メニュー

最新の記事

一覧を見る>>

テーマ

カレンダー

月別

パトラッシュが駆ける!

道具は使いよう 

2017年02月18日 ナビトモブログ記事
テーマ:テーマ無し

缶切というものを、知らない若者が、増えているそうだ。
「何これ?」
「缶詰って、昔は、道具で開けたの?」
首をかしげるのも、無理はない。
今は、プルトップ付きの缶詰が、主流になっている。

昔は、家庭の必需品であった。
これがないと、缶詰があっても、どうにもならない。
今のように、レトルトなんて、ない時代である。

鮭、鯖、鰯、秋刀魚……
魚の缶詰が多かった。
肉もあった。
牛肉があり、鯨肉もあった。
大和煮と称する、濃い味付けであり、この飽食の時代には、
好む人とて少なかろうが、昔は栄養源として、貴重であった。

体力の消耗を補うとして、登山の際に、携行されることがあった。
山頂に着いた。
さて登頂記念の、昼餐をと思いきや、リュックに、缶切が入っていない。
担当者が、忘れたからだ。
仲間から、怨嗟の声を、浴びせられたのも、無理はない。

えーい、この際、背に腹は代えられない。
彼は、持っていたナイフを、缶の蓋に突き立て、その尻を、石でもって叩いた。
切っ先が、缶に食い込む。
それを円周に沿って、繰り返し、何とか蓋を開けた。

窮すれば通じる。
一念、岩をも通した、一つの例である。
担当者には、大見得を切った手前があった。
「缶切りなんか、売るほどあるさ。俺が持って行く」
何を隠そう、この私である。
実際に、売るほどあった。
私は当時、金物店を営んでいた。

 * * *

缶切りは、家庭の必需品であり、よく売れた。
但し、単価が低いから、主力商品とはなり得なかった。
そして、消耗品ではなかった。
壊れない、腐らないで、一つ買えば、十年も二十年も持つ。
これでは、金物店の屋台骨を、支えてくれるわけがない。

わずかに期待するのは、紛失であった。
置き場所を忘れる。
ゴミに紛れ、捨ててしまう。
これらが、わずかに、缶切の売り上げに、貢献していた。

缶切を用い、缶を開ける。
何の雑作もないことだ。
しかし、それでも人は、より楽をしたい。
缶切の刃を、何度も上下させるのは、面倒くさい。
と、消費者が言ったかどうかは、定かでない。
多分、メーカーの側の「売らんかな」であろう、新しい缶切りが開発された。

その缶切には、ペンチのような二本の柄が付いていた。
缶の縁にあてがい、柄を握ると、刃が缶に食い込む。
同時に歯車が、缶の縁を噛む。
あとは、蝶の羽のような、カムを回すだけ。
缶が回転し、その蓋が、自然に切れて行く。
切り口がキレイで、触れても怪我をしない。
少し高価ではあるけれど、斬新で、文化の香りのするような、缶切であった。

これを買ったご婦人が、後日、乗り込んできた。
かなりのこと、お歳を召していらした。
「これ、使えません」
憤りの声を出した。

私の店では、この缶切を売るために、常に空き缶を用意していた。
「これ、この通り」と実演して見せるためである。
売る時に、それをやったはずだ。
しかし、帰宅して、いざ切ろうとしたら、上手く行かない。
それで、乗り込んで来たというわけだ。

「これ、この通り」をまたしてもやった。
手順を追い、実際に、彼女にやらせた。
空き缶を二つ消費し、やっと彼女自身で、出来るようになった。
たかだか、千数百円の商品を売るために、手を取り足を取り、
えらい苦労をした。
させられた。
器具なんぞ、なまじ斬新でない方が、良いかもしれない。

ワインの栓抜きには、もっと苦労をさせられた。
T字の柄の先に、螺旋金具が付いていて、その先がとがっている。
これをコルクにねじ込み、力任せに引き抜く。
これが、原初からある、コルク栓抜きである。
これもまた、改良され、力の要らない型が出た。
「ドイツ型」「イタリア型」とあり、どういう訳か「フランス型」がなかった。

難しかったのが「ドイツ型」だ。
一旦ねじ込んでおいて、レバーを切り替え、回転力を、コルクの上昇力に変える。
この一連の作業の、出来ない客が続出した。
缶切と違い、実演が出来ない。
口でもって、説明をした。
しかし、やはりだ。
世の中に、道具使いに、機敏でない者は、たくさん居る。
買ったはいいが、再び店を訪ねて来る客は、後を絶えなかった。
中には、ワインを抱えて来た客も居る。

その面倒を嫌ってであろう、近年は、栓抜き不要のワインもある。
手でもって、ぽんと開けられる。
あるいは、金属製の、ネジキャップもある。
手軽でいい。

一方で、これを、味気ないとする向きもある。
栓が開くまでに、少し時間がかかった方がいい。
「いざ、飲まん」
その間に、ワインへの期待が、高まると言うものだ。
儀式みたいなものである。

私はもう、リタイアし、売り上げには関係なくなった。
しかし、道具を用いるのは、今も好きだ。
特に、張り切るのは、過去の遺物となりつつある、
クラシックな道具を使う時だ。
客の目の前で、慣れた手つきで、栓抜きを回し、ワインを開封する。
目にも鮮やかに、やってのける。
その時の、客の顔が見たい。

と思っているのだが、我が家に、ワインを飲む客は、滅多に現れない。
缶を開けることも、なくなった。
私の技術は、一代で途絶えようとしている。



拍手する


コメントをするにはログインが必要です

缶詰にも文化の香り

パトラッシュさん

彩々さん、
そうでしたね。
電動缶切り、ありました。
(わが国では、あまり売れなかったので、私の店でも扱いませんでしたけれど)
さすがに、アメリカ、やることが豪快でしたね。

缶々Barですか、面白いですね。
客が来なくて、閑古鳥が鳴き「閑閑Bar」になってしまったのかしら……

缶缶パーティ、面白そうですね。
各自が、珍しい缶詰めを持ち寄ったりして……
私が、缶切りの腕を、見せてあげましょう。(笑)

2017/02/19 09:18:00

またもや…

彩々さん

パトさんの缶切りBlogから、アメリカの
ホームドラマを楽しみに観ていた
少女時代の自分を思い出しました!

大きな冷蔵庫や広い素敵なキッチンが
毎回映し出され、素敵なママがテーブルに
備え付け(?)の電動缶切りで、あっと
言う間に缶のふたを開けていました。
(ё_ё)

私はあれが欲しくて、欲しくて…
コキコキやって、指を切ったりする
事、何度あったか。

アメリカってすごい国だと、缶から目を
離さずホームドラマを観てました。

あぁ〜、私の記憶にあるあの電動缶切りは
どこへ行ったのでしょう。

そういえば、家の近くに「缶缶Bar」という
お店がありましたが、いつの間にか閉店
してました。
シャンパンパーティーもいいですが、
「缶缶パーティー」もイイですね!?

2017/02/19 06:19:33

号砲

パトラッシュさん

シシーマニアさん、
コメントを拝見し、シャンパンパーティを、やりたくなっております。
オープニングの号砲みたいなもので、確かに、あの音は、景気づけになりますね。
一人シャンパンも、悪くないのでは……
シシーマニアさんなら、きっと絵になりますよ。

2017/02/18 12:23:40

良き旦那様でした

パトラッシュさん

喜美さん、
旦那さんの、ご器用だったことは、砥石を初めとして、お宅の随所にうかがえます。
喜美さんは、きっと、奥様に納まっていれば、よかったでしょうね。
出来ることなら、お眼にかかりたかったです。

2017/02/18 12:16:06

開けるは楽し

パトラッシュさん

澪さん、
そうです、コキコキ……
簡単でしょ。
ところが世の中には、これの出来ない、使えない人が、少なくないのです。

ワインオープナーは、歯車式の方が、わかりやすいですね。
スルスルスル……
コルクが上がって来る、あの瞬間が、楽しいのです。

2017/02/18 12:11:25

素人には、シンプルが道具がいいようです

パトラッシュさん

藤の花さん、
折れましたか、レバーが……
それは、困りましたね。
割り箸を継ぎ足して……というわけにも、いきませんからね。

2017/02/18 12:04:59

シャンパンの栓抜き

シシーマニアさん

友人に教えて貰い、Amazonで購入してみました。

家族の中に、シャンパン好き、とまではいかなくても、イベント好きな男性でも居れば良いのですが・・。

シャンパンの栓は中々、か弱き女性の手には、追えません。


それが先日、てこの原理をつかう、という栓抜きを手に入れました。

私の場合、慣れるまでは骨が折れましたが、結果的には、確かに簡単に栓が抜けました。

これなら、一人でも呑めるなぁ、という気持ちと。

ポーンと威勢良く飛ぶあのコルクは、パーティーの中の、演し物の一つでもあったんだなあ、という贅沢な感慨もありました・・。

2017/02/18 10:48:32

今は便利

喜美さん

便利過ぎて心配 何でも簡単でいいけれど頭使わず さっと出来て(こんなところで頭使う方が馬鹿か)缶切りは良かったけれどコンビーフあけるのは
面倒でした くるくる巻いていくのに
曲がると駄目になるし何時も主人の仕事 彼は器用者なの
ワインは先日でわかったでしょう
何処に仕舞ったか解らない程使わないです

2017/02/18 10:26:34

缶切り

澪つくしさん

自慢じゃないけれど・・・

私は昔のあの小さな缶切り使うのが、上手ですよ♪
親指と人差し指でコキコキコキ・・・
(歳が分かりますね〜(⌒▽⌒)アハハ!)

缶切りが必要な缶づめ、
最近でも偶に見かけますね〜!

そんな時は、引き出しの中をゴソゴソ・・・
今でもちゃ〜んと取ってあります!

ワインオープナーは歯車式の方が、
私のようなかよわい?女性には、楽ですネ〜♪


缶切りを忘れたエピソードの主は・・・
パトさんでしたのね?

ナイフを突き立てて開けるなんぞは、
男を挙げましたね(。-∀-) ニヒ

2017/02/18 10:24:31

道具

藤の花さん

弘法の筆、大工はよい道具、素人には考えないで使えるもの。ちょっと意味不明になってしまいましたが。
先日、ワインオープナー(歯車式)のレバーが折れた。

2017/02/18 09:41:27

PR







上部へ