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一歩、先を。 

2016年12月11日 ナビトモブログ記事
テーマ:コンサート

今日は、友人の出演する演奏会へ行った。


このヴァイオリンの友人とは、今までいつも、一緒に遊ぶばかりであった。

大学では同期だったけれど、卒業時一緒に新人演奏会に出演するまでは、全く交流が無かった気がする。


日比谷公会堂で行われた、新人演奏会の楽屋で、オレンジ色のイブニングドレスを着た彼女が、同じ色の靴を履いていたのが、今考えると特に印象に残ったのだった。

私は、前年に出場した先輩から、パステルカラーのドレスを着る人が多いから、そういった色は避けた方がよい、とアドバイスされていた。


それで、知人のデザイナーに相談して、青緑のイブニングに黒のレースを重ねた個性的なドレスを新調して、張り切っていたのだった。


でも、当時靴まで色を揃えるという文化は、私の周りに無かったので、ちょっと圧倒された覚えがある。

何処か、一歩先んじている印象があった。



彼女とはその後、ウィーン留学中の隣人としての交流が主である。


向こうは、いつも横にボーイフレンドがいるタイプだったから、真面目一本槍の私とは住む世界が違った。

けれど、隣人である私には、実は彼女が昼間はこつこつと練習を重ねているタイプの留学生で有ることを、知るとも無く知っていたのだった。


なのに、有るとき彼女は、ご実家の病院を継ぐべきお医者様と婚約して、早々に帰国してしまった。



それが何と、人づてに聞いたところによると・・。


結局彼女は、ウィーンの日本人留学生の中で、ナンバーワンの人気があり、素晴らしい音色の持ち主である、管楽器奏者の男性と結婚したのだ。

因みに、私も、その取り巻きの一人であったのだが・・。


相変わらず、何処か、一歩先を歩いているらしかった。



帰国後、最近まで全く交流が無くて、かつてはよく夜通し飲み明かしたりもしたけれど、考えてみると、演奏を聴くのは、今日が殆ど初めてなのである。



シンフォニーオーケストラの、客演コンサートマスター、という位置づけは、私にはよくわからない。


通常のコンマスは、当然いるわけだから、其処に客演で参加するというのは、よほどの実績と評判が無ければ、つとまらないのだろうと思う。


今日の、彼女は、実に立派であった。

まず、名器を奏でる、その豊かな響き。


そして、視覚的にも、弾いている姿勢の迫力が、他者とは一線を画している。


愛器にふさわしい、いかにも仕立ての良さそうな、ステージドレス。


楽屋で、いつもの優しい笑顔の彼女に会った時、それが総レースの素晴らしいイブニングドレスなのを知って、いつの時も、何処か先を歩いている彼女を、久々に思い起こしたのだった。


私などは普段、ステージ衣装は高価なものを使わないけれど、彼女にとって、上質なドレスを着ることは、客演として招待されたオーケストラへの礼儀、と考えている様な気がした。



一人のヴァイオリニストとして、彼女は今日まで立派に歩いてきたのだ、とそんな感慨がひしひしと迫ってきた。


友人という存在は、かつてはライバルであった。

けれど、この期に及んでは、やはりその勇姿を見せて貰うのが、実に嬉しい経験なのだと、つくづく思わされた、冬晴れの一日であった。



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そうなのです

シシーマニアさん

ところがね、本人曰く
「私は美人じゃ無いから、男の子が近寄りやすいのよ」って、言う事もおしゃれでしょ。

で、私が調子に乗って、「じゃあ、私は、美人だったからもてなかたのかなぁ」と言うと、
「そうだよ、みんな遠慮しちゃうんだよ」と、答える処も、彼女の優しさなのです。

でもね、あるとき、彼女から来たメールを主人に読んで聞かせたら、言うことが、
「この人、センスいいね。
君は(私の事ね)鈍いから、解らないだけで、きっと、会うと魅力のある人なんだよ」

えっ??



トリオは、是非とも実現させたいと思っています。

まず、お一人様は、聴衆カクホですね!

2016/12/12 19:34:09

それぞれの波乱万丈人生

彩々さん

極上の時間を過ごされ、今日は心地よい
疲れの中にいらっしゃるのでは!?

このシシーさんの同期生さん、さぞ魅力的な
女性でしょうね。
ミーハー的にも、お会いしてみたいと
思える女性です。

トリオ演奏が決定すれば、飛んでいき
ますから! ワクワク。。。

2016/12/12 16:07:57

村雨さん

シシーマニアさん

コメントを憶えていて下さいましたか。
お姉様の外国雑誌のお話の時ですね。

この半世紀の変遷には、目覚ましいものがありますよね。

2016/12/12 13:51:54

ライバル

シシーマニアさん

私が、いつの頃からか、友人達をライバルという目で見なくなったのは、きっと芯から真面目な性格だからなのだと、今、気づきました。

同じ土俵に立たなくなったのだと思います。
客観的に、彼らの秀逸さに感動できる様になった、と言うのでしょうか。

そして、友人達との交流の質が変化してきているのでしょうね。

思えば、友達運のよい人生を送っている気がします。

2016/12/12 13:45:17

asi asiさん

シシーマニアさん

本当に、そうですね。

波瀾万丈とも言える人生を送った彼女と、
表面的には平穏に見える人生を送った私と、
実態は、大きく変わらないのでしょうね。

誰にとっても人生とは、
一筋縄ではいかないものですから。
如何に向き合ってきたか、でしょうか。

2016/12/12 13:35:25

靴の色

さん

そうでした、当時は服と靴の色を揃えるなんて。いつかのコメントの意味がわかりました。

2016/12/12 09:01:33

なるほど

パトラッシュさん

ステージ上の女性は「麗姿」とばかり思っていましたが、
なるほど「勇姿」もありますね。
そこは、一つの試練の場でしょうから。
コンサートマスターともなれば、なおさらにでしょう。

友人はライバルであった。
世間に、しばしばあることで、私にも、覚えがあります。
そこに、ライバルにつきものの、抗心はなく、嫉妬も羨望もなく、
ただ敬意と親愛のみが光っている。
という光景は、傍で見ていても、気持よいものです。

2016/12/12 08:59:08

フット思い出した

asi asiさん

こんな言葉

「挫折も寄り道も、
  振り返るとみんないい思い出になります」

2016/12/12 07:37:55

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