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ドリアン 南国は果実の季節
2024年05月02日
テーマ:筆さんぽ
この季節になると、タイの果物を思い出す。
タイの暑気は、たっぷり熟した果実と、なまめかしいほどの色香をただよわせる花々の季節。
花々は街をキャンバスにして色を舞わせ、果実は自慢のプロポーションを競い合う。街全体が甘く、かぐわしい空気でつつまれているようである。
太陽がなごんでくれる夕方、市場の周辺には地方から小型トラックで運ばれてきた果実の露天が並び、まるで果樹園を歩いているようである。
「果物の王様」と呼ばれるドリアン(タイ語で「トゥーリアン」)、そのまま食べても、干してもうまいマンゴ(マムアン)、楊貴妃の好物だったというレイシ(リンチ)、赤い実をたくさんのヒゲでおおわれたランブータン(ンゴ)、果実のなかではもっとも大きいといわれるジャックフルーツ(カヌン)など、日本ではあまり知られていない果実が、おどろくほど安く手に入る。
なかでもドリアン。この果実に初めて出会ったときは、軽いカルチャーショックを受けるほどに、そのプロポーションと味には驚かされた。
ドリアンは、人の頭ほどもあるその実の表面が、外敵から身を守るにしては大仰すぎる無骨なトゲでおおわれ、強烈な臭気を放つ。その独特な香りというより、臭いから、飛行機への持ち込み禁止や、バンコクでは持ち込み禁止のホテルがあるほどである。これはくだもの世界の「イジメ」であろう。ドンな世界であってもイジメはよろしくない。
ドリアンは、市場や露天などで一個まるごと買っても、兜のような表皮を「解体」して中身を食べることは難儀である。この「解体方法」を露天でみていると、トゲ防止のぶ厚い軍手で押さえこみ、薪を割るようなナタでズドンと一撃し、このわずかな隙間に両手を入れて、満身の力でこじあけるのである。
降参したドリアンの身体を開くと、ここにはやわらくてクリームのようなみずみずしい黄色い実がどっさりと詰まっているのである。
香りは、この黄色い実からである。
この異臭ともいうべき独特の香りをなんと表現しよう。ビロウな話で申し訳ないが、「厠でシュークリームを味わう」と読んだことがある。この厠は、水洗便所前のお便所である。たしかに気分はでているが、食べ物にこの例えは品がないので止めましょう。
ぼくは慣れたのか、その強烈な異臭も不快感をもたずに食べことができるが、すすんで食べることはない。
ドリアンには強精剤効果があって、体内で異常発酵するあこともあるので、酒を飲んだときは食べないほうがよいといわれている。
ぼくは、どちらかと選択をせまられたら、ドリアンには申し訳ないが、迷うことなく、酒を選ぶ。
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