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パトラッシュが駆ける!

残り一店 

2016年05月07日 ナビトモブログ記事
テーマ:テーマ無し

書店が閉店した。
駅に近く、我が街一の、売り場面積を誇っていた。
地域一番店ということになる。

閉店の翌日、私が通りかかったら、既にして、棚という棚に本がなかった。
その書棚も配置を解かれ、さながら、地震に遭った家具屋のように、散乱していた。
残務整理であろう、店員が立ち働いている。
彼らだって、これが開店なら、どんなにか楽しかろう。
廃業となると、哀れに見えて仕方ない。

ただ一つ、書店ならではの救いがある。
商品の始末だ。
返品が可能だったからこそ、店内に本がない。

私の経営していた金物店は、当然のように、返品制度などない。
卸問屋も引き取らない。
多くの物販店が同じだろう。
廃業時には、売れ残り品の始末に困った。

「叩き売ればいい」
皆さんは、簡単におっしゃる。
汎用品はともかく、特殊な商品は、例え半額にしても、買い手はつかない。
そして金物屋の場合、この特殊品が多い。

やむを得ず「ご自由にお持ち下さい」とする。
ただなら消える。
と思いきや、これにも問題がある。
ごっそりと持ち去って行く、その人が、ゴミ屋敷の主だとわかったりする。
私の抱えていた商品は、使われることなく、ゴミとして再蓄積される。
その場所が変わっただけ。
なんていうことになる。

食品関係の店の廃業は、もっと深刻だ。
例えば冷蔵ショーケースなど、店内に施されている、
様々な設備、これを廃棄しなければならない。
当然にお金がかかる。
だから廃業は、いっそ機器の故障を待って……なんてことにもなりかねない。
そうすると機器のやつめ、人の気も知らず、何年経っても快調だったりする。

我が街では、昨年末にも、一軒の書店が、店を閉じている。
その前年には、別の書店が、商売替えをした。
残る新刊書店は、この町にただ一軒となった。
地域二番店が、一番店に格上げした。
と言っても、一店しかないのだから、話にならない。

 * * *

客はそこそこ、入っていたように見えた。
それでも、店を閉じた。
内実は、赤字であったのであろうか。
家賃のことがある。
店員の給与のことがある。
妻と二人、自家店舗で営業した、私とは違うのだ。
さぞ、苦労があったと思われる。

Amazonの影響が大きいと思われる。
書籍通販の大手であり、その扱う書籍は、膨大であるらしい。
実際に、私のような、無名の著者の本も扱ってくれている。
そして、通販で購入してくれた人が、何人かいる。
私はAmazonに、感謝しなければならない。

しかし一方で、これで良いのかと思ってしまう。
送料が無料なのだそうだ。
配送も早いらしい。
注文した翌日に、手元に届くこともあるらしい。
本屋に出向く手間も要らない。
これでは利用する者が、増えるはずだ。

その分、町の本屋が割を食う。
大が栄えて、小が亡びる。
金物業界も同じであった。
テキは、ホームセンターなどの大型店であった。
品揃えが豊富で、値段も安い。
となれば、客の足は自然とそちらに向く。
実際には、大して安くないのだ。
一部の目玉商品を、破格の値で表示し、全体が安いと言う印象を、客に与える。
一つのイメージ戦略であろう。

恨み言を言っても始まらない。
私達小売店の側にも、それに対抗する知恵がなかった。
あっても実行できなかった。
つまり、やる気をなくしていた。
衰退は、時間の問題であったというよりない。

 * * *

若い頃から、本が好きであった。
もしも、金物屋をやらなかったら……
本屋をやりたかった。

もっともその後、考えが変わっている。
本も金物も、腐らず、流行に左右されず、言ってみれば固い商売だ。
商才を発揮する余地が少ない。
私はその後、やりたい商売を骨董屋に変えた。
これも、ある意味固い商品で、腐ることがない。
目利きが求められるけれど、修練すれば、何とかなるだろう。
本屋よりは、利幅が大きい。
それが最大の理由であった。

我が街に、アンティークの店が増えている。
一方で、書店は減ってしまった。
私の着眼は、間違っていなかったことになる。
但し、考えただけである。
現実の私は、金物店を捨て切れず、店を閉じたのは、
体力気力が尽きた頃であって、転業など単なる夢だったことになる。

 * * *

本屋が好きであった。
その最大の理由は、冷やかしをさせてくれることだった。
本を繰りつつ、好きなだけ居られる。
急な雨の時に、雨宿りにもよかった。
待ち合わせまでの、時間つぶしにもよかった。
本を手にして、その好ましいところを、つまみ読み出来る。
こんなに楽しい店は、他にない。
その本屋が減っている。
町から消えようとしている。

残った一店を、潰してはならない。
私は、Amazonで買い物をしたことがない。
私の本を扱ってくれるのは、嬉しいのだが、これからも買い物はしないだろう。
私は町の本屋を見捨てるわけには行かない。



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お書きになるものから察して

パトラッシュさん

秋桜さん、
多分、本がお好きであろうと思っていました。
本が好きな方は、本屋が好きです。図書館も好きです。
背表紙を見ながら、本を物色して行く。
この楽しみは、何ものにも代えがたいものです。

2016/05/08 11:55:21

本の匂いが好きです。

秋桜さん

小学校のときに新しく配布されるときのあの本の匂い。
本屋さんに行くとあのころの懐かしい本の
匂いが甦ります。

でも今は、淘汰されて本屋さんがが激変して
寂しい限りです。
モールのなかの大型書店もアニメなどが多く
本を探す楽しみが減りました。

2016/05/08 05:41:46

大規模集約が進み……

パトラッシュさん

SOYOKAZEさん、
書店がない、あるいは遠い方にとって、Amazonは強い味方ですね。
今の書店は、スーパーに併設ですか……
世の中、すっかり様変わりですね。

私は、あまり大きな書店は、落ち着かなくていけません。
人間が小さいから……かもしれません。
店主の目が感じられる、そのくらいの店の方が、好きなのです。(笑)

2016/05/07 15:41:20

さびしいですが……

パトラッシュさん

Reiさん、
貴女が本好きであろうことは、とっくに想像しておりましたよ。
本好きなら、本屋好き。当然のことです。
目的もなしにうろうろ……
本屋の魅力は、正にこれです。

その場所が減るのは、本当にさびしいことです。

2016/05/07 15:34:46

そうでした

パトラッシュさん

喜美さん、
昔は定期購読と言って、雑誌なんか、配達してくれました。
人件費が安かったからでしょうね。
Amazonが、送料無料でやって行けるのが、私には不思議でなりません。
娘さんの言われること、もっともです。
大概の情報は、ネットで調べれば、ただで済むことですから。
時代が変わりましたね。

2016/05/07 15:28:40

時勢ですね

パトラッシュさん

シシーマニアさん、
やはり本がお好きだったのですね。
おっしゃる通り、ろくにお金を払わずとも
幸せな時を過ごせる店は、他にありません。
時勢とはいえ、それが減って行くのは、さびしい限りです。
今はネットの時代。
そこから情報を仕入れ、そのまま通販に行くのが、自然の流れなのでしょうね。

それに図書館。
これがあるせいで、私の購買量はうんと減ってしまいました。
書店を哀惜しながら、お恥ずかしい次第です。

2016/05/07 15:24:22

本屋さんもAmazonも

さん

パトラッシュ師匠、こんにちは。

私の住むまちには(街でもないし、町でもないから困ります)大きな書店がスーパーに併設されています。
町の本屋さん(個人経営)は全部廃業しました。
普段は、大型書店で買っていますが、特殊な書籍は置いてありません。
時代小説の参考書などは、すべてAmazonの取り寄せです。
最短、即日配達で送料無料です。
私にはとてもありがたいのです。

2016/05/07 15:18:57

生業なれど

パトラッシュさん

吾喰楽さん、
商店会の委嘱を受けた、経営コンサルトがやって来て、言いました。
「この商店街には、生業が多い」と。
生業つまり、企業に対する言葉で、夫婦二人で細々とやっている店のことです。
私の店もそれでした。
うるせえや……
それのどこが悪い……
猛烈に腹を立てたものです。
企業と違い、生業は、容易につぶれない。
その地にしっかり根を下ろした、雑草のようなものだと思ったものです。

私は訳あって、自ら店を閉じましたが、吾喰楽さんのお兄さんは、頑張っていますね。
心からエールを送るものです。

2016/05/07 15:16:17

本屋さん大好き

Reiさん

こんにちは。
私は、本屋さんが大好きです。
どうしても読みたい本は、ネットで注文しますが、目的もなく本屋さんをうろうろするのが好きなのです。
興味のあるポップを見ると、読みたくなって、その本を買ったりします。
本屋さんがなくなるのは淋しいですね。

2016/05/07 13:45:25

昔は

喜美さん

街の本屋さんも月刊誌は勿論
配達してくれました 今は3軒あった本屋さん1軒もありません 新しく駅ビルの中にに1軒あります
娘達もアマゾンのお得意さんでしょう
直ぐ手に入ると喜んでいます
私は目が疲れて今は読みません

テレビで家事エモン(見ないでしょうね)
お料理を素早く作ったり綺麗なお掃除の仕方などやります(本がバカ受け)娘に買う様に頼みましたら そんなのはpcでしらべればいいでしょうと買ってもくれませんでした

2016/05/07 12:40:48

シニアになると、本は重いもので・・。

シシーマニアさん

私も最近は、通販が大半になってしまいました。
師匠のご本も、自力購入の方はAmazonのお蔭で手に入りました。
私も、もともと本屋が好きでした。
お小遣いの少なかった高校時代、本屋の棚の前で、買うのはどの本にしようか、長い間迷っていたのを懐かしく思い出します。
成人してからも、つい癖で、買う本の選択に迷ってしまったりします。結局は、書棚の前で本を開いて眺めるのが好きなのですけれど・・。

只シニアになると、本は持って帰るのが重くて・・。
つい通販に頼りがちです。
懐かしい作家の事など、ネットで調べていると、代表作がそのままAmazonへと飛び、ほぼ自動的に数冊買うことさえあります。

2016/05/07 10:44:03

Amazon

吾喰楽さん

購入金額に拘らず、送料が無料では、町の本屋さんは堪りませんね。
そして、直ぐに届く。

業種や事情は違いますが、家業を継いだ次兄が遣っていられるのは、家賃不要の上、支払う給与も無いからです。

新書は勿論ですが、古本だとパソコンで目当ての本を探すのは、容易なんですよ。
私は、随分とお世話になりました。

2016/05/07 09:53:52

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