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北軽井沢 虹の街 爽やかな風

小説・ルオムの森―7 

2017年09月23日 外部ブログ記事
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いよいよ演奏会当日。天気は快晴で無風状態。野外演奏会は天候に左右されるが、その日
は絶好のコンディションに恵まれた。森の中での演奏会、その座席は、木と木の間に丸太でできたベンチが至る所に配置され、二人用の木製ベンチも点在している。また、一人用には直径30センチくらいの切り株が数多く置かれている。それでも座れない人はどこかの隙間に立って見るという仕組みだ。開演一時間前からステージのまわりや森の木々に取り付けられた500個のキャンドルに火がともされはじめた。高い場所にはハシゴや脚立が使われ20数名の人たちが一つひとつ点灯していく。点灯されるキャンドルが徐々に増えていくたびに風景は変化していき、入場してきた観客があちこちから歓声をあげる。


キャンドルは細い釣り糸で木の枝から吊るされているため、まるでキャンドルだけが宙に浮いているように見えるのだった。


私と北沢せつこは、ベンチを探したがすでに空いた席はなかった。ステージがよく見える位置の切り株を見つけて座るしかなかった。自然の中なのでランダムに配置された座席は入り乱れている。北沢せつこは、私の右斜め後ろ2mの位置にある切り株にいた。
広い森の中、観客の数は想像するしかないが、200はかるく超えていた。ざわめきと歓声が渦巻く中、マネージャーの月山良太がステージに現れ、ルオムとは自然に従う生き方であり、自然の中で聴く音楽を楽しんでほしいと語る。電気は一切使われていない。灯りはキャンドルだが圧倒されるその数で森は明るく輝いていた。場所によっては木の影が神秘的に映し出され、ある場所では一番高い位置のキャンドルが輝く星のように見える。
そんな中で演奏は始まった。最初に登場したのは妹の森子だ。必死に練習を重ねた曲は、アメージンググレイス。物おじしない性格はトップバッターにうってつけ。オカリナの音色は力強く森の中を響き渡った。他の楽器の伴奏のまったくないオカリナだけの音は、時折吹く微風に揺れるキャンドルが、さながらオカリナの音が揺らしているように感じるのだった。舞台に立ったことのない森子は、自らの音色にうっとりする様子で堂々と演奏を終えた。響き渡る観衆の拍手も森の中であるがゆえに室内で感じるものとは別物だった。
続いて舟山まいこは「故郷の空」を演奏した。誰でも知っている歌だが、郷愁の思いが込められ、私は胸が熱くなってきた。簡単なメロディーのなかになにか甘い雰囲気が漂い、移住者でなくても少し年配の人たちなら同じような気持ちになる人は多いことだろう。
若さ溢れる舟山まいこは、森子に勝るとも劣らぬ度胸があるように思えた。次に登場した島崎しずかの演奏曲は「荒城の月」、この曲も知らない人はいないはずだ。私はずいぶん若い頃を思い出していた。子供の頃よく歌った歌だ。滝廉太郎という作曲者の名前もよく覚えていた。思わず上を向いて空を見たが、光り輝く多数のキャンドルで空は見えなかった。ゆったりしたメロディーは森の木々を踊りながら通り過ぎていくようだった。観衆はうっとりと聞いているように見えた。オカリナの音色はこの自然の中にとけこむように響いていく。まさにオカリナは自然と融合する楽器なのかもしれない。さすがに3人ともオカリナを習い始めてまだあまりたっていないので、いつの日か夜空の星が光る野外で聴いた宗次郎の音色には遠く及ばないが、この森のステージが3人の演奏を数倍高めていったことは明らかだった。私は、ふと後ろの北沢せつこを振り返ってみた。目が合った彼女はニッコリと微笑み。この演奏会に満足しているように見えた。

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