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北軽井沢 虹の街 爽やかな風
谷川岳へ行った
2013年09月22日
テーマ:テーマ無し
「谷川岳へ連れていきたい、谷川岳を見せたい」と、妻は口癖のように言っていた。先月末、9月のアルバイトシフトが決まったとき、私はその日を9月20日に決めた。
何事も決めなければ前へ進めない。いつかチャンスがあれば、そのうち行ける時が来たら、と思っていてもなかなか実行できないのが人の常である。そして当日の朝は晴れわたり絶好のドライブ日和となった。日頃会話も少なくなった老夫婦も、ドライブの時は話が弾む。
先日日光から那須へ行ったときに通った道はよく覚えているし、水上温泉を目指せば谷川岳は間違う道のりではないので地図を調べるまでもないと簡単に考えていた。そして沼田に入るとすぐ、みなかみ町のサインがあり左折するとそこは県道253号だった。結果的には無事みなかみ町に行けたが、道中離合も困難な細い峠道があり、一瞬どうなることかと不安だった。しかし、そこを通ったおかげで道端のリンゴ畑に出会い、手の届く場所にたわわに実るリンゴを見ることができた。ナビを使わない旅ではハプニングもあるが、思いがけない光景に出合うこともある。これがまた楽しいのである。
11年前に一度来たことのある谷川岳は、妻にとってよほどその印象が強かったのだろう。
その時の話をいつもしていたし、道中も話はそのことに集中していた。しかし、土合口からロープウエイに乗ると、どうもおかしいと首を傾けてばかり。天神平に到着して現在のゴンドラは8年前に新しくできたもので、以前はもう少し小さい6人乗りのものだったことが分かり、ほっと胸をなでおろしていた。頭が混乱して自分は真剣にボケてきたのかと思ったという。いつも何か人騒がせな妻だが、私にとっては今では何とも滑稽で楽しいパートナーなのである。
天神平からさらにリフトに乗り換えて天神峠へと向かう。これは二人乗りのリフトですぐ足が届きそうなところを進む。天神峠は標高1502mで山頂の1977mまでは残り475m。距離も3kmで近い。天神峠で弁当を食べながら「なんだ頂上はすぐそこじゃないか、弁当を食べたら登るぞ」と私は涼しい顔で言い放ったが、そのつもりで来ていないので今日はダメと一蹴されてしまった。もっとも3kmと言っても後に聞いてみると3時間半はかかるという。到底登れるはずもなかった。しかし、山頂を目の前にして、今度は頂上を目指すぞという意気込みが湧いてきたのだった。
再びロープウエイで土合口まで降り、妻が最も私に見せたいという一の倉沢を目指した。
ゆったりとしたハイキングコースの舗装された道は歩きやすく危険もない。出発地点で案内してくれた親切な女性が言った1時間よりも10分早く目的地に着いた。ここから見上げる山頂の眺めが好きという妻の言葉は弾んでいる。そして見上げる山頂はその時ちょうど太陽があり逆光で眩しい。世界的にも有数の難所と言われ、ロッククライマーたちに立ちはだかる岩場には残雪がはっきりと見える。
沢からもう少し先に行ってみると、道路わきの岩にここで命を落とした人々の碑が貼り付けられている。「静かに しずかに 眠れ」と書かれたものもある。ほとんどの人が若い命を落としているのに驚いたが、絶壁の難所から山頂を目指した若き魂にはやはり純粋な気持ちで拍手を送ろうと思った。人の人生にも一歩誤れば墜落という場面があるものだ。沢に降りて水の流音を聞きながら私は数個の石を拾った。
帰路は関越自動車道を使い高崎から倉渕、二度上げ峠を通り帰宅することにした。高崎で予想外の渋滞に巻き込まれ、暗くなって道を間違えるというハプニングはあったが、それもまた楽しい思い出となった。そして、70歳の初小旅行は楽しく有意義であった。しかし、妻と手をつないで歩くというチャンスはまたしても逃したのだった。
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