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パトラッシュが駆ける!

多江さんと阿波の旅 

2016年05月28日 ナビトモブログ記事
テーマ:テーマ無し

木村多江という女優さんを、私はほんの少し前まで、知らなかった。
無理もない。
彼女に限ったことではない。
こと芸能界のこととなると、私はからきしなのだから。

私はそもそも、世の常の人のようには、テレビを見ない。
ドラマはまず見ない。
一つだけ例外があり、NHKの朝ドラは見ている。
ちょうど我が家の、朝飯の時間に重なるからだ。
だからそれを、我が家では「朝飯ドラマ」と呼んでいる。

今回の「とと姉ちゃん」において、多江さんは、ヒロインの母親を演じている。
三人の娘を抱え、若くして旦那と死別する、苦労の多い役である。
女の細腕で一家を支える、困難な状況下にありながら、彼女の顔は何時も明るい。
これがいい。
視聴者は、朝から愁嘆場に、立ち会いたくない。

手拭いを姉さんかぶりに、白い割烹着姿。
これが様になっている。
目を細めて笑う、その顔がいい。
もしかしたらこれを、惚れたというのかもしれない。
今回の朝ドラでは、私は、ヒロインより誰より、彼女の動向にばかり、目が行っている。

その多江さんの顔を、またもやテレビで見ることになった。
NHKの他番組である。
今度はドラマではない。
分類するなら「旅番組」であろう。
彼女はそれへの、ゲスト出演者ということになる。

嫌いだ、見ないと言いながら、私は結構テレビを見ている。
それはつまり、ドラマ、バラエティ、歌番組などを見ないということ。
ニュースは必ず見る。
スポーツ中継はしばしば見る。
紀行番組、ドキュメンタリーの類も、まあまあ見る。
この辺に、私と言う人間の、性格というものが、よく表れている。
自分でも、よくわかっている。
私は決して、中庸を心得た人間ではない。

 * * *

「鶴瓶の家族に乾杯」
これは毎週、ほとんど見ている。
鶴瓶とゲスト出演者が、見知らぬ地に降り立ち、現地の人との交流を試みる。
これが面白い。
行き当たりばったり、たまたま出会った人との間に、ささやかなドラマが生まれる。
名もない市井の人々ながら、彼ら彼女らには、決まって何がしかの魅力がある。
人物に親しみを抱くと共に、その地もまた、好ましくなっている。
ついには訪れてみたくなる。
これが、この番組の眼目であろう。

テレビをつけたら、もう、鶴瓶と多江さんが、並んで映っていた。
連れ立って歩くそこは、徳島県阿南市とある。
ほう……と声を上げたくなるほどに、そこは私には、懐かしい地だ。
私はかつて、一日がかりで、その地を歩き抜けたことがある。

遍路旅であった。
五年前の、ちょうどこの時期であった。
私は、白装束に菅笠をかぶり、徳島県下の寺々を、巡り歩いていた。
阿波一国に、二十三の札所がある。
それを打ち終えたら、一旦旅を終え、帰京するつもりであった。
ちなみに遍路においては、寺に詣でることを「打つ」という。

多江さんは、鶴瓶と別れ、単独行動に移った。
画面に、見覚えのある寺が映った。
「白水山平等寺」
山門を見て思い出した。
二十二番札所である。

ますます懐かしい。
長閑な寺であった。
本堂への長い石段を上がると、背後が開けている。
田畑が広がり、川が流れ、遠くに山が見え、日本の農村の原風景を思い起こさせる。

お参りを終え、さてご朱印をと思ったら、納経所に人の姿がない。
「お願いしまーす」と大声で呼んだら、石段の掃除をしていたおばちゃんが、
やおら腰を上げ「はーい、今行きますよー」と降りて来た。
万事がのんびりしている。
時間の止まったようなお寺であった。

多江さんが、この寺の住職と話をしている。
法要の席にも、連ねさせてもらう。
ゲスト出演者として、堂々の姿だ。

付近の竹林を訪れ、筍掘りをやる。
長靴を履き、へっぴり腰で、鍬を振りおろす、その姿ご愛嬌だ。
筍の周囲の土を削り、程よいところで、鍬を入れ、切り取る。
素人にしては、まずまずの手際だ。

長閑な山郷において、多江さんが、ドラマと同じく、目を細めて笑う。
その長い髪が揺れる。
ドラマとは違い、結わずに、肩まで垂れるに任せている。
こんな時、茶髪でないのがいい。
日本人には黒髪の方が合う。ずっと美しい。
ということを、彼女は、きっとよくわかっている。

 * * *

五年前、私は五人の仲間と共に、この地を歩いた。
いずれも、旅の途上で道連れになった、元はと言えば、見ず知らずの他人である。
阿南は、竹林の多い地であった。
山を下り、野を歩き、また山に入り、やがて海辺に出た。
仲間の一人が、行路のどさくさに、筍を数本掘ったと見える。
「持ってってくれ」
その日帰京する私に、渡して寄越した。
彼らはさらに旅を続け、帰宅することなく、四国を一周しようとしていた。

むさくるしい男が六人。
本来は、それぞれが一人旅であった。
たまたま宿を共にした、休憩を共にしたなどの、些細なきっかけで、道連れになり、
その輪が広がった。
旅がそうさせたのであろう。
ほんの数日、行を共にしただけなのに、もう別れがたい、友のようになっていた。

隊列を組むわけではない。
それぞれのペースで、てんでんばらばらに歩む。
先頭の一人が休むと、そこへ後続の者が集まり、人の輪が出来る。
水を飲み、時に菓子を分け合い、冗談を言っては、笑い合った。

小学校の前を、通り過ぎた。
私達の、長く伸びた隊列に対し、グラウンドを隔てた校舎から、生徒達が声を揃えて叫ぶ。
「お遍路さーん がんばってー」
一人通る度に叫ぶ。
だから、六回にわたって叫んだ。
これに対し、その度にそれぞれが、手を振って応える。
「ありがとよー」
叫び返す者も居る。
「徳島県阿南市立福井南小学校」この名を私は、今も忘れない。

次の二十三番が、徳島の最終札所だ。
「薬王寺」
ここで仲間の五人と、握手して別れ、私一人、近くの日和佐駅から、牟岐線の電車に乗り、
帰京の途に就いた。
この時の仲間の中には、五年後の今に至るまで、縁が切れない者も居る。
遍路の友だから、私はこれを略し「ヘントモ」と呼んでいる。

 * * *

多江さんが私に、懐かしい旅を思い出させてくれた。

女優さんを好きになる。
私の場合、これがざらにある
惚れっぽいということだろう。

贔屓の女優さんが、増え過ぎても困る。
それで私は、ドラマを見ないようにしている。
というわけでもないのだが。

四国の旅は、楽しかった。
随所に、遍路転がしの難所があり、辛い思いも随分とした。
させられた。
しかし旅を終えれば、全てが楽しい思い出と化している。

阿波に続き、土佐、伊予、讃岐もまた、私には思い出の深い地だ。
普段は忘れている。
何かのきっかけで、その地を思い出す。

紀行番組は好きだ。
四国四県、何処もいい。
惚れた女優さんが、そこを旅してくれたら、なおのことうれしい。



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一人旅いいですね

パトラッシュさん

彩々さん、
とうにご存知でしたか、木村多江さんのこと。
(知らぬは私ばかりなり)

少し悲しげな顔……まさにその通りですね。
そこが男心をくすぐるのかもしれません。(笑)

ご覧になっていますか、朝ドラ。
一人の女性の生涯を通して、日本の近代史の側面を知る。
そう言う意味で、前作も今作も、興味深いものがあります。
「マッサン」も良かった……

旅に好適の季節です。
どうぞお出かけ下さい。

2016/05/30 08:45:13

朝、再度読ませていただいて

彩々さん

おはようございます

昨夜は眠たい目でパトさんBlogを読ませていただいた
ものですから、今朝しっかりした目で改めて拝見しました。

良い季節です。
一人、気ままな旅へふらっ〜と出掛けたくなりました。

木村多江さんという女優さんをテレビで拝見し始めたのは
もう何年前でしょうか…
「ステキな」という言葉で表せないほど、女性が女性で
あるべき姿を押しつけがましく無く表現できる人だと、
注目していました。

少し悲しげな顔だちにも見える木村 多江さんですが、
慈愛に満ちた表情ですし、「癒す心」を持った聖母を
思いださせてくれ女性です。
なかなか、女優さんとしてもこうした自然体の
雰囲気が漂う女性は居なくなりました。

パトさんが注目し、ファンになられるのに納得です。

PS:私も「マッサン」以来、また現・朝ドラに嵌まってます。

2016/05/30 06:57:36

所詮ドラマですから

パトラッシュさん

喜美さん、
そうなのです。日曜は、朝ドラ、やらないのです。
明日午前八時から、1チャンネルでやります。
お時間が合いましたら、どうぞご覧になって下さい。
でも、無理なさることは、ありませんよ。
たかがテレビ、それも作り物のドラマですから。

広島の方は、しまなみ海道で海を渡れるので、
四国は意外に近いのです。
区切り打ちにも、よろしいでしょうね。

東京からとなると、行き来が大変です。
そこで、ある程度、まとめて旅をすることとなります。
私は一周するのに、延べ40日かかり、それを五回の旅に分けました。

2016/05/29 17:26:15

解りません

喜美さん

私朝ドラ見ていません 娘達が他のチャンネル付けていたので 何処でもいいやと 何時も他を つけていましたから
今朝パトさんに応えるべく多江さん見ようとテレビつけていましたら日曜はやらないので残念
お遍路さん広島のお友達(若い)時々少しずつ廻っています

2016/05/29 15:59:56

私は素敵じゃありませんが……

パトラッシュさん

SOYOKAZEさん、
Fカップって、私には想像出来ませんが、
きっと迫力があるのでしょうね。

ごくん(唾を飲む音)

何時か、お会いしたいものです。

2016/05/28 19:09:12

友人は

さん

パトラッシュ師匠

友人は、40代の女性です。
東北生まれで、真っ白で肌理の細かい細かい肌と、Fカップの胸に圧倒されます、(笑)
師匠の事「素敵♪」って言っていましたよ。^^

2016/05/28 17:57:41

遍路は

パトラッシュさん

シシーマニアさん、
遍路の世界ほど、簡単に友達が出来るところはないです。
同じ目的に向かってまい進する、同志のようなものだから……でしょうね。
それも、会う人会う人、ひとかどの人物のように思われます。

今のところ足りていますが、友達に不足するようになったら、また遍路に出てみようかと思っています。(笑)

2016/05/28 16:12:13

そういえば、くしゃみ出ました

パトラッシュさん

SOYOKAZEさん、
お詳しいですね。(さすがにというべきか)
ゼロの焦点とのこと、私はまったく知りませんでした。(朝ドラで、初対面です)

なるほど、創作面との兼ね合いですね。
そう、実際に、偶然似てしまうということも、起こり得ないではありませんからね。
また、創作のヒントにもなるでしょうし……

そのご友人は、女性ですか?
美人ですか?
それなら、今度、お会いしたいですね。
紹介して下さい。(笑)

2016/05/28 16:06:59

男優は?

パトラッシュさん

吾喰楽さん、
竹林に入っての、筍掘り、あれはよかったですね。
(それを煮て食べるシーンがあれば、もっとよかったのですが)

吾喰楽さんの場合は「ながら見」ですね。
それだけでも、女優さんをしっかり見極めておられるところは、さすがです。(笑)

2016/05/28 16:00:10

監督だったら……

パトラッシュさん

Reiさん、
私の日常は、デスクに向かっているだけ。
ヒマな時に、テレビを見ることもありますので、
何時もパッチワークで忙しい、Reiさんよりは、見ているのかもしれません。
女優さんは、すぐに好きになります。
私が映画監督だったら、使ってみたい女優さんが、たくさんおります。

2016/05/28 15:52:46

四国は

パトラッシュさん

COSMOSさん、
四国はどこも、いいですね。
気候は温暖、食べ物は美味いし、人情は豊かで。
いっそ、住みたいくらいです。

最近のテレビは、ほんとうにうんざりさせられることが多いです。
中で、「鶴瓶の……」だけは、しっかりとみています。

2016/05/28 15:47:47

ヘントモ

シシーマニアさん

本来は一人旅のお遍路で交流が生まれるとは、いいですね。
それぞれに目的があったとしても、基本の行動は一つだからでしょうか・・。
無防備なところで繋がっている友情、という感じもします。

2016/05/28 14:42:42

木村多江さん

さん

私は、「ゼロの焦点」の映画の時の演技に惹かれました。
日本女性らしいキャラクターですね。
色気もあります。

私は、ドラマは結構観ます。
リサーチになるからです。
構想を温めていた物と、似たストーリーもままあって、被るといけないから、チェックしています。

昨日は、友人と師匠の話をしていました。
その中に、遍路旅の話も出ました。
クシャミしませんでしたか?(笑)

2016/05/28 11:16:35

鶴瓶の家族に乾杯

吾喰楽さん

おはようございます。

私とテレビの趣向が似ています。
でも、私は朝ドラも見ません。
見ていませんが、多江さんの顔は知っています。
テレビをつけっぱなしのことが多く 、勝手に目に入って来るのです。
オーラがある女優さんですね。

「鶴瓶の家族に乾杯」は、筍掘りのシーンが印象的でした。

2016/05/28 10:20:01

テレビ

Reiさん

師匠は、私よりテレビを見ているかもしれません。
そして、私より絶対に贔屓の女優さんは多いと思います(^^;)
私なんてテレビを見てぽーっとする俳優さんなんて、ほんの少しですよ(?)
「とと姉ちゃん」は私も見ています。木村多江さんは、いい味を出していますね。

2016/05/28 10:07:51

いいところですね

COSMOSさん

私もテレビのドラマ、バラエティはまったく見ません。
この鶴瓶の家族に乾杯だけは毎週見ています。この四国は私も何度か旅行していますし仕事でも何度も行っている思い出の地です。また行きたいですね。

2016/05/28 09:32:33

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