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パトラッシュが駆ける!

小噺「悋気」 

2015年01月09日 ナビトモブログ記事
テーマ:テーマ無し

「おや、丑じゃないか、どうした?浮かない顔して」
「ご隠居さん、いいところで会った。まあ、聞いておくんなさい」
「また仕事をしくじったか?」
「いいや」
「憚りに、財布でも落としたか?」

「臭いねえ・・・、急かさねえで、聞いておくんなさい。実は女が出来まして」
「そりゃあ、目出たいな。で、何処の誰だ、相手は?」
「通りの飯屋に、今度へえった仲居でやんす。これがあっしに、
気があると見え、おかずを一品、そぉっと運んで来ちゃ、にっと笑うんですよ」

「結構じゃないか。いい女か?」
「まあまあで」
「何でも、ほどほどがいい。気立てはどうだ?」
「これもまあまあで」
「そりゃいい。すぐにでも妻問いしろ」
「なんです?」
「妻問い、即ち求婚のことだ」
「古いねー、相変わらず、言うことが」
「仲人は、わしがやってやる」

「いえね、それがね、後から仇が現れましてね」
「恋仇か、誰だ?」
「川向こうの、源太ってえ、鳶の者です。こいつがあっしらの、
邪魔をするんですよ。
二人で話をしようとすると、すぐにあっちから声をかける。
おみっつぁん、こっち、熱燗をもう一本なんてってね」
「おみつというのか。まあ、がんばってみろ。ここが正念場だな」

「ちらっと聞いた話じゃ、源太のやつ、陰でおいらの悪口を言ってるらしい」
「よくある話だな。仇の足を、引っ張ろうてえ算段だ」
「そんなら、こっちも負けずに、やつの粗ぁ探して、引っ張り返そうかと」
「やめとけ。人間が卑小になるだけだ。聞かぬふりをして、大らかに構えろ」

「悔しいじゃあ、ありゃせんかい」
「世の中には、悋気を抱き、人を謗る者が居る。そんな小人物に惑わされるな」
「何です?、りんきたあ」
「嫉妬のことだ」

「するてえと、あっしが妬かれてるってこって?」
「源太とか言ったな。あっちの方が焦っておる。遅れを取るまいとしてな」
「なるほど、こっちが本筋だって、そう考えりゃいいんだな。
ご隠居さんも、たまにゃ、いいことを言う」
「たまだけ、余計だ」

「ご隠居さんなんか、もう、妬かれることもないんでしょ」
「もうだけ余計だ。今や、超越しておるからな、色恋からは」
「えへへ、こないだ見ましたぜ。粋な年増と、仲睦まじく歩いてるところを」
「ああ、あれは弟子だ。こっちの方のな」

「へえ、女が碁を打ちますのかい」
「まだ弱いが、筋はいい。じきに強くなるだろう」
「隅に置けないねえ、ご隠居も、このー」
「妬くやつが一人おったわ。川向こうの饅頭屋の音吉だ。わしの碁仇でな」

「よくよく、川向こうに仇が居るねー」
「美人の弟子を、よくも手に入れたと、これが饅頭屋だけに、湯気を立てて、妬きおっての」
「陰口でも言いましたか」
「うん、褒め上手の碁兵衛が、口先三寸で、女をたぶらかしたってな」

「怒らねえんで?」
「小物相手に、大人げないことはせんよ」
「今度会ったら、言ってやるといい。てめえ饅頭屋のくせに、
焼き餅も始めたのかって」

「ははは、わしはわし流で行く」
「どんな?」
「そりゃお前、相手が悋気だけに、臨機応変に行くさ」



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背中押しましょか

パトラッシュさん

彩々さん、
SOYOさんから、碁兵衛の名を、借用しました。
(ネーミングが面倒だったので)
微妙にキャラが違いますかね?・・・
少年ぽさ?
心当たりはありませんが(笑)

彩々さんなら、小噺いくつでも、出来ますよ。
時代設定も人物像も、何も関係なく、自分の思っていることを、
仮想の相方と共に、語ればよいのですから。

2015/01/10 07:22:49

ふ、ふふっ

彩々さん

最後のオチの所で、ははは、、、

その手前の
>うん、褒め上手の碁兵衛が、口先三寸で、女をたぶらかしたってな」

ふふふ、碁兵衛さんのこと、言い当てて
いるところでクスって、納得しながら
笑わさせていただきました。
こちらの同名、碁兵衛さんは、またちょっと違う
人物像になっていて、少年ぽさが今なお残って
居る殿方と見ました。

小粋な小噺、私も創ってみたいなぁ。

2015/01/10 05:48:09

名前

パトラッシュさん

SOYOKAZEさん、
共用ネームが増えそうですね。
江戸時代の人名は、限られていますから。(笑)

今のきらきらネームを見たら、昔の人は仰天するでしょう。(笑)

人参送ります。

2015/01/09 20:14:35

オチ

パトラッシュさん

プラチナさん、
苦肉の策で、なんとか落としました。

2015/01/09 20:11:50

どうぞ!どうぞ!

さん

碁兵衛の名は師匠が使うにぴったりです。

猪とか熊は掃いて捨てるほどありますから。(笑)

特許を申請していませんから、人参で手を打ちましょう。(笑)

2015/01/09 17:21:48

天晴れ!

プラチナさん

流石に落としどころが、見事に決まってますね。

2015/01/09 17:00:00

びしびしと

パトラッシュさん

Reiさん、
足なんかすくませていないで、せっせとお書き下さい。
新居にも、落ち着かれたことでしょうし、今年は書き物において、一大飛躍を遂げて下さい。

ご希望とあらば、何時でも鞭を入れますぞえ。

2015/01/09 15:47:14

りんき

パトラッシュさん

喜美さん、
SOYOさんからの影響は、多分にありますね。
のべつ眺めていますので・・・
あまり似て来ても困りますね。(笑)

悋気は今では滅多に、使われない言葉です。

喜美さんのコメントというものが、これがもう、
臨機応変そのものです。

2015/01/09 15:43:26

隅に置けない

パトラッシュさん

吾喰楽さん、

>「もうだけ余計だ」
>「へえ、あっしは丑ですから」

これは上手い。
使いたかったなあ・・・

その調子なら、小噺なんか、いくらでも出来るでしょう。




2015/01/09 15:37:28

今後も考え

パトラッシュさん

SOYOKAZEさん、
碁兵衛の名を、借りました。
(ネーミングが、面倒なので)(笑)
ついでに、熊とか猪とか、借りようと思ったのですが、こちらであまり活躍させてしまうと、
そちらの今後に差し支えるだろうと、止めました。(笑)

2015/01/09 15:33:52

お見事!

Reiさん

さすが師匠です。
幾重にも笑いが絡まっている感じです。
お手本が良すぎて、弟子は足がすくみます…(^_^;)

2015/01/09 11:38:34

楽しかった

喜美さん

sさんの読んで続きかしらとか思いながら やっぱり立て板に水 良く浮かびますね 悋気の言葉はあまり親からは聞かなかったけれど 臨機応変 これはよく聞きました親もいい加減な人で
自分で適当にしろ そんな教育でした

2015/01/09 11:31:40

珍しく

吾喰楽さん

おはようございます。

珍しく長い小噺になりましたね。
でも、歯切れが良いので、一気に読み進めました。
笑わせて頂きましたよ。

もう少し膨らませると、落語の原作になりますね。

「もうだけ余計だ」
「へえ、あっしは丑ですから」

2015/01/09 10:12:55

くすくす

さん

さすが、小粋に決めましたね。
「技あり、一本!」(笑)

2015/01/09 10:06:28

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