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北軽井沢 虹の街 爽やかな風
小説その13
2016年03月05日
テーマ:テーマ無し
2008年9月、爽太は満65歳になった。そして村役場から一通の封書が届いた。
中には誕生日を祝う挨拶文と温泉券一枚が入っていた。この温泉券、正式名称は嬬恋村高齢者温泉利用券という長い名称だ。一冊50枚綴りになっていて、嬬恋村に住所のある65歳以上の人が購入できる。50枚綴りの一冊が7500円、すなわち一回150円で温泉に入れる。これを一年に3冊まで購入できるという。ペンションひまわりのオーナー夫人が言っていたこの温泉券、以前は100円だったらしい。今年から値上がりしたと話していた。しかし、この温泉券150円はこの年だけで翌年からまた100円になった。
嬬恋村にはたくさんの温泉がある。一番遠い万座温泉では、万座プリンスホテルを含めて6つのホテルの温泉が利用できる。そして鹿沢温泉が二つ、新鹿沢温泉が4つ、そのほかバラギ高原の湖畔の湯や爽太の住む近くにあるホテル軽井沢1130、ホテルグリーンプラザ軽井沢、つつじの湯など全部で18の温泉が利用できるのだった。
有料道路が無料になったことに続いて、思いもよらぬ温泉券獲得に爽太の喜びはひとしおだった。さっそく村役場に出向き温泉券を手に入れたのは言うまでもない。
爽太は千恵子を誘ってまた万座温泉へと向かった。今度の目的は温泉だ。標高1800mの絶景露天風呂に一刻も早く入ってみたかった爽太は、いつの間にかアクセルを踏む力が増していった。万座温泉は緑に囲まれた上信越高原国立公園の中の高山温泉郷で、源泉は硫黄泉で80度の高温、湧出量は1日に540万リットルに達する。昔から豊富な湯量に恵まれ、泉質は20種類を越え、名湯中の名湯と言われている。火山性の島国である日本には温泉がたくさんあるが、この辺りは日本でも有数の温泉地である。もともと日本人は温泉好きであるが、温泉好きの爽太にとって、移住先となった嬬恋村はまさに天国だった。
爽太は迷うことなく万座プリンスホテルの駐車場へ車を止めた。何の知識もなかったが、まずプリンスホテルなら間違いないと判断したのだった。
白濁の湯は独特で、爽太は初めて体験する。いかにも温泉の香りが強く、少し熱めの湯は爽太にとって望むところだった。建物の外に出て露天風呂に進むと標高1800mの絶景とはこれか、と眼を見張る自然の美しさに驚いたのだった。そして景色を眺めながらどっぷりと湯につかり楽しんでいると、なんだか女性の声が聞こえてきた。何と、この露天風呂は女湯とつながっていたのだ。見ると数人の女性はバスタオルを身体に巻いているが、露天風呂で女性と出くわすとは、またびっくり仰天したのだった。この万座温泉にはスキー場もあり、春は残雪と新緑、夏は避暑、秋は紅葉、そして冬はスキー、一年を通じて四季折々に楽しめる。爽太は職がないという悩みも吹っ飛び、しばらくは温泉三昧でゆっくり過ごす気持ちになっていた。嬬恋村にこれほど多くの温泉があることに驚いた爽太は、地図でそのほかの温泉もたどってみた。すると隣町の有名な草津温泉のほかにも、長野県や新潟県にもちょっと足を延ばせば行けるさまざまな温泉があることが分かったのだった。
標高1800mの絶景露天風呂で空を見ると、透き通るような青い空にぽっかりと浮かんだ真っ白い雲がゆっくりと流れていた。そんな時、いつしかあのヴァイオリンの名曲、チゴイネルワイゼンの哀愁を帯びた旋律が頭の中で聞こえてきた。65歳になったが、爽太には学生時代の忘れられない思い出があったのだ。それを思い出すたびに聞こえてくるチゴイネルワイゼンの旋律は、若かったころには激しく強く早いリズムの最終章の部分だけが聞こえていたが、今ではゆっくりと哀愁の漂うリズムを聞くことが多くなっている。
これから先の移住生活がどうなるのか、さっぱりわからない日々の中で温泉は爽太にとって大きな救いだった。
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