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パトラッシュが駆ける!

音痴のくせに 

2015年01月17日 ナビトモブログ記事
テーマ:テーマ無し

私には、音楽の才能がない。
歌うのがへた、楽器演奏もだめ、そもそも楽譜を読めない。
これを世間では、音痴と言う。
その私が、交響曲を聴いている。

第一楽章の途中からであった。
ベートーベンの曲に似ている。
でも、違うな。
多分違う。
音痴でも、そのくらいの想像は出来る。
しかし、誰の、何と言う曲かなんてことは、もちろんわからない。

テレビを付けていると、ろくでもない番組が多い。
消してしまう。
そうすると、妻がやって来て、ひょいとまた付ける。
彼女は、テレビが好きだ。
そして、静寂が嫌いだ。
リビングのテレビから、何か音が出ていないと、不安なのであろう。

それならいっそ・・・
私がチャンネルを奪ってしまおう。
私が熱心に見ている限り、リモコンを寄越せとは言わない。
彼女にとって、テレビとは、とにかく画面が光り、
音が出ていれば、それで良いのであろう。

ろくな番組がない時は、NHKのEテレをつけておく。
そうして、見ているふりをする。
EテレのEは、Educationの頭文字であるらしく、教養番組が多い。
クラシック音楽も、教養の一つかもしれない。
しかし、それを聞いていても、妻が私を、尊敬することはない。
あら物好きね・・・くらいの顔をする。

それもそうだ。
彼女は、私が音楽に、興味がないことを知っている。
暮の、紅白歌合戦だって、見なかった。
一年の最後の晩酌を終えるや、さっさと寝てしまった。
時に十時半であり、小学生の孫より、早寝であった。

第二楽章の中ほどで、妻が先に、寝室へ去った。
しめしめ、作戦成功だ。
もうテレビを消してもいい。
下らないバラエティ番組に、耳目を煩わされる恐れもなくなった。
少し、本でも読んで、寝ようかと思った。

しかし、テレビから流れる、交響曲の響きが、やけに快い。
指揮者は、白髪の外国人であって、かなりの年寄りだ。
そして、コンサートマスターも、また年配だ。
額の髪が、かなり後退しているくせに、総量は豊かであり、
その黒髪を、ポマードで固め、オールバックに垂らしている。

そう言えば、音楽家に丸禿げは、見かけない。
そして、誰もかれもが、利口そうに見える。
私は、音楽がからきしなものだから、あんな難しいことを、
苦もなくやる者は、皆、よほどの賢人なのだと思ってしまう。

そのコンサートマスターが、バイオリンのソロを弾いた。
これがもう、滅法上手い。
格闘技でもやっていそうな、大きなその顔に似ず、実に繊細な音を出す。

オーケストラの各パートを、カメラは追って行く。
その楽器が、ソロに入った時は、すかさず大写しになる。
オーボエを吹く女性が、美しい。
女性の美しさに、いろいろある中で、彼女のそれは、知性の匂いだ。
思慮が深く、少々のことには、へこたれないであろう、
芯の強さを見せてもいる。

もっとも、それを言えば、オーケストラの全員がそうだ。
N饗という、この国でも屈指の楽団に加わるからには、
才能もさることながら、並々ならぬ努力が、
延いては意志の力が、必要であっただろう。

オーボエのリードを口に含む。
その頬が膨らむ。
実にもう、愛らしい。
私は、音楽をうわの空に、楽団員の人相ばかり、眺めている。

交響曲の華は、第四楽章だ。
詩歌で言えば、結句だ。
ここに作者の思いが、凝縮される。
何だか知らないが、心が弾んで来る。
明日への希望が、湧いて来るような、そんな気になる。

指揮棒が、ゆるやかに空(くう)を舞い、小山の頂点に来て止まり、かすかに鳴っていた、音が途絶えた。
客席から拍手が起きる。
湧き起り、巻き上がる。
指揮者が振り返り、その音の波を、胸で受ける。
楽団員が、全て立ち上がる。
この時の表情がいい。
私には経験がないけれど、その心中は、容易に想像できる。
「やったぜ」
皆さんがもう、実に幸せそうだ。

一旦去った指揮者が、拍手に促され、また舞台中央に戻り来る。
一つの儀式みたいなものだが、もしかすると、
サービスに小曲を演奏してくれたりする。
だから、ここでテレビを消すのは、愚かというものだ。

四度も登場したけれど、何事も起きなかった。
指揮者とコンマスが抱き合い、そして手を携えるようにして、舞台を去って行く。
この光景はいい。
演奏の残影のようなものだ。
私の場合、耳がなってないものだから、目を駆使して音楽に向かっている。

テロップが流れ、指揮者の名がわかった。
ネビル・マリナーさん、何と九十歳なのだそうだ。
そして曲名もわかった。
ブラームスの交響曲一番であった。

私の耳も、まんざらではない。
ブラームスこそ、ベートーベンの後継者と目された人ではないか。
その響きが似ていて、何の不思議もない。
私は、少しは自信を持っても、よいのかもしれない。

そしてテレビもまんざら、捨てたものではない。
視聴者をして、飽きさせない。
スイッチを切らしめない。
これはEテレ、侮るべからずを示してもいる。

但し、この偶然を機に、私が毎週、クラシック音楽に親しむかと言えば、それは別だ。
その時の都合で、それも妻の動向次第で、どうなるかわからない。
私は、その程度のクラシックファンだ。
音痴の世評を覆すところまでは、とても行かない。



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聞くのは好きです

パトラッシュさん

秋桜さん、
オルガンを弾けるだけ、立派ですよ。
それは、音痴とは言いません。

クラシックにも、お詳しいようで・・・
そういえば、洋楽がお似合いですね。

私はただ、聞くだけ。
何とかの横好きです。

2015/01/20 20:02:43

似たようなものです。

秋桜さん

わたしも音楽の才はありません。
弾けるのは昔わがやにあった古いオルガンだけ^^

でもクラシックは詳しいことはわからないまでも
CDなどずっと聴いています。
特にショパンのピアノ曲など大好きです。

今年は聴けませんでしたがウインフィルによる1月1日の
シルベスタコンサートは、毎年楽しみにしているのです。

歌舞伎に造詣が深いパトさんから、クラシックの
お話を聞けてうれしいです。

2015/01/20 14:58:03

えええ・・・

パトラッシュさん

彩々さん、
二曲ですかぁ・・・
何でもござれの、芸達者だと思っていました。

その二曲が気になりますね。
一度試しに、カラオケに繰り込んでみる必要があるかも・・・
皆さん多分に、「爪を隠し」ている可能性もあります。

2015/01/18 16:36:11

目に浮かびます

彩々さん

こんにちは

音痴、クラシックの話しより、ご夫婦の
関係性が可笑しく、クスッと笑わせて
いただきました。

注ぎ上手なパトさんです。
あの微妙なお酒の注ぎ方を知っている
彩々ですが…
私は決して唄など上手くなく、実は人前で
歌うことが嫌いで、嫌いで…
元来、音痴なんです!

出会い、なんですよ。
えっ、って!?
好きな歌詞と、それを聞かせるように
好きな歌手が歌っている唄だけ2曲ほど
何とか歌えるだけ。

あれだけ注ぎ上手で、私たちがお酒に口を突ける
音を聞き分けるパトさんです。
カラオケの出だしの音くらい、すぐ掴み
唄いきることができるはず。克服できます。

今度、一升瓶に代えてマイクを差し出しましょう!

2015/01/18 14:39:40

おや

パトラッシュさん

吾喰楽さんは、
音楽を選択したのですか・・・
私は、高校に入り、心から安堵しました。
音楽が、選択課目になり、やらなくても良いと分かったからです。
もう、唄わなくて済む。音階を当てなくても済むと。
美術も得意ではなかったですが、なに、絵を描くくらいは、音を聞き分けるより、よほど楽なことでした。

得手不得手とは、かくも分かれるものですね。

2015/01/17 20:44:03

音楽

吾喰楽さん

私は高校で、音楽を選択しました。
好きな美術を選択すると、定期的に作品を提出しなければいけないからです。

意外と音楽の成績は良かったですよ。
歌うのは駄目ですが、音楽理論は良かったです。

人前で歌を歌える人が羨ましい!

2015/01/17 19:28:37

「5」と「3」の違い

パトラッシュさん

SOYOKAZEさん、
そうでしたか。
歌謡曲が苦手というのは、好みでないということですね。
無理にでも、練習させれば、やはり「5」になるかもしれません。
そこへ行くと私は、ジャンルの如何を問わずに、唄うのはだめです。
聞くのだけは、好きなのですがね・・・

但し、これが不思議なことに、音楽の成績は常に「3」でした。

2015/01/17 18:29:32

念の為に

さん

あの〜私は歌謡曲は苦手ですが音楽はいつも5でした。
当然歌唱もあって、学校選抜の合唱隊にも入っておりましたが、お経のようなアルト専門。(笑)
但し、ミュージカルナンバーは歌えます。
師匠のお好きな宝塚の劇中歌は一回行けば覚えて、家で成りきって歌っておりました。(笑)

苦手な物はマット運動と跳び箱です。
前者は左手が弱いため、三回前転すると、マットから落ち、跳び箱では足の開きが悪かったので太腿の内側擦って、リンパ液でべたべた。
これが内また膏薬かと、妙な感心していました。
そうそう、鉄棒も苦手で、「干し烏賊」と、先生に言われたのは今でも忘れられません。
最近、逆上がりのコツを会得した気がして試す機会を窺っております。 以上

2015/01/17 17:05:14

これは意外

パトラッシュさん

SOYOKAZEさん、
ダンスの経験から、さぞ音楽も・・・と思っていました。
人間不得意の分野もあっていい。
これを、自分に言い聞かせております。
才女SOYOKAZEさんにも、それがある。
安心しました。(笑)

彩々さんが、上手なのは、想像に難くありません。
機器を備えているくらいですから。

2015/01/17 15:52:36

活字人間

パトラッシュさん

シシーマニアさん、
ライブがいいですね。と言うより、ライブに限ります。
演者、奏者と同じ空気を吸い、同じ時間を共有している、その幸福感は、電波を通してでは、味わえませんから。

私は、歌舞伎、落語は原則として、映像では見ません。(故人を偲ぶ場合は別にして)
音楽の場合、仕方なくテレビで見、CDで聞きます。
全てライブでなると、お金が続かないこともあります。

私は、自分に出来ないことを、あっさりとやってのける人を、尊敬せずに居られません。
楽器の演奏者や、絵描きさんが、その最たるものです。
そして「テレビがない家」、これにも敬服します。
世俗に煩わされないで、生きて行けたら、どんなにいいか・・・と思うからです。

結局、活字人間なのでしょう。
小説が映画化されても、それを見ることは、ほとんどありません。
例えば、司馬遼太郎の作品。
あれを越える映画は、あり得ないと思うからです。

2015/01/17 15:43:17

今は時代物なので

さん

昔は西洋かぶれでしたから、読む本も翻訳物が多く、自作の脚本も、西洋風のモダンなもの。
楽譜は読めても書けなかったのですが、生意気にも簡単に作曲し、テープに吹き込んで、役者に教え、部分的ミュージカルなぞも演じました。

でも、今、書いているのは時代小説。
筝曲名曲集も和太鼓もイマイチイメージに合いません。
音なしで、真剣に書いています。(笑)

カラオケは苦手です。
ミュージカルの曲とか、椰子の実独唱とか、至って真面目系なので、歌謡曲は上手く歌えません。
彩々さんは旨いですよ〜♪

2015/01/17 12:35:07

テレビでの、オーケストラは、

シシーマニアさん

考えてみると、もう何十年も見た憶えがありません。というのも、我が家にテレビは無いからです。

でも、時々YOUTUBEで演奏会の映像は見ます。演奏中の表情は、集中している時間なだけにその人の本質が出てきて、見るのは面白いですね。

オーケストラは、全員がいつも演奏している訳ではなので、待っている間の表情も面白いです。

次の出番まで、弾いてはいなくても参加している、という表情とか・・。

お芝居の舞台を見るのにも似ています。私は、歌舞伎を見ていても、台詞の無い役者の表情を見るのが好きで、その点テレビ録画は、当然ですけれど光の当たっている人をクローズアップするので、ちょっと物足りない気がします。

ライブはやはり、楽しいですね。

2015/01/17 12:15:45

もったいない

パトラッシュさん

喜美さん、
それは、もったいないことをしましたね。
針で音を拾い上げる、昔のレコード、懐かしいです。

清雅亭の夏、窓も戸も明け放ち、音量を上げ、クラシックを響かせたら、爽快でしょうね。
私のように、陋巷に住む身としては、大変にうらやましい環境です。

2015/01/17 11:58:21

音痴とは

パトラッシュさん

SOYOKAZEさん、
厳密に定義すると、SOYOKAZEさんのおっしゃる通りです。
私の場合は、音程も外れ、リズムも外れ、歌詞も時に忘れるという、包括的欠陥でありまして、
もう救いようのない、音痴になっております。

音楽と文学、一見別物のようですが、
実は相互に、影響し合うところは、あるのでしょうね。
BGMに、クラシックを流しながら創作する。
それもいいかもしれません。

ものは試し、一度みんなで、カラオケに行ってみましょうか・・・
誰が音痴か、そうでないか、確かめるのも、いいかもしれません。(笑)

2015/01/17 11:52:47

まいらないで下さい

パトラッシュさん

Reiさん、
クラシックがお好きでしたか。
パッチワークにも、好影響があるかもしれませんね。

そういえば、まだReiさん作の、実物作品を見ていないのでありました。
小品をご持参下さるという訳には、行かないのでしょうかね・・・

2015/01/17 11:35:18

Eテレは

パトラッシュさん

吾喰楽さん、
民放テレビに、あまりに下らない番組が多いので、
そこからの避難所みたいにみたいになっています。
そういう意味で、たしかに、いーテレビです。

衛星放送にも、同じことが言えますね。
避難して、その意外な価値に驚き、そのまま見続けてしまった番組が、少なくないです。

2015/01/17 11:29:09

音楽

喜美さん

昔から大好きでした
大判のレコード指揮者が違うと
買ったり部屋で午後聞いていました
其の頃レコードも高かったと思います
大切にして 結婚するとき持ってきました(大切ですから)
主人は電気の学校中退(途中でパラオに行かされました)そんなわけで 良いラジオで時々聞きましたけれど
レコードが多くて違い棚が落ちるとか
母が話しているのを耳にして
若かったのね 母のいないときに
全部壊して捨てました 涙が出ました
コーラスは家では独唱しませんから
長く続きました今でも好きですけれど
曲はは解っても作曲者も題名も浮かばなくなってしまいました

2015/01/17 10:02:31

音痴

さん

パトラッシュ師匠 おはようございます。

>歌うのがへた、楽器演奏もだめ、そもそも楽譜を読めない。
これを世間では、音痴と言う。

そうなのですか?
この条件では、大半が音痴になってしまうと思うのですが。
私は、音痴とは、音程が明らかに外れているのに気付かない方の事だと思っていました。

昔は誰の何という曲か、すぐ出たのですが、最近はハミングで歌えても、曲名も作曲者も出て来ない事が多くなりました。

けれど、交響曲は大好きです。
音楽の時間など、観賞の時は血が騒ぎました。
ドラマティックな主旋律が一転し緩やかな流れになったり、不安を起こさせる音階に転調して、最後は色んな楽章の旋律が組み合わさって壮大なメロディーになって・・・

その流れを追っていると、新しい物語が頭の中に生まれて来ました。
詳しい知識はありませんが、心揺さぶられる芸術です。
知識なんぞ無くても、素晴らしい演奏を聞いて心から感動できる、それは音痴ではないと思うのです。

そして、私も聞けば感動するけれど、自ら番組を探すほど熱心でもありません。
今の関心は文学の方に向いているので。

2015/01/17 09:29:17

クラシック大好き!

Reiさん

私は音楽大好きです。
パッチワークをするときはいつもクラシックを聴いています(中でもショパンが一番です)
好きな音楽を聴きながら、針を動かすのは至福のひとときです♪

師匠もこれをきっかけに、クラシックに親しんでください。
何百年も愛される音楽なんて、そうないと思います。

それにしてもクラシックを聴いているときの師匠の見事な描写に、またしても参ってしまいました…

2015/01/17 09:13:36

私も

吾喰楽さん

おはようございます。

>私には、音楽の才能がない。
> 歌うのがへた、楽器演奏もだめ、そもそも楽譜を読めない。
>これを世間では、音痴と言う。

私も同様です。
さらに、交響曲も聴きません。
唯一の例外は、日曜日の朝、クラッシックのテレビ番組を、時々、観ることくらいです。
昔から類似の番組があり、用がないときは、観ています。

ところで、Eテレは、いいテレビですよ〜
私は愛聴者です。

2015/01/17 07:51:33

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