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出来心 

2018年09月30日 ナビトモブログ記事
テーマ:古典芸能

人間国宝の柳家小三治が、国立演芸場に出演するのは、曖昧な記憶だが、年に二回しかない。
ここに通い始めて、今年で四年目になる。
年に一回ではあるが、幸いなことに、毎年、小三治師匠の高座を見て来た。
幸いと云うのは、噺家の中で、チケットの取り難さが、日本一の師匠だと思うからである。
今回の国立名人会は、チケットの発売を開始してから、僅か二分間足らずで売り切れた。
取り難いにも関わらず、幸運な三百人の一人になれたのだ。

開場一時間前に国立演芸場へ着いた。
玄関には、満員御礼の看板が立っていた。
いつもなら、開場するまで、伝統芸能情報館二階の図書室に居るが、土曜日は休室である。
一階の展示室は開いているが、雨の中を移動するのが面倒になった。
国立演芸場の一階ロビーに居ることにしたが、開場するまで、客の様子を眺めながら待っているのは嫌いではない。
昨日は名人会だから、錚々たる出演者が揃っているが、客の多くは、トリを勤める小三治師匠が目当てなのだろう。

ヒザ(トリの一人前)を勤める、紙切りの林家正楽師匠が、いつもより多く切った。
先ずは、恒例の『相合傘』を切ってから、客の注文を受けた。
注文する声が重なったのに、『小三治師匠』、『秋祭』、『月見』を、見事に聞き分けた。
更に追加で、『藤娘』と『薪能』を切った。
何れも、切るのに時間を要する注文だったのに、追加を受けたのだ。
その時は、多く切った訳に、思いを回らすことが出来なかった。

いよいよ、目当ての小三治師匠が高座に上がった。
「マクラの小三治」と云われているほど、マクラが面白い師匠である。
先ずは、自分の年齢である七十八歳を話題にした。
二十年前、七十八歳の人を凄い爺さんと感じたが、自分が成ってみると、そうとは思わないという。(同感)
続いて、一年前に受けた頚椎の手術を取り上げた。
難しい手術だったらしいが、今では右腕を意のままに動かせるようになったという。

演題の『出来心』に触れたので、いつもより短いマクラだと思ったが、続きがあった。
今回のような事前に演題を公表する、ネタ出しは嫌いらしい。
高座に上がってから、その時の気分でネタを決めたいそうだ。
更に、泥棒の噺は嫌いだから、遣りたくないとまで云った。
客席から拍手が起きたのは、「替えてもいいぞ!」ということなのだろう。
それでも、渋々といった感じで、古典落語の『出来心』を始めた。

短いとはいえ、一般の噺家のマクラよりは、数段、長かった。
『出来心』を適当に端折って、高座を下りると思っていたが、違った。
噺が進むにつれ、熱が入っていくのは、流石、人間国宝である。
終わってみると、終演予定を三十分超過していたが、六十分も口演したとは思えなかった。
そこで閃いたのは、小三治師匠の楽屋入りが遅れたので、正楽師匠は繋いだのだろうということだ。
それでも、五十分程だったと思われる小三治師匠の口演を、大いに楽しんだ高座だった。

『出来心』あらすじ
http://senjiyose.cocolog-nifty.com/fullface/2005/03/post.html

   *****

写真
9月29日(土)の国立名人会演題と夕餉



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