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阿波の局のブログ
〈たなごころ 信仰体験〉 命の音色。今を奏でる 抜粋
2022年11月26日
テーマ:テーマ無し
🌸 かわいい魔法の手大阪府堺市? 秋の放課後。松岡桃香さん(14)やわらかな音色で、音楽室を温める。トロンボーンに添えた右の手。生まれつき中指がない。幼き日、「こんな手、嫌いや」つぶらな瞳に涙をためた。母・智子さん(51)はその手をさすり、大きな愛と祈りで包んだ。? 妊娠8カ月。胎児の心疾患が判明した。 「ファロー四徴症」。心室中隔に穴があり、肺動脈も半分の狭さだった。「真面目に信心してきて、これ?」心が乱れに乱れた。御本尊を恨み、泣きじゃくる。? インターホンが鳴った。女性部の先輩がいた。奈落に沈む心を丸ごと包む「ものすごい笑顔」だった。 思わず涙があふれた。「智ちゃん、絶対大丈夫や」。題目であらがうと決めた。? 2008年(平成20年)6月。次女の桃香さんが産声を上げた。 最悪の場合は、即手術と聞かされていた。それなのに、新生児集中治療室で一人だけ管を通さず、おちょぼ口でミルクを飲んでいる。穏やかな命の奇跡を感じた。 ただ、娘の手にはタオルが巻かれていた。 「右手の中指が欠損しています」 小さなベッドの中の愛くるしい寝顔。これから立ちはだかる辛酸を思うと、胸がきしんだ。? 生まれた直後の写真は1枚限り。アルバムからは数年の間、桃香さんの記録が抜けている。 「それだけ余裕がなかった」 泣けばチアノーゼが生じ、発作も起きる。「できるだけ泣かせないように」と医師から言われた「赤ちゃんは泣きますやん」。 24時間、緊張が張り詰めた。「好きなだけ泣かせてあげたかった」? 1歳半で心臓にメスが入った。医療機器につながれた娘の姿。泣いて祈った。3歳の時に指の手術もした。小さな体で、一つ一つ山を越えた。 ? 夫の寛さん(51)と祈り、話し合った。 人と違う手。恥ずかしい。後ろめたい。そんな思いを絶対にさせはしない 「負けへん子に」。右手を隠さず、大きな愛で育てた。? 物心がつくと幼い感情は揺れた。「こんな手、嫌いや」。娘の涙に胸が詰まる。「お母さんは大好きやわ! かわいいお手てやん」。小さな手をさすった。 幼稚園のバスから、泣いて降りてきた「お化けって言われた……」 「あんたは何も悪いことしてへんねんから、堂々としとき。負けたらあかん」 そう言った後、御本尊の前で泣いた。「私の10本の指を、この子の1本に替えてください」。無理だと分かっていても、それが母の想いだった。? 桃香さんは、たくましかった。4本指の右手を利き手とし、箸も鉛筆も器用に握った。何でも自分流を編み出し、親の不安を越えていく。 「できない」心配よりも「できる」驚きが、生活を彩った。 福引の抽選器を回せば、不思議なほど当ててくる。「あんたの右手すごいな。魔法の手やん」「せやろ」桃香さんも、自慢げな顔? 9歳で再び心臓にメスを入れた。ずっと青かった唇に、紅の色がともる。肺活量も増えた。小学4年から吹奏楽部に入り、トロンボーンを始めた。負けず嫌いで、どんどん道を開いた。? 4年前。智子さんに大動脈瘤が見つかり心臓の手術をした。 術後の痛みに、もん絶した。それでも「桃香の不安や痛みを、少しは分かってあげられる」。御本尊に感謝した。 ? ずっと、強い母であろうとした。 「負けたらあかん」。娘にかける言葉は、自らへの叱咤でもあった。試練のたびに「もう無理」という言葉がついて出た。池田先生が言う「(苦境の時に)朗らかに微笑むことのできる人」でありたかった。強がりでもいいから、笑おうと決めた。 曇り空でも、母がガハハと笑えば、家族は笑顔になった。? いつも娘に甘い夫。どれだけ煙たがられようが、めげずに長女と次女に絡んでいく。 のんきな姿を見ていると思わず眉間にしわが寄るだが、とことん優しく、信心にあつい夫が隣にいたから、希望を手放さず、今日まで進んでこられた。? 桃香さんは3カ月に1回、検診に通う。 心肺機能に低下が見られれば、一番の喜びとしている管楽器の演奏も制限される。 「むりぃー」と言いながら「まぁ、その時はまた頑張るしかないか」青春の空の下で、「今」を大切に奏でている。? 今年の5月。母の日に寄せて、桃香さんが書いた作文が、コンクールで特選に選ばれた。 〈たくさん泣かせてしまった分、これからはお母さんと同じくらい明るくポジティブにお母さんを笑顔にしていきます。産んでくれてありがとう。大好きやで〉 くすぐったいような愛しい言葉。じんと目頭が熱くなる。涙のあと、母はまた底抜けに笑う。? 関西創価中学に通う松岡桃香さん書道が得意。全国書道展覧会で金賞を受賞吹奏楽に熱中する一方で、学業は「全然ヤバい」すかさず母の智子さん「ちょっと色つけて言うとき」「天才です」「言い過ぎや」にぎやかな日々。
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