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北軽井沢 虹の街 爽やかな風

小説その21 

2016年04月22日 外部ブログ記事
テーマ:テーマ無し


ここまでは何もかも順調で、問題は時折たわいのない夫婦喧嘩をするくらいだった。夫婦というのは不思議な関係で、もともと赤の他人だった男女が結ばれ結婚生活を営むが、子供ができると大方の夫婦は子育てに励み、喧嘩の種は子育てに関することが原因となることが多い。しかし、年月が経ち子供たちが独立していくと喧嘩の種がなくなるどころか、何ともたわいのないことで喧嘩になることが多くなる。爽太と千恵子もその例にもれず、しばしば喧嘩を繰り返していた。ある時は、二人仲良く散歩をしていたとき、爽太が歩くのが早いと言って不機嫌になる千恵子は、もう一緒に歩かないと駄々をこねる。爽太はずいぶん前から「女」という存在がとても不思議だと感じていたが、このころから何とかこれを乗り越える方法はないものかと考えていた。喧嘩というのは、意見が食い違うところから発生するのだが、よく考えると大した相違ではないことが多い。どちらかが折れれば喧嘩にはならないということに気付いていてもそれができないのだった。爽太には一つの名案があったが、いざとなるとなかなかそれが実行できなかった。その名案とは何か。つまるところ男と女は、まったく違う人種だと考えること。だから何を言われても反論しない。ということなのだが、やはり反論してしまう。しかし喧嘩は長くても3日もあればいつのまにか正常にもどっている。
夫婦喧嘩は犬も喰わないとはよく言ったものだ。
 
爽太は冬に備えて薪割りをはじめた。チェーンソーと斧を買い薪を作るのだが、チェーンソーも斧も爽太は使ったことがない。チェーンソーは電気式の物で、やってみると意外に簡単だったが、斧を振り上げて薪を割る作業は難航した。振り上げた斧を薪めがけて振り下ろすが、これがなかなか命中しないのだ。汗を掻きながら奮闘した爽太の手のひらは豆だらけとなり、これはダメだ、こんなことはもうできないと弱気になったこともあった。しかし、何度も何度も繰り返し、毎日やっているうちに手の豆も硬くなり、徐々に斧が薪に命中する確率が高くなった。そして見事に命中し、カンという音とともにスパッと割れた薪が左右に飛んだ時の快感は、子供の頃やっと自転車に乗れた時の嬉しさに興奮したことを思い出すのだった。この家を選んだ千恵子の最大のポイントだった暖炉が、爽太の薪割りができないという理由で使用できないということだけは避けねばならなかった。それだけにこの薪割りにかける爽太の執念は、手の豆や腰痛などに打ち勝たねばならなかったのであるが、何事もやればできると、必死で挑んだ爽太に勝利の女神はついにほほ笑んでくれた。以来、爽太は薪割り名人を自負するまでになっていった。しかし、試練は待ち受けていた。いざ暖炉を焚くことになったが、なかなか火がつかない。拾って集めた小枝を丸めた新聞紙の上に載せて火をつける、そして薪割りで作った薪をくべるが、ジュウジュウと音が出て薪の端から水分が出るばかり。煙突の蓋を開けるのを忘れて煙が部屋中に充満するやら、散々な目に合うことになった。近所で倒した木をもらって薪にしたが、薪は最低でも2年は乾燥させないと燃えないということを知らなかった爽太には、その時なぜこんなに燃えないのか頭をひねるばかりだったのだ。イライラする千恵子の目が痛いほどに突き刺さり、しょげてしまった爽太だったが、いろいろなことを学びながら徐々に火がおこせるようになっていったのだった。そして薪をストックして乾燥させる薪スタンドを作ることもやりとげていった。
テーブルコーディネーターやインテリア空間コーディネーターの仕事をしていた千恵子は、薪スタンドの配置に注文を付ける。一つは裏にあるプロパンガスを隠すように、また一つは玄関から隣地の廃屋化した建物を隠すようにという注文だ。
仕事柄とはいえ、爽太はリタイアするまで決して家庭的とはいえない生活ぶりだった。
ここでは、なんとか千恵子が喜ぶように過ごそうと決めている爽太は、千恵子の笑顔が何よりも嬉しかったのだ。
 
 
 

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