かってきた爽太の売り上げは確実に伸びていった。
爽太は店の前を通り過ぎる客に声をかけ、世間話をするようになる。何も買わない人も、笑顔で話す爽太には好感を持った。いつも話をするだけで、何も買わない老人がいたが、話しているうちに自分も畑を持っていて、いろいろと野菜を作っているという。そして草津には地域に一つ、地元の人たちが管理している温泉があり、無料で使用できるといい、自分はその温泉の一つを管理しているから、帰りに入って帰れという。爽太は、ありがたいが風呂に入って帰る時間はないのでと丁寧に断ったが、以来その老人とは世間話の友達になった。爽太の人間関係はいつの間にかどんどんと進展していった。暑いのにいつも大変だろうと言って、冷たいお茶をわざわざ買ってきてくれる人まで現れる始末だ。
朝から雨が降り、客足が鈍い日もあったが、そんな雨の日には昼頃に社長が連絡してくる。そんな日は、客が来ないのにいても仕方がないから、早く店を閉めて帰れと言う。
自給800円が惜しいのだ。爽太はだんだんと社長のやり方、性格が分かってきたのだった。
 
 

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