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たかが一人、されど一人
読後感「日本は再生エネルギー大国になりうるか」北澤宏一著
2013年05月22日
テーマ:テーマ無し
昨日のブログでも少し書いたが、一見難しそうだが興味深い事柄を極めて易しく、分かりやすく書いてくれている。著者は科学振興機構理事長を務めた超電導が専門の科学者で、福島原発事故独立検証委員会の委員長を務めた。いわゆる事故調は他に政府と国会が別にあるが、著者は事故直後から科学者としての責任を感じ、事故についての見解を求められるたびに、事故の原因究明と今後の対策について深く究明して、それを内外に広く公開すべきとの信念を固めたようだ。結果的にいろいろ協力する人がいたのだろう。事故が起きた一昨年9月に純民間事故調が立ち上がった。団体のトップは元朝日新聞主筆、委員長の他に5人の委員がいる。経営学の専門家、元外務省の大使で国際原子力機関(IAEA)理事会議長を歴任、元検事総長、金融工学専門の東大教授、地球環境産業技研の理事で原子力工学専門家、その下に30人程のワーキンググループが付いたらしい。それにしても全く任意の調査機関だから、東電や政府関係からのヒアリングには苦労をしたことだろう。しかし300人を超すヒヤリングの結果を受け、昨年2月末にはプレスセンターで内外の記者を集めて報告会が行われた。その後に書かれたのが本書であるから、ある意味では民間事故調の要約版と受け止めてもいいのではないか。この民間事故調の調査報告書は読んでいないが、政府と国会事故調も同様の読みやすい冊子を出してもらいたいものだ。構成としては5章に分かれている、前半の2章は今度の事故で明らかになった日本の原発の弱点が幾つか述べられている。調査委員たちでさえ初めて知った事があるのだが、すでに事故から2年以上経った現在でも初めて知る事が多い。著者が科学者故だと思うが、科学者、技術者の責任と言う章もある。しかし東電や政府の責任に関しては厳しく追及する部分がある一方、メディアに厳しく追及された菅総理の言動については「本当はそうだったのか」と考え直すような事が書かれていた。真ん中の第3章は委員会が提示した今後の取るべき道について解説している。結果的に政府でも大分参考にしたようだが、6つのシナリオが提示されている。後半の2章が本のタイトルになっている再生可能エネルギーの将来である。はっきり書いてあるが、日本はこの分野で相当立ち遅れている。しかしここから急速にそちらの開発投資がなされるべきであるし、技術面から見ても、経済的観点からもポテンシャルは非常に高い。しかし、問題は現在の10電力体制が阻害要因になりかねないことを指摘している。易しく書かれているが指摘していることは結構インパクトがある。委員に経済学者もいるので、エネルギー問題を俯瞰的に捉えての提言になっていることだ。発送電分離は勿論、電力会社を一度ご破算にすることが必要かもしれない。面白いのは憲法学者の委員が「国民の安全を守れなかった原発を推進してきたのは憲法違反」と述べたそうだ。
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