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私家版・日豪の比較文化人類学 〜群れから抜け出した羊が見たもの〜

7−4 高齢化と「白髪の遊牧民」(その2) 

2010年11月27日 外部ブログ記事
テーマ:テーマ無し

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この項は(その1)からの続きです。<br />
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<b>親の面倒は誰が看るのか</b><br />
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 先程の家を変わるきっかけを見ていると、「それでは、子供は大人になった後両親と同じ家に住んで、親の面倒は看ないのか?」という疑問が出てくるに違いありません。シドニー・オリンピックの後、物価が急上昇して不動産も買いづらくなり、親と同居する成人が増える傾向にあると言われていますが、多世代の家族が同居して年老いた親の面倒を看ることは稀で、無いといっても良いほどです。多くの場合、配偶者が面倒を看るか娘が近くに住んでいればその援助が期待できる程度です。このため、独居老人の割合が非常に高く、65歳から79歳までの人口の30佑、80歳以上では50佑一人暮らしだといいます。<br />
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 もちろん、在宅の高齢者に対する行政の対策は幅広く、手厚く行われていて、高齢者の15佑給食、ホームヘルプ、訪問看護、家屋の修理などのサービスを受けています。ただ、全ての面でお年寄りの自立性が重要視され、求められ、そのプログラムも豊富に用意されているのです。<br />
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 こう見てみると、日本のように長男が両親の面倒を看て、順に家を継いで行く習慣は親にとっては安心できる良い方法かも知れません。国や自治体の財政的負担も軽くなるでしょう。しかし日本で身の回りに日常的にあった事例を見て来ますと、子供や特に嫁にとってはあまりにも負担が大きく辛いことが多いように思います。私が日本の友人にこちらに遊びに来るように誘っても、多くは親の面倒を看なくてはならないのでゆっくり旅行も出来ないと言います。<br />
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 誰も好き好んで年老いて行く訳ではありません。面倒を看る方も看られる方も両方が辛い思いをするのは悲惨です。行政が可能な限りの対策を講じるのは当然ですが、私たちも習慣や高齢化に対する社会のあり方にまで踏み込んで考えて行かないといけないと思うのです。<br />
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<b>「白髪の遊牧民」を夢見て</b><br />
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 私たちが会う高齢者は皆元気なので、逆に言うと元気ではない高齢者に合う機会はあまり無いので知らないだけかも知れませんが、誰もがはつらつとして好奇心旺盛で若々しく見えます。特に自立性を求められなくても、自ら健康を保ち、80歳前後の高齢になっても日本語を勉強したり、ボランティア活動に参加したりしている人を大勢知っています。<br />
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 U3A(University of The Third Age)と呼ばれる言わば老年大学のような組織も活発な活動をして、歴史や語学、自然科学、音楽、スポーツ、料理など様々な講座を開いて高齢者のニーズに応えています。我が日本語教室の生徒、アリスターさんはかつての大学教授の経験を生かしてU3Aの哲学の講座で教えています。彼はもちろん博士号を持ち、深い学識を持った人ですが、いつも謙虚で私たちと日本語を勉強する時は一人の生徒になり切っていて、その人柄を尊敬しています。<br />
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 そのアリスターさんに教えていただいた言葉に「SKINNIES(スキニーズ)」というのがあります。Spending Kids’ Inheritance Now(子供達への相続財産を今使ってしまう)の頭文字に人を表す接尾語を付けた造語で、そのようにしたり願ったりしている人たちのことを言い、そのような人が最近増えているそうです。確かに、どの国でも自分で苦労して築き上げた資産を子供に残して死んでいくより、全部とまでは言わなくても好きなだけ使ってしまいたいと考える人は多いと思います。私も個人的には同じ考えで、その分残された人生を有意義に楽しみたいと願うのです。<br />
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 日本でも、電通が中高年を対象に実施している調査によりますと、自分の生きがいや趣味を大切にする新しいタイプのシニアが増えて来ています。50歳台の人に生きがいについて尋ねたところ、趣味を楽しみその道を極めたいと思う人は1992年に11佑世辰燭里、2005年には39佑函■廓椣幣紊眩?辰靴泙靴拭5佞法∋匐,領派な成長を願う人は53佑ら34佑妨詐しています。<br />
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 自分の資産を、子供たちに残さなくても、自分で使うことが出来るだけの経済基盤が整って来たこともその原因でしょうが、自分自身の生き方をグレードの高いものにし、人生を楽しみたいと願う意識を持つ人が増えて来たことが最大の要因でしょう。高齢者への年金、医療、介護、税制などの幅広い課題が改善されて環境が整えば、日本版スキニーズ増加の傾向は更に加速されるでしょう。<br />
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 オーストラリアで、そのスキニーズでなくとも、多くの人が憧れている生き方の一つが「Gray Nomad(グレイ・ノウマド=白髪の遊牧民)」です。リタイアして髪がグレーになった時、家を持たず遊牧民のように自由に放浪の旅に出るのが夢で、実際に多くの人がこれを実行しています。そして、多くのグレイ・ノウマドはただ自由に放浪するのではなく、貧しい人や原住民のアボリジニたちのためにボランティア活動を続けていると言います。車で牽引するキャラバンと呼ぶ移動住宅とキャラバン・パークがホリデー用に普及しているこの国ではグレイ・ノウマドになることはさして難しいことではありません。<br />
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<div class="alignCenter"><img src="http://img2.blogs.yahoo.co.jp/ybi/1/9a/60/shigemi_akamatsu/folder/852295/img_852295_33621071_0?1290950517" alt="イメージ 1" class="popup_img_560_420"></div> <br />
 「SKINNIES」と「Gray Nomad」の二つの言葉の裏に見え隠れする大切な意味は、「最後まで自分自身の力で自由に生きて行きたい」、また「自分自身の生涯は自分自身で始末をつけたい」と願うことではないでしょうか。この考えの根底には、子供が年老いた親の面倒を看る、親は子供が面倒を看てくれることを期待するという日本では当然の構図はほとんどありません。親子と言えども、各々は自身の力と責任において自身の生涯を築いて行かなければならないという基本的な考えが暗黙の了解としてあるのだと思います。これはまさしく「草食動物と肉食動物」の項で考えた自己完結型の人の究極的な生き方、人生観でしょう。<br />
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 こうした人生の考え方、生涯の送り方は、私たち日本人にとって、意識と環境が変わって来たとは言え、実際にはまだとても厳しく、寂しく辛いことのように感じるかも知れません。しかし、私たちにとても大切なことを教えてくれていると思います。<br />
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 高齢化が抱える膨大な問題はその国によって様々な事情がありますが、心や人生観からアプローチすることも大切で、高齢者自身と社会の意識の変革によって、そのかなりの部分が解決するのではないでしょうか。<br />
 高齢者が自立して夢を求めながら、はつらつと暮らして行くために。<br />
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〜校了〜<br />
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