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パトラッシュが駆ける!

電車が怖い 

2015年07月24日 ナビトモブログ記事
テーマ:テーマ無し

私は、階段が好きだ。
先の見通せないほどの、長い階段を前にすると、
俄然ファイトが湧く。
例えば、市ヶ谷駅で地下鉄を降り、JR線に乗り換える時がそうだ。
その段数から察するに、ビルの一階から、四階へ上がる感がある。

これを私は、二段ずつ上る。
一段ずつ、律義に踏むのは、まどろっこしくていけない。
かえって疲れる。
途中で休むことなく、一気に上る。
そうすると、並行するエスカレーターの客より、
早くてっぺんに着く。

これ、自己満足である。
誰が褒めてくれるわけでもない。
でも、群衆の中に一人くらいは、その心の中で、
感嘆してくれるのではないか。
あのおじさん、すごいわねえと。
これを、自己顕示欲と言うことも出来る。
さらには、自分を再確認する意味もある。
この階段を上れるうちは、おれも当分、
くたばらないのではあるまいかと。

階段上りにおいて、何が残念と言って、
進路がふさがっているくらいのことはない。
エスカレーターがあるのに、階段を上がる。
それは、健康志向の強い時代でもあり、
必ずしも珍しいことではない。
そして、そこを上るのは、志を同じくする者であり、
シンパシーを抱かないでもない。

しかし、そのスピードが遅い。
これが困る。
そして階段の幅が狭い。
前記の市ヶ谷駅がそうだ。
人一人すれ違いが出来るほどの幅しかない。
それもそうだ。
階段は今や、万一の事態に備えた、補助通路でしかない。
そして普段は、健康マシーンの役割を果たしている。

その狭い階段を、前の客が、ゆっくりと上って行く。
その姿は、一心不乱の修行者のようでもあり、当然ながら、
後方への気配りなどない。
どちらかに寄ってくれればよいのだが、
一向にその気配がないところ、さながら、
一車線しかない山道で、低速運転を続ける先行車のようなものだ。
追い越しかねている、後続ドライバーの、焦燥感たるやない。

そのままとうとう、階段は尽きてしまった。
徒労感だけが、にわかに募ることになる。

 * * *

市ヶ谷駅から、総武線の電車に乗る。
空席があれば座る。
階段上りは苦にならないくせに、電車で立っているのは億劫だ。
この矛盾は、多分、時間のせいだと思われる。
階段は、たかだか十数秒。
電車は三十分。
その時間の差が、私の好悪に影響を与える。
短期決戦が好き、長期戦は嫌い。
という私の、性格上の欠陥を、象徴している面もある。

空席がない時は、ドア近くに立つ。
そこも塞がっている場合、止むなく吊革につかまる。
この時に、胸を張る。
顎を上げ、視線を上に持って行く。
油断をしていると、下から声がかかるからだ。
「どうぞ」
腰を浮かし、笑みを浮かべながら、私に着席を促す者が居る。
彼は壮年である。
私よりは、確かに若い。
しかし、私の気分としては、そう幾つも違うわけではない。

声をかけられて、これを断るのは、非常に難しい。
周辺客の多くが、この様子を見ている。
眠っているように見えて、隣の若者だって、見ているはずだ。
その中で、腰を浮かせた彼を、再び座らしめる。
それは彼に、恥をかかせる意味もある。
仕方ない。
私は、口で礼を言いつつ、こころで舌打ちしながら、
彼の作ってくれた空席に、腰を下ろす。

座ればそりゃ、楽でいい。
本も読める。
しかし、悔しいではないか。
この私が、弱者と見られている。
先ほどは、八十余段の階段を、一気に駆け上った男がである。

では、この事態を避けるために、どうしたらよいか・・・
悄然としているから、いけない。
肩を落とすのがいけない。
空席を探し、右顧左眄するのもいけない。
泰然としていなければいけない。

私は視線を上に持って行く。
そこには、車内広告が並んでいる。
これを片っ端から眺め渡す。
こうしている限り、声をかけられることはない。
但し、余裕を見せようとするあまり、笑みを浮かべてもいけない。
そこには、女性の水着姿の広告もあるからだ。

 * * *

空席があれば座る。
少々遠くても、そこを目がけて歩いて行く。
一目散に、ということはない。
せめてもそれが、矜持というものだ。
ゆっくりと、何食わぬ顔をし、歩いて行く。
そして、席に着きながら、私も結局、歳なんだと思う。

次の駅で、妊婦が乗って来た。
すわ・・・
腰を浮かしかける。
いや待てよ・・・
単に腹部が、豊饒であるだけかもしれない。
私は、きわめて見識の狭い男であって、その辺の判断がつかない。
間違えて声をかけたら、失礼千万であろう。
迷っている内に、隣の女性が、さっさと立ってしまった。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
どうやら、本物だったようだ。

足元のおぼつかない男が乗って来た。
私より、大分若い。
さてどうするか・・・
彼の面子を、潰さないだろうか・・・
迷っているうちに、また別の乗客が立ってしまった。

私は最近とみに、込んだ電車が、苦手になっている。
席を譲られるのが嫌だ。
譲るのもまた、実に難しい。



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無理することはありません

パトラッシュさん

秋桜さん、
無理をしてはいけません。
階段は、実は危険がいっぱいなのです。
私の知人の関係者で、転倒し、落下し、死んだ者が二人います。
本当は、慎重に歩を運ばねばなりません。
私は、なまじ自信があるもので、駆け上がったりしていますが・・・
但し、言い訳をすれば、上るよりも、下りが危ない。
前記の事故も、下りで起きています。

秋桜さん、この際は、エスカレーターをご利用下さい。
体力が回復すれば、階段上りも自由自在ですから。

2015/07/26 19:29:35

階段が怖いです。

秋桜さん

仕事の現役時は、地下鉄の階段など
なんのその。
オフイスのビルのエレベータなどほとんど
使いませんでした。

ところが・・・
病気をしてから一変してしまいました。
階段がとても怖いのです。
医師には、ぜったい転ばないようにと
釘をさされていて、歩くことも慎重です。

2015/07/26 17:08:54

地下都市東京

パトラッシュさん

藤の花さん、
東京という町は、拡大にも限度があり、その分を地下に求めているのです。
その結果、地下の深いところに電車を走らせ、駅に着くと、地上に出るまで、大変な苦労をさせられます。
何事もなければよいのですが、地震の時など、どうなるのでしょうね・・・
考え出すと、怖いです。
地下鉄には、乗りたくなくなります。

2015/07/24 15:58:22

自然が一番

パトラッシュさん

喜美さん、
実に自然体ですね。
この世の流れに逆らわない。
喜美さんのように生きて行ければ、それは一つの理想の境地です。

私は、人間が出来ていないので、必要もないところで、頑張ってしまうのです。
その結果、何度後悔したことか・・・

今度お伺いした時は、すみませんが喜美さんの爪の中のものを、煎じて飲ませて下さい。

2015/07/24 15:53:45

山道は

パトラッシュさん

maruさん、
山の階段は、私も苦手です。
都会の階段は、有限ですが、山のそれはどこまで続くかわからないからです。
都会の調子で、一段飛ばしをやっていると、たちまちペースを狂わされ、ばてます。
そこで一段ずつにするのですが、そうすると今度は、歩幅が合わず、これまた調子が狂うのです。

まったくもって、山道は、自然のままがいいですね。

2015/07/24 15:49:04

のんびり電車に乗りたいです

パトラッシュさん

風香さん、
小学生には負けます。
彼らは、駆け上がりますから・・・

都会の電車は、嫌いです。
人間が過剰だと、いろいろな弊害が出ますから。
ボックスに一人の旅は、贅沢でいいです。
やりたいのですが、なかなかその機会がありません。

2015/07/24 15:43:53

寝たふり

パトラッシュさん

SOYOKAZEさん、
さすがの「脚」ですね。
今度、何処かで競争しましょう。
長ーいお寺の石段を探しておいて下さい。(笑)

私には、人を見る目がありません。
女性はことにだめです。
瞬時に見分けるなんてこと、とても出来ません。
結局電車内では、寝たふりをすることになります。

2015/07/24 15:39:01

長いエスカレータ

藤の花さん

東京駅から総武線に乗り換え市川へ行くのに乗る長いエスカレータにはビックリした経験あります。

2015/07/24 15:04:41

老人

喜美さん

階段二段ずつ 凄いですね
私は昔から怠け坊主で 文明の利器は
使うべきと車もエレベーター エスカレターと楽な事ばかりしてきました
電車は病気する前は若ぶって入口に立ちました 譲られたくなくて お断りできないでしょう 今はジロリと見廻します
若い人が年寄りの席で眠っていても
この人疲れているのだろうなあ 同じお金出して立つことはないよと心で納得して見ぬふりしています 譲られたら何てこの人は良い人だろうと
にっこりお礼言って待って居ましたとばかり座ります随分勝手な年寄りでしょう

2015/07/24 14:33:13

山道での階段

さん

初のコメントです。

町中の階段は同じく一段飛ばしで上りますが、山での階段は歩調が狂い苦手です。
登山道の勾配は緩くても強くても歩調で調整できますが、山の階段では自分のペースと違いが出ていっぺんにバテてしまいます。

山に人工物はいらないと思いますが・・。

2015/07/24 14:05:07

都会ゆえの悩み

さん

ホームの長い階段、エスカレーター、エレベーターも大都会ならでは。
席の譲り合いも。。
田舎ではローカル線もワンボックスがひとりもあります^^

それにしても師匠、お見事なフットワーク、感動ものです。
囲碁の教え子の子供たちと張り合えますね^^

2015/07/24 12:32:58

録画を観ているように

さん

パトラッシュ師匠 こんにちは。

駅の階段を二段ずつ上がる師匠のお姿、前がつかえ、いらいらしながら、サッカーのディフェンダーかわしも叶わず、憮然とした表情の師匠。目に浮かびます。

かく言う私もお仲間です。
一段ずつではありますが、ダンスで鍛えた脚力で、スタスタ颯爽と上って行きます。
ビルも、四階までなら、エレベーターを待たずに階段を上ります。

電車の中での振る舞いも、大体同じです。
違うのは、まだ譲ってくれる人はなく、妊婦さんと太ったご婦人は、瞬時に見分けます。
しかし、年上男性に譲るのは、最近躊躇いがあります。
その方のプライドを慮るからです。

2015/07/24 10:40:28

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