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地球一周の旅から10年(18) ウシュアイア 

2014年12月05日 外部ブログ記事
テーマ:テーマ無し



 南アメリカ大陸の最南端に目指すウシュアイアは位置している。ここもアルゼンチン領である。アルゼンチンのブエノスアイレスから
船だと何日も要する遠隔地である。このウシュアイアという街では何もかも「最南端・・・」だとか「最果て・・・」と名前の初めに
冠が付いている。確かに地図を開いてみると、人間が住んでいるところとしては地球上で最南端に位置している。

 この南極に最も近いところに多くの人が住んでいる。そして相対的に若者が多いのが特徴だ。何故だろう。産業は何だろう。暮らしは
どうしているのだろう。さして工場らしいものもなければ、商店も特別多いと言うわけではない。仕事は?食べていくための収入は?・・・。
疑問が残る。

 ウシュアイアという街があるフエゴ島は亜南極と呼ばれている。南極に一番近い場所として南極大陸への補給基地になっている。
従って、南極ツアー等も多くはここから出発している。残念ながら南極ツアーを申し込んだが、既に予約いっぱいで参加することが
出来なかった。

 ネットで調べてみると、最果てのこの地はアルゼンチンの囚人たちの流刑地が始まりであったらしい。それまではわずかばかりの
原住民たちが居住する地であったようだ。地理的に隔絶されていたこの地も今はアルゼンチンハイウエイで首都ブエノスアイレスとも
結ばれており、アルゼンチンハイウエイは南北アメリカを縦断するパンアメリカンハイウエイとも連携している。

 私達は南極ツアーの次の候補としてパタゴニアトレッキングを選んだ。このツアーもとても人気のあるツアーだった。実は船中での
早朝ウオーキングも、このトレッキングに参加することを目的にしたものだった。そのために重たくて大きな登山靴も持ち込んでいたのだ。

 トレッキングツアーは山小屋近くまでバスで移動し、山深く分け入り氷河湖の一つエスメラルダ湖まで歩いて行くと言うものであった。
山小屋を出ると早速、湿地帯へ出た。年間気温の低いこの地では微生物による分解が遅く、湿地帯で成長したコケはそのまま次々と堆積し
数メートルにも達するような堆積物となっていた。

 まるでスポンジの上を歩くような感触の上を足を取られないように用心しながら歩いて行く。ともすればぶすぶすと飲み込まれそうに
なる。右足が沈み込まないうちに左足を伸ばすと言うようにして歩いて行く。行く手には外来生物だと言うビーバーが作ったダムが水を
せき止めている。入植者が毛皮を採取するために持ち込んだという外来生物だ。ここでも環境破壊が進んでいる。

 沼地を抜けると森林に入る。森林の奥は深い。しかし密林ではない。南極に近い寒冷地なので植物の種類が少ない。ツタのような
つる性の植物はほとんど見当たらない。針葉樹やブナの一種だと言う広葉樹が大半である。ここには手つかずの自然がそのまま残っている。
この自然は非常に脆(もろ)い。一度、森林を切り倒してしまうと容易に再生は出来ない。気が遠くなるような時間をかけて自然が
作りだしてきたものだ。

 こうして沼や森林を抜けると川のほとりに出た。目指す湖は近い。小高い堤防らしきものをよじ登ると目の前にコバルトブルーの
湖があった。エスメラルダ湖だ。エスメラルダとはエメラルドという意味らしい。そう湖はエメラルドのように神秘的なブルーで
あった。

 氷河によって砕かれ運ばれた石が小さな微粒子となって水中を漂っていて、これに太陽の光が反射してこのような色に見えるらしい。
私達が訪れた時は、南半球は夏であった。従って、山に雪はなく、氷河だったと言う湖の上流にも氷河らしきものは全くなかった。
やはり温暖化の影響は深刻らしく、この南極に最も近いと言うこの地へも少しずつ影響は現れているようだ。

 ちなみに私たちがウシュアイアに着岸した時は、絵葉書のように美しい街の景色だった。昨晩まで二日続きで降った雨は夜半から
雪に変わり周辺の山々は薄らと雪化粧をして私達を出迎えてくれた。穏やかに澄み切った湾内、その湾に沿うように立ち並んだ
カラフルなヨーロッパ調の建物、そして建物群を懐に抱くようにして背後に聳え立つ切り立った山々、それらがアルプスの山を
見るように雪化粧をしていたのだ。写真などで見るスイスの景色にどこか似ていた。

 カメラを持っているものなら誰でもこの景色をカメラに残したいと思うであろう。そして小さな港は活気にあふれていた。これから
南極へ向けての航海の準備をしている船、コンテナを積んでいる船、荷降ろしをしている船など活気にあふれた港の風景であった。

私達はたどり着いた湖のほとりのにわか作りのキャンプ地へ招かれ、案内役の屈強な若者たちが運んでくれたサンドイッチやワインで
豪華な昼食となった。さして強くない日差しが温かい。鳥たちが盛んに近くまで飛んでくる。どうやら私達のこぼしたパンくずを拾いに
来たらしい。恐れ気もなく近づいてくる。ここには手つかずの自然が、そのままに残っているようだ。

 こうしてこの日のトレッキングツアーは終わった。まだ日差しは高い。南に最も近いこの地では日没が極端に遅い。この日は友人と
一緒にレストランで食事した。分厚いステーキ風な鮭の切り身が出てきた。ナイフを入れると中は生肉だった。実は生肉であることは
新鮮な証拠であったが、食べ慣れない私としては何とも生臭く感じ、もう少し焼いてくれと注文した。レストランのオーナーは怪訝そうな
顔をしていた。

 疲れた足を引きずるようにして街を行き来し、すっかり疲れてしまった。食事を終えて時計を見ると出発刻限が迫っていた。予定の
刻限に帰らないと置いて行かれることになっていた。私達は小走りに港にへいだ。まだまだ空は明るかった。私達はウシュアイアを
後にしてパタゴニアフィヨルドへ向かっていた。ここは名だたる氷河が幾つもあり、また船にとってはとんでもない難所であった。

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