メニュー

最新の記事

一覧を見る>>

テーマ

カレンダー

月別

人生いろは坂

夕日の中のシルエット 

2013年11月17日 外部ブログ記事
テーマ:テーマ無し



 私の脳裏に浮かぶワンシーンがある。それが「夕日の中のシルエット」である。
私のホームページで、かなり以前に紹介したことのある一文である。私は広島県の
神辺町と言う小さな町で幼いころを過ごした。神辺町は旧山陽道の宿場町である。
本陣があり旧街道沿いには古市、七日市、三日市という地名が残っている。きっと
街道沿いには市が立っていたのであろう。市があったと言うことと備後絣(かすり)
は無縁ではない。神辺は繊維の街でもあった。路地を入ると織機の音がし、染色の
匂いがした。

 山陽道に沿って高屋川と言うさして大きくもない川が流れている。幼いころには
欠くことの出来ない子供たちの遊び場であった。真冬を除いてオールシーズンの
遊び場であった。川底は浅く典型的な天井川であった。この川は暴れ川でもあって
梅雨時には、しばしば氾濫した。氾濫しないまでも堰堤すれすれまで水かさが増し
溢れそうになるのは毎度のことであった。何度か下流域が決壊したと言う話を聞いた
こともあった。

 余談になるが、この川は大改修が行われている。重機などと言うものがない時代の
ことであった。全ては人の手で行われた。近くの山を削り土を運んで堤を高くしたのだ。
当時にすれば大工事であったことであろう。改修した堰堤の範囲のほどは良くわからないが
相当の人手を要したことであろうことは想像に難くない。

 叔母の話だと、その工事の時に崩した山から夥しい人骨が出たとのことであった。
その人骨は囚人のものだったと言うが定かではない。実はその山の近くに関所が
あったと言うことからの想像であった。しかし、この大改修のお蔭で少なくとも
以前より洪水の可能性は薄らいだ。

 子供のころの高屋川は「春の小川」の歌にもでもなりそうな穏やかな流れで
きれいな澄んだ水であった。その水がいつの頃だったか汚れて淀んだ流れに変わって
いた。幼いころの思い出が汚されたような不愉快な思いがした。もともと水量の
少ない川である。汚水が流れ込めばたちまち汚染されてしまう。それにしても
この川の上流には水道の取水場があったはずである。神辺で初めて設置された
上水の水源である。

 川の汚染は洗濯機の普及とともに始まった。洗濯機は主婦のつらい仕事の一部を
解放した。洗濯機は三種の神器とも言われテレビとともに庶民の憧れでもあった。
その洗濯機の普及とともに川の汚染は始まった。洗濯機に使う洗剤が大きな原因で
あった。石鹸もその後に開発された洗剤も表面活性剤である。これが衣服に付いた
油や汚れを浮かして水に溶かしてくれる。洗濯機は水をかき回してそのお手伝いを
している。

 ところがこの表面活性剤はとんでもないものだった。川に住む生物を殺してしまう
ほどの力を有していた。こうして川を浄化する微生物が死に、それに次いで大型の
昆虫や動物が死んで死の川と化していった。私が久々に見て、がっかりした時は
丁度、川が死んでいた時だった。洗剤の原料は改良されたが表面活性剤には違いない。
今も浄化設備がなければ昔とさして変わらない。洗剤は過度に使わず、使わずに
済むならば使わない方が良い。

 当時、川も海も泡立っていた。それくらい大量の洗剤が河川や海を汚していた
ことになる。洗剤を使わず手で洗濯をしていた頃の小川は下の方にヘドロがたまって
いても上水(うわみず)はきれいでオタマジャクシなどが泳いでいた。如何に洗剤と
洗濯機の普及が自然を壊してきたか良くわかる出来事であった。

 実は「夕日の中のシルエット」を書き始めていたのだった。美しい流れと牛や馬が
草を食(は)む堰堤。穏やかな景色であった。神辺は葛原しげる先生の故郷でもあった。
葛原先生はこの地の夕日を詩にしておられる。それに室崎琴月先生が曲をつけて
誕生したのが「ぎんぎんぎらぎら夕日が沈む、ぎんぎんぎらぎら日が沈む」という
童謡である。童謡に歌われるほど神辺の夕日は特徴的で美しかった。子供心にも
何となくロマンチックな心になっていくのを感じていた。

 そうした夕日が西に傾くころ放牧していた牛や馬が引かれて帰っていく。そんな
一シーンの話が「夕日の中のシルエット」であった。裸馬にまたがった少年が妹を
馬の背に迎え、すっくと堰堤の上に立ったのであった。丁度、夕日は西に傾き、
私の立っているところからは逆光であった。まさに馬の背にまたがった少年と少女が
黒いシルエットとなって、まるで映画の一シーンでも見ているようであった。

 実は、私の脳裏には美空ひばりの歌「あの丘越えて」がテーマ曲だった映画の
シーンとダブっていたのかもしれない。少年ながら「胸キュン」の瞬間だった。
今は遠く過ぎ去った少年の頃の思い出である。

>>元の記事・続きはこちら(外部のサイトに移動します)





この記事はナビトモではコメントを受け付けておりません

PR





掲載されている画像

    もっと見る

上部へ