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独りディナー
「旅ときどき仕事 ところにより道楽」
2016年10月11日
テーマ:読書
著者から本を送って戴く、というのは思った以上に凄いことだ。
作曲者から楽譜を送って戴いたり、最近ならCDを戴く事も有るけれど、これはまあ、職業上の特典の様なものだが・・。
著書となると、感想が本当に只の感想で、ご当人にお伝えするのも憚られる気がする。
でも、私だって、演奏会が終わった後は、新聞や雑誌に載る批評が、勿論気になる。
それが、必ずしも心地よいものでなくても、俎上にも載らないよりは、遙かに嬉しい。
と、自分を勇気づけながら、先日送って戴いた本の感想を、見当違いかもしれないながら、此処に並べてみようかと思う。
著者とは、言わずもがな、私が師匠とお呼びする方である。
この本には、紀行文の他にも、古典芸能や、師匠の本業である囲碁将棋の事、更に日常を題材にした事など、様々な内容のエッセイが登場する。
私は、中で紀行文が、一番楽しく読めた。
師匠も、書いていてさぞ楽しかったのでは、と想像した。
旅をすれば、当然題材は豊富に生まれる。
きっと、それらを削り落とした結果、表現されたのが、エッセイなのではないだろうか・・。
すなわち、文章の裏には数倍の題材があって、その中から掬い上げた数場面が、文章にまとめられている。
だから、読んでいる方にも、それぞれ想像の余地が広がって行って、其処には共通の楽しみが生まれる。
削ぎ落とされた、美しさもある。
一方、日常的な場面での描写は、奥行きと言うと可笑しいけれど、紀行文に比べてちょっと堅い様な気がした。
それはもしかしたら、実際にその体験では、旅ほどには背景の多才さが無かったのかもしれない・・。
でも、著者はこれを、紀行文に限定なさらない。
男尊女卑の嫌いな私が言うのも可笑しいが、それは師匠が男性である、という故では無いかと勝手に思う。
本を出版するのは、音楽で言えば、自主リサイタルを開催するのに似ているのではないかと思う。
独りの演奏会だから、プログラムの構成は、その奏者に委ねられる。
ショパンが得意な人も居れば、ベートーベンのスペシャリストもいる。
デビューの頃は、大抵時代に沿って、数人の作曲者の作品を並べる構成が、一般的だ。
でも、年齢を重ねてくると、その構成の仕方に個性が表れてくる。
多分、いつの頃からか、構成とは、その時のプログラム、というよりは数十年に及ぶ自分の人生の構成、という見方をするのではないかと思う。
私は年齢を重ねると共に、プログラムの構成は次第に分野を狭めてきている。
それが女性だから、というのは乱暴だけど、次第に自分の得意分野が見えてきて、不得手の分野には手を出さないという、いわば大人の心境も作用しているのだと思う。
でも。
男性を眺めていると、彼らの多くは何故か、分野を狭めない。
もしかしたら彼らは、只のピアノ弾きでは終わりたくないのかもしれない。
ピアノ界でよく言われる、旧約聖書的存在のバッハと、新約聖書的存在のベートーベン。
どんなに、技巧で鳴らしてデビューした彼らも、華やかな作品よりは、そういった学術的な作品に目を向け始めるのを見ると、何処か彼らが人生の構成を考えているような気がしてくる。
師匠も、書いて楽しい紀行文に偏らず、様々な題材を並べていらっしゃるのは、やはり「人生の構成」と言うものを感じていらっしゃるのではないかと、何度も繰り返して読みながらそんな気がしたのであった。
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師匠!
長いコメントを書いて戴き、ありがとうございました。
アップした後、無礼が無かったかなぁと、何度か読み返しました。ちょっと編集すらしました。
クチで言うのは簡単です。誰かの言では、クチだけなら大阪城も建つ、という位に・・。
私は若い頃、周りの人に散々無責任な批評をされました。
禁句の「じゃあ、自分で弾いてみれば?」と言う言葉を投げつけたくなったことが、何度もありました。
そのくらい、口で言うことは簡単ですよね。
ですから今朝パソコンを開いて、師匠のコメントを拝見して、本当に嬉しかったです。
言ってみれば、昨日のブログに関する批評を戴いた気分でした。
私は、師匠のエッセイを、一ヶ月に10編くらいは読んでいると思います。
その中には、面白いけれど市販される本には載せられないもの、もあるのでは無いでしょうか・・。
今度は、そういったエッセイも、まとめて読んでみたい気がします。
例えば、「走る女」とか・・。
2016/10/12 10:11:25
吾喰楽さん
吾喰楽さんの書かれる読後感、楽しみにしていました。
登場人物をよくご存じの様ですし、師匠とも親しく交流していらっしゃるし・・。
でも今、余りプレッシャーを掛けるのは、止めておきますね。
2016/10/12 10:00:05
喜美さん
著者に感想を申し上げるって、勇気が要りますよね。
お礼のお手紙にしようか、迷いました。
でも、何度も読み返していくうちに、少しずつ書く勇気が出てきました。
パトさんなら、無責任に感想文をアップしても、許して下さりそうな気持ちで・・。
2016/10/12 09:57:37
村雨さん
どうやら私は、例えることが好きなようです
音楽に例えて考えると、解ったつもりになります。
誤解したままのことも、多いですけれど・・。
。
2016/10/12 09:53:51
続き
紀行文だけに絞る……という案は、ずっと考えておりました。
誘惑と言っていいくらいに……です。
それは、おっしゃるように、書いても、読みかえしても、実に楽しいことですから。
しかし、旅だけでは、読者が食傷するのではないか……
私と言う人間を表そうとするときに、旅だけでいいのか……
躊躇いの末に、今回のような構成に行き着きました。
そこに、シシーマニアさんのおっしゃる、「人生の構成」ということが、
私の無意識の内に、あったかもしれません。
見ろ。
おれは、この通り、幅の広い人間なんだと、誇りたいような……
(実際、誇っております)(困ったやつ)
ともかくも、既にして、リリースしてしまいました。
この上は、世間様のご批評を、甘んじて受けるよりないと思っております。
その中で、ことに嬉しいのは、作者の気付かぬところを、指摘して頂いた時です。
出版してよかったと、思わされる瞬間です。
ありがとうございました。
良き読者を得て、私は幸せ者でございます。
2016/10/12 09:09:29
ありがとうございました
私は、他人様のブログ等において、自分が俎上に載った時は、
原則として、コメントしないことにしております。
面映ゆいからです。
そして、ややもすると、当事者間だけの理解に終わる、いわゆる「楽屋落ち」
に堕してしまいかねないからです。
(もちろん、堕したって、それはそれで、一向に構わないのですが)
今回ここに、コメントを載せる気になったのは、
拙著に対する、シシーマニアさんの、音楽に喩えての、受け止め方が、
非常に興味深かったからです。
音楽の自主リサイタルもそうですが、私のような自費出版の場合、
計画、構成のすべてを、作者自身で行わねばなりません。
出版社の助言はありますが、極めて限定的です。
客観的な目が欲しい。
いっそアンケートを取ろうか……
私の過去の作品の中から、読者に選んで頂いたものを、
収載しようかと思ったりもしました。
しかし、考えたら、それも作者として情けない。
例え不評であってもいい、自分が、これはと思う作品をこそ、載せるべきではないか。
そう思って、今回のような構成に至ったわけです。
2016/10/12 09:08:53
さすが
おはようございます。
さすが、シシーマニアさんらしい感想文です。
音楽と対比したことに、驚きました。
私も書こうと思っていますが、手付かずです。
直接、ご本人にお礼と簡単な感想は、お伝えしたのですが。
再読してから、書こうと思っています。
2016/10/12 06:27:02
最近
眼が悪くて 医者も眼鏡屋さんも片目でパソコンやれ(これ以上直らない)と言うくらいです
其れが旅を多くされて豊富な知恵と
寛大な心 その上私でも読める優しい感じ お人柄感じました でも私も彼にそのお返事も書きませんでした
私ごときが批評できるはずがないので
でも楽しく読ませて頂きましたね
2016/10/12 05:42:10
さすが、師匠ですよね。
Reiさん、早速コメント戴きありがとうございました。
師匠のエッセイにはいつも、人生観が見え隠れしますよね。
まあ、誰の文章でもそうなのでしょうけれど。
師匠の場合は、思わず現れた、と言うのでは無くて、それが主題になっているから、読む方も納得するのかなぁ、と思ったりします。
お手本ですよね。
私などは、人生感がうっかり出ちゃうと、削除したくなったりしますけど・・。
2016/10/11 22:25:32
師匠の本
私も読ませていただきました。
エッセイを書く時に大事な、飾らずありのままの自分をさらけ出すということを、さりげなく教えられたように思いました。
読み易く、無駄のない文章と、読み手を飽きさせない展開・・・お手本を送っていただいたような気持ちでした。
2016/10/11 22:09:02