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パトラッシュが駆ける!
鉄棒
2017年08月26日
テーマ:テーマ無し
男が、鉄棒にぶら下がっている。
地上に浮いた足を、ぶらぶらと揺らしている。
それだけの事。
他の運動に移行する気配はない。
無理もないなあ、あの身体では……
私は、公園内を通り抜けながら、彼の腹部を見ている。
その出が、約八センチ。
懸垂は無理だろう。
これが、十センチを超えるようだと、ぶら下がりすらも、
困難になるだろう。
十五センチを超えたら……
彼はもう、鉄棒に飛び付くことすら、しないであろう。
鉄棒とは、こうやるもんだ。
という、実例を、私が見せてやりたい。
しかし、腕に傷持つ身だ。
悔しいけれど、私は今、鉄棒にぶら下がれない。
しばらくの辛抱だ。
八センチの彼よ、私の傷が癒えた、その頃にまた、
この公園に来てくれたまえ。
鉄棒は、ぶら下がり健康器ではない。
体操をやる、懸垂をやる、そのための設備だと、知らしめてやる。
* * *
数日前のことであった。
「どうしたの、その背中は?」
ランニングシャツ姿の、私に向かい、妻が、素っ頓狂な声を上げた。
「えっ?」
何のことかと、鏡に後ろ姿を映して見れば、腕の付け根の辺りに、
暗紫色の斑紋が見える。
大小取り混ぜて、散在し、これを一つの群落と見ることも出来る。
念のために、腕を上げて見て、さらに驚かされた。
肩から肘にかけての、腕の内側が、一面に変色している。
こちらは、黒ずんでいる。
「痛くないの」
「ない」
「痒みは?」
「ない」
「これって、ぶつけた時に出来る、内出血じゃないの」
「ぶつけてない」
「お医者さんに行ったら」
「これしきのことで?」
「だって、異常でしょ。健康な人に、こんなものが、出るはずないわ」
「何科に行くんだ?」
「受付に行って、聞くのよ、こんな痣が出来ておりますけどって」
「やだよ」
私が医者に行くのは、よくよくの時だ。
疼痛、発熱など、それが耐え難い時に行く。
あるいは、症状が長引く時だ。
少し心配になり、やむを得ず行くことがある。
今回の症状は、私のかつて、経験した、どんな病変とも異なる。
不吉な予感が、しないでもない。
しかしながら、それでも医者には行きたくない。
自力で治せる、その可能性があるうちは、安易に他力に、
頼るまいと思っている。
* * *
思い当たる節が、ないわけでもない。
数日前、突如として、左肩が硬くなった。
痛くも、痒くもない。
ただ、肩が弾力を失い、冷えた餅のように、固まっている。
一日、二日、そして今日が、三日目である。
何だろう……
気にはなっていた。
今から考えると、三日前に、内出血を起こしていたのでは、あるまいか。
原因は……
考えられるのは、鉄棒くらいしかない。
ちょっと張り切って、懸垂の回数を多くやった。
その際に、肩の辺りの毛細血管が、切れたのかもしれない。
鉄棒に飛び付いて、腕の力により、身体を高く持ち上げる。
これが懸垂である。
その持ち上げるところに、特に力を入れた。
懸垂というのは、回数もさることながら、見た目の美しさも
重要な要素だ。
美しさには、姿勢もさることながら、上下運動のその、
振幅の大きさがものを言う。
大きいほど、迫力が増すのは、言うまでもない。
その日、私は、少々張り切ってしまった。
観客が居たからだ。
早朝六時過ぎ、何時もなら、広い公園に、高齢者が一人か二人、
ぶらついている。
その日に限り、妙齢の女性が数人、輪を描くように、集まっていた。
水色の、揃いのシャツを着ている。
体操でもやる、グループかもしれない。
あるいは、太極拳なんてこともある。
いずれにしても、私は、観客の目を意識してしまった。
そのために、無理をしたかもしれない。
普段でも、居合わせた人から、拍手を受けることがある。
「あら、あの人すごいわねー」
感嘆の声が、背後から、聞えることもないではない。
中には、直接私に、話しかける人も居る。
「お幾つなんですか?……へえ、お元気なんですねえ。
どうしたら、そんな風に、出来るように、なるのでしょう」
「いや、慣れですよ。懸垂なんか、繰り返しやっていれば、
誰でも、出来るようになりますよ」
こちらも、社交辞令をもって、応じている。
私の得意技を、世間の多くの皆さんに、見てもらいたい。
その感嘆の声が聞こえれば、もっといい。
そういう助平根性があった。
それが私をして、過激な筋肉運動へと、奔らせてしまった。
* * *
斑紋が出てから、一週間が過ぎた。
この間、朝の散歩は続けている。
鉄棒を休んでいる。
ただ、公園の中を、通り抜けるだけに、甘んじている。
皮膚の黒ずみが、大分薄らいで来た。
そろそろと思っている。
妻は、もう鉄棒を止めなさいと言う。
冗談ではない。
私の生きがいではないか。
公園内に、ご婦人方の姿が見える。
こう言う時が危ない。
私は、禁を破り、鉄棒に飛び付きたくなっている。
鉄棒の近くに、ぶら下がり男が居る。
こう言う時も危ない。
彼に代り、私の美技を、見せてやりたくなっている。
いっそ、公園を避け、散歩をすればよいのだが、長年の習慣で、
それが出来ない。
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パトラッシュさん
実は鉄棒はとても苦手です。
カーボンで出来たハンドルを握るのは得意ですが、あの冷たい鉄棒を握ると、震えが来ちゃうんです。
ぶら下がる事などとてもできません。
すみません、ご期待に応えられなくて。
2017/08/29 09:17:42
2〜30回なんて、とてもとても
ウイールマンさん、
二週間ほど、懸垂を自粛し、その後、再開しました。
現在、再開一週間、まだ筋力が、元に戻りません。(最盛期の七割ほど)
衰えるは易く、旧に復するは難し……ですね。
筋肉の塊のような、ウイールマンさんなら、きっと鉄棒も得意なことでしょう。
2017/08/29 08:56:00
パトラッシュさん
多分来週くらいには、懸垂2-30回くらいはすいすいできるようになると思いますよ。
生きがいなら、回りが何と言おうと止めてはいけないと思います。
頑張ってください。吉報待ってます。
2017/08/29 03:50:54
筋肉だけが全てではありません
喜美さん、
運動選手で、短命だった例は、たくさんおります。
鍛えているようですが、逆に、折れやすい部分も、出て来るのではないでしょうか。
運動なんか、しなくても、長生き出来れば、それでよろしいのだと思います。
喜美さんは、幸せな人生だったと思います。
2017/08/27 12:04:18
運動
パトさんのように身軽な人羨ましいです私は両親が悪かったのかもしれません二人の兄貴の次の女の子大喜び
其れが赤ちゃんで肺炎になり大騒ぎ
お陰様で危ない事禁止 全く運動嫌いに育ちました 何一つ重いものは兄達が持つ
握力検査で先生に叱られました まじめにやりなさいと本人大真面目にやりました 不注意で1回転びましたけれど自然に骨まで付くし何でしょう
いまでも運動も歩くのもきらいです
其れでもこの年まで生きています
2017/08/27 07:48:32