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人生いろは坂

中国の公害問題を考える 

2013年12月10日 外部ブログ記事
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 小春日和の澄んだ青空は何ものにも代えがたい美しさだ。そんな青空が特徴だった北京の
空を昨今はどんよりと淀んだ空気が覆っている。大陸の冬は美しいことで知られていた。
自然の美しさを壊しているのは全て人間だ。人間の生きていくための活動がそうさせている。
仕方がないことだと言ってしまえばそれだけのことだが、今の経済活動が拍車をかけている。
言い換えれば人間の欲望やわがままが、そのまま反映していると言っても過言ではない。

 さてPM2・5なる物質を含む大気汚染、北京だけではなく上海など沿岸地域の大都市にも
広がっていると言うから今の中国の抱える大きな社会問題だろう。実は中国の公害問題は
昨日今日始まったことではなさそうで、前々からあったものが資本主義経済を導入して以来
いっきょに加速したもののようである。

 先進国に追いつけ追い越せの国を挙げてのスローガンは、この国の抑圧されてきた国民の
心を解放した。華僑に見られるように元々バイタリティに富んだ国民である。お金儲けの
ためなら何でもすると言う激しいまでの拝金主義は公害等考える余地もなく金儲けへと邁進した。

 かつて日本にも良く似た時代があった。私たちは中国人のことを笑えない。海はどす黒く淀み
空気は息苦しさを感じるくらい黒ずんでいた。体の弱い人に問題は集中し、ついには四日市喘息
等と言うものまで発生した。

 他ならぬ私もその当時、水島コンビナートに勤務していたので実情は良く知っている。
コンビナート周辺は空気が汚いので誰も家を建てなかった。コンビナートに隣接する小学校の
窓ガラスの桟には煤塵が毎日積もると言う激しさであった。どれぐらいの量の煤塵が排出されれば
このようなことになるのだろうか。

 喘息患者が発生するのは当たり前のことだった。ここ水島でも各種の公害訴訟が発生した。
海の汚染に対してはこの海で漁をしていた漁師から激しい抗議活動が起こった。工場の門の
前に汚染されたと言う魚がぶちまけられるようなこともあった。漁師達の激しい抗議活動であった。

 水銀問題が社会問題化した時は厳しい目が向けられたこともあった。こうした訴訟や抗議活動の
間にも海には赤潮が発生し、背骨の曲がったボラなどが捕獲されたりと、一向に改善の兆しは
見られなかった。

 実は企業が問題だったばかりでなく家庭排水にも大きな問題があったのだ。その頃、倉敷市も
近隣の市町村も浄化槽や下水道と言うものの整備が遅れていた。そのため家庭排水はことごとく
海に排出されていた。漁民でさえ自宅のごみを海に捨てに来るくらい汚染と言うものに関する
意識は薄かった。海は何でも浄化してくれる、その程度の意識だったのかも知れない。

 しかし、コンビナート周辺には人が集中し、折からの住宅ブームもあって排水量は一気に
増えた。貧弱な浄化設備では追いつかなくなったのだ。浄化のためのとてつもなく規模の大きな
設備が建設されるようになったのもこのころの事であった。

 そして今は以前と少しも変わらぬような美しい海に戻った。やはり浄化設備の効果である。
むろん各工場にも公害協定なるものが締結され定期的に検査が行われている。協定の基準値を
越えるような時には厳しい指導も行われている。むろん総量規制も行われていて新しい設備を
増やすときには従来の設備を縮小か廃止しなければ建設できないようになっている。余裕枠を
持っている企業は良いが、ぎりぎりのところで協定を結んでいるところは厳しい手枷足枷に
なっている。公害と言うものはこのように厳しいものにしなければ防げないと言う一面を持って
いる。

 排気の方は高層煙突が立てられ、排煙脱硫装置なるものも設置された。また煤塵を除去する
ための集塵機も設置された。その後、ダイオキシン問題がクローズアップされ、そのための
規制も強化されることになった。従来の焼却炉は廃棄され新しい焼却炉へと作り変えられて
いった。製鉄の高炉やコンクリート製造工場が焼却処分対象の廃棄物を買い取ると言う新商売
までもが始まった。

 こうしてコンビナートの青空は戻ってきた。夏場になると出されていたオキシダント警報
なるものも、ほとんど出ることはなくなった。コンビナート周辺の誰も立てなかったところが
宅地開発の対象となり、新規に住宅地が広がり始めた。もともと便利なところだったので
多くの住宅が建設された。

 振り返って今の中国を考えてみよう。国も地方も規制と言うものを全く考えていないように
見える。むしろ地方は地方財政を豊かにするためにハードルを低くしている。出来るだけ
自分たちの街へ企業を誘致したいためである。初めから規制を設けながらも企業誘致を行った
日本との違いがここにある。これでは取り締まろうにも取り締まることが出来ない。今の中国では
地方都市に任せていたのでは公害はなくせない。国が挙げて国策として厳しい協定を結び
それを法の力で守らせると言う姿勢が必要だ。

 最早、中国は開発途上国ではない世界的な規模を誇る経済大国だ。その社会的な責任は大きい。
自国だけの利益ではなく全人類的な責任を負っていると言っても過言ではない。いつまでも
小国のようなことを言い訳がましく言うべきではない。青い川や赤い川などと笑ってはおられない
ような川の汚染、それらは全て海へと流れていく。また地下水が汚染され、そのために多数の
がん患者が発生しているとも聞いている。かつての阿賀野川下流域のいたいいたい病や水俣の
有機水銀中毒と同じことが繰り返されている。

 公害問題は時間を待たない。今取りかからなければ被害者は増えるばかりである。人口の多い
中国だから人の命が軽視されているような気がしてならない。金儲けは一時的なもの、人命は
永遠のものである。日本の貴重な経験を繰り返してはならない。

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