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昭和2年生まれの航海日誌

もう咲いてほしい 

2012年03月28日 外部ブログ記事
テーマ:テーマ無し


            (モクレン)

 アキニレ、ケヤキ、ナンキンハゼの梢から大空が拡がっていた。
桜並木へと急いだが,オオシマザクラは一向に咲きそうでも
なかった。

 そこで、中央公園へ足を向けた。
 去年、
「ここの桜を観に来るのですよ」と云った二人の高齢の婦人の顔が
浮かび上がって来た。

 公園の桜はソメイヨシノでやっと、赤みの蕾をみせていた。
まあ、こんなのものだろう思って、犬とともに小走りでグランドを
横切り帰途についた。

 途中で、白いモクレンが咲いていた。傍の赤いのは晩生らしい。

 郵便物を引き出し、上にあがると、何時になく足に軽さを覚えた。
 今日は、娘から送られた靴を下ろした。使用上の注意書きが付け
られていた。

 靴を履くにも注意がいるのか。そう思ったが、脱いでみて
なるほど意図的に作られていることが判った。

 手紙は、妻を亡くし、今も傷心に打ちひさがれている室蘭の
友人からのものである。

「楽しかった思い出が浮かんでくる」とあった。
 素晴らしい、なんて幸福な奴だ。格が違う。

 二人が健康なとき、どこかで
「ガンは病気ではないぜ、老衰だよ」と話せる場はあった。
そうすれば、多少は気休めにはなったかもしれない。

 万事が、これで、俺の行き様であった。
 限りなく押し寄せる痛恨の波は治まりそうではない。
 

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