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言の葉庵

平仮名はいつ日本中に普及したのか 

2017年08月26日 ナビトモブログ記事
テーマ:日本文化

和歌刻んだ土器が出土 ひらがなの伝播知る手がかりに
(朝日新聞DIGITAL8/25)
http://www.asahi.com/articles/ASK8T52KWK8TUZOB008.html

山梨県甲州市塩山下於曽の平安時代の「ケカチ遺跡」居館跡から、和歌を刻んだ10世紀半ばの土器が見つかりました。同時期、ひらがなのみの和歌の出土例はなく、仮名の地方伝播最古の例とみられています。
土器に書かれていた平仮名の和歌は以下です。


われによりおも
ひくゝ(または「る」)らむしけい
とのあはすや(み)
なはふくる
はかりそ
※(み)は欠損部分のため推定
(朝日新聞DIGITALより)


上の和歌が刻まれた土器は、都から派遣された官人が、地方の有力者に贈答したものとみられています。しかし内容は、恋歌です。氏族間の婚姻が関連したのでしょうか。
以下、言の葉庵の読み下しと鑑賞例をご紹介してみましょう。

〔読み下し例〕
上句 我により 思ひ括らむ絓糸(しけいと)の
下句 (1)合はず止みなば 更くるばかりぞ
   (2)逢はずや御名は 経くるばかりぞ

〔鑑賞例〕
(1) なんとなくあなたのことが思われて絓糸で刺繍をしています。
 思いが乱れてうまく縫い取れず、柄も合わないので打ち捨ててしまい、布も思いも古びていくばかり。
(2)  なんとなくあなたのことが思われて絓糸で刺繍をしています。
 でも、もうお逢いできないので、あなたの名前も刺繍も古びていくばかりです。


実際の歌意は、(1)と(2)を掛け合わせたものでしょう。
着想を、古今集業平の「千早ふる神代もきかず龍田川からくれなゐに水くくるとは」から得て、「からくれなゐ」を土器の赤色に見立てて詠んだ、あるいは歌意にあわせて土を選び焼かせたものと思われます。わが身と引き比べ、業平の東国下りを歌の背景に借りたのかもしれません。


(水野聡/能文社)



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