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節分の民話を二つ 

2022年02月03日 外部ブログ記事
テーマ:テーマ無し



毎年掲載したい、一番好きなお話から。次に最近知ったお話を載せました。


鬼は内
かぁしあるところに、とっても貧乏な男がおった。
「今日は節分だぁ、豆撒かねば。かか、豆持ってこう」
「豆ねえぞぅ、種豆っきりねえぞぅ」かかどのはいう。
「ほうかぁ、種豆使っちまっては、畑に蒔けねえし困ったな。けど、節分に豆撒かねえわけにもいかねえべ。−−−かまぁねえ、かまぁねえ、種豆ひとつかみだけ持ってこぅ」
男は、持ってこさせたわずかな豆を、ほうろくという、土でできた浅い鍋に入れて、からころからころ、ていねいに炒った。


やがて晩方になると、あっちの家でも、こっちの家でも「鬼はぁ外、福はぁ内」「鬼はぁ外、福はぁ内」と豆撒く声が聞こえて来た。


男も撒こうとして考えた。
「毎年毎年、鬼は外、福は内って豆撒いてきたども、福なんつうものは入ってきたためしがねえ。福のふの字も入ってこねえんなら、ひとつ今年は、鬼は内とでもやってみっか」となって、外に向かってでっかい声で
「鬼はぁ内、鬼はぁ内」とやったんだと。
すると、あたりほとりの家々から、追ん出されてきた鬼たちが、ぞろぞろぞろぞろ集まって来た。
赤い鬼、青い鬼。年寄りの鬼、子供の鬼。でっかい鬼、ちっこい鬼。ぞろぞろぞろぞろ、わらわらわらわら、入ってきてなぁ、広くもねえ男の家、鬼たちでいっぱいになった。
みんな囲炉裏を囲んで火にあたってる。
すると,一番でっかい鬼が言った。
「いやぁ、ありがてぇことありがてぇこと。おら、長えこと鬼やってるども、節分の晩によばってもらったなぁ初めてだ。嬉しいこと嬉しいことぉ。−−−したが、よばってもらったごっつおうは 火 だけがん?」なんて言うもんだから男は慌てて、
「あらら不調法致しやした。ほんではまず、これ」と、さっきの豆の残りを渡したが、なにしろちっとしか無かった豆だ、枡ごとまわしても、一粒ずつつまんだらおわっちまった。
男はかかどのに、
「何ぞ他にねえのがん?」と言うと、かかどのは、
「そういやあ、おら、よそ行きの腰巻一枚とってあっから、あれ、質屋さ持ってってみるべえ」と、腰巻き持って質屋に走った。でもなぁ、いくらよそ行きでも、腰巻きは下着だもの、僅かばかりお金を借りて、酒買ってきたが、みんなでひとなめしたら終わっちまった。男とかかどのが何か無いかとゴソゴソやっていると、さっきのでっかい鬼が立ち上がって、。
「いやあ、このやのかかどのが、腰巻質に入れてのごっつおう、なんぼか旨かった。
このやのかかどのが、腰巻質に入れてくれたっちゅうに、おらが褌してたんでは申し訳が立たねえ。こんだ、おらの褌、質屋さ持ってってもらいてぇ」と、あたりにあったきたねえ手ぬぐいなど腰に巻くと、がらり、虎の皮の褌外してよこした。かかどのはまた質屋に走って行ったんだが、たまげたのは質屋の亭主、
「こだな宝物、おらえではとても受け切れねえども、今が今銭がいるんであれば、銭函ごと持ってってくなんしょ」となって、かかどのは、銭函持って酒肴をどっさり買い揃え、大八車に積んで、引っ張って帰ってきた。
さあそれからは、さあ飲め、さあ歌え、さあ踊れと、大騒ぎになった。
鬼も人と同じでな、飲むほどに、陽気になる笑い上戸の鬼もいるし、口説きながら泣き出す泣き上戸の鬼も、いきなりおこりだす怒り上戸の鬼もいる。お腹が一杯になるとすぐごろんと寝転んで、いびきかきだす鬼もいる。
その寝ている鬼を跨いだり、踊ってる鬼の股ぐらをくぐったりして、子供の鬼たちが鬼ごっこを始めた。
もう賑やかなこと、賑やかなこと、男も、かかどのも、一緒になって歌って踊って楽しんだ。が、やがて、
「こけこっこ〜」と一番鶏が鳴いた。それ聞いて鬼たちの慌てたこと、慌てたことな〜
寝ている鬼、叩き起こし、散らばってる子供らを抱きかかえて、寝ぼけまなこの奴引っ張って、わらわらと帰って行ってしまった。
鬼たちの帰ったあとの部屋には、あっちこっちに転がってる徳利やら酒樽やらに混じって、そっちの方に巾着、こっちの方に打ち出の小槌、金棒から褌まで いやもう大変な忘れ物であった。・・・


男は、部屋の真ん中に座り込んで、かかどのに、
「いやあ、楽しかったな〜」といって、鬼たちの忘れ物に気がつくと、
「これは、また来年きてもらったら、お返しせねばなんねぇ」と言って、きちんと纏めて納戸に納めた。


不思議なことにその年はなぁ、男はなにやってもうまく行く。山さいけば、春のワラビ、タケノコから、秋のキノコまで、持ちきれねえほど採れる。川さ網かけておけば魚がずっぱりかかっているし、畑の作物は、あたりほとりに、配っても、配っても、配りきれねえぐらい採れる。
ほういうわけで、質屋にお金持って行って、かかどのの腰巻も、鬼の褌も、すぐに返してもらって来た。
ほうで、次の年の節分前にゃぁ、座敷の畳全部取っ替えて、戸、障子も磨き上げて置いた。
節分に日には、御膳をずら〜っと並べてご馳走山盛りにして、酒は樽ごと用意して置いた。
鬼どのの忘れ物は、さんぼうの上さきちんと並べて、晩方になるのを待った。あっちこっちの家から、 「鬼は外、福は内」とはじまると、そろそろ良いかなと 男は、
「鬼はぁ内、鬼はぁ内」「鬼はぁ内、鬼はぁ内」と、でっかい声でよばったけれど、だぁれも入ってこねえ。
「おかしいなぁ、去年あだに居た鬼どのたち、どこさいっちまったんだべ?」と、暗がりをすかしてみたれば、門口のあたり、いぐねのあたり、植え込みのあたりに、去年見た顔がずらり並んでいるんだと。
「な〜んだ、そこさ居たのか、ほれ、はいってくなんしょ。今年はな、質屋さ行かなくても、ごっつおうたんと用意してある。おめえ様方の忘れもんも、三宝さのせて、ちゃんとしてある。さぁ、早く入ってくなんしょ。いや俺去年な、あんまり楽しかったもんで、お礼すっぺと思って、酒も肴も、たんと用意して待ってたんだ。早く入って、一緒に飲んでくなんしょ」と言うと、あのでっかい鬼がな、
「今年はごっつおうになるわけいかねえ」と言う。
「なしてだぁ?訳聞かなかったら、おら、気ぃおさまらねえ。訳語ってくなんしょ」そう言ったれば、鬼がなぁ、
「実は、俺だち去年な、鬼になって始めてぐれえの旨い酒ごっつおうになって、あんまり楽しかったもんで、夜ぉ更けるのも気いつかねえで遊んでるうち、一番鶏鳴いて、慌てて鬼の島さ戻って、何とか門の閉まる前に滑り込みはしたんだが、巾着忘れた者やら、打ち出の小槌忘れた者、金棒忘れた者から、酷いのは褌してねえという有様でな、閻魔様にごしゃがれた、ごしゃがれた。
「おめえら、その忘れてきた物、なじょする気だ」って聞かれたから、
「来年の節分に行って、返してもらいます」と言ったら、
「なあに語る、来年の事語ってなに分かる。あぁだ滅多にねえ宝物、人が返してくれると思ってんのか!
見ろ、おめえが来年のことなんか語るから、後ろの方で、鬼めらが皆笑ってるでねえか!」ってますます怒られてな、おらだち、ちんこくなってこの一年暮らしてきた。ほういうわけで、今年は酒飲むわけにいかねえんだ」そう聞いて男も納得して、
「そうかぁ、そんでは用意した酒とごっつおう、全部持ってってくれ」酒は樽のまんま、ごっつおうは竹の皮にくるんで、全部持たせた。三宝の上の忘れもんも、全部まとめて返した。ほうしたれば、でっかい鬼がなぁ、ちっこい巾着一つ渡してくれた。
「他の宝は、力が強すぎて、とても人には使いこなせねえが、この巾着なら、おめえ様にも使えるから」と言って、置いてってくれたんだと。
その巾着はな、中に入れた銭をなんぼ使っても無くならねえ巾着なんだ。
ほうで、巾着のお陰だけで無く、仕事もうまくいって、その家はたいそう豊かになったんだと。何代続いてるかわからねえども、その家はな、今が今でも節分になると、門口さ酒とごっつおう用意して、
「鬼はぁ内、鬼はぁ内」とやっているんだそうな。 おしまい。





節分と貧乏神

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