日暮れて道は遠し

水彩紙の選定 

2015年08月01日 外部ブログ記事
テーマ:テーマ無し

初心者だから、水彩描く紙は、安いものでいいんです、といわれるお客さんが多いです。しかし、水彩画は、水彩紙に描くに限ります。安価な画用紙ではダメなのかと訊かれます。はっきりいって、ダメだと思います。水彩紙は、水彩画に適した構造とつくりになっていて、さまざまな点で、メリットがあります。水彩絵の具はほぼ透明といってよく、水彩画の明るさは、紙の白さであることからも、その重要性が理解できると思います。いくつか水彩紙の選定のポイントをまとめてみます。■1 《堅牢さ》水彩紙は、原料の繊維が長く、容易に繊維がほつれにくい構造でつくられています。ちょうど和紙がとてもちぎれ難くて丈夫なのと似ている感じです。水彩紙の原料には、さまざまなものが使われていて、木材ばかりではありません。麻やコットン、ラグ(ぼろ)、変わったところでは竹なども使われています。水彩の表現において、絵の具とたっぷりの水を使うほど、水彩らしい表現が可能になります。たとえば、「にじみ」、「ぼかし」、あるいは背景などに使う、「広い面積の均一な着彩」など、これらの表現は少量の水では表現できません。水彩紙は、水槽の中に漬けっぱなしにしても、ボロボロになることはありません。そのくらい濡れに対して丈夫にできています。この点で、画用紙は比較的薄い紙がほとんどで、繊維も弱い印象です。過酷に水を使うと、紙の中に絵の具が滲んでしまったり、繊維がほつれてしまい、ひどい場合は穴が開きます。またマスキング手法といって、白抜きをするためのマスキング液(マイルドな接着剤のような液)を使う手法がありますが、マスキング液をはがすときに、水彩紙は表面が傷みにくいのです。■2 《サイジング処理》すべての水彩紙には、サイジング処理が施されています。別名、ドーサ処理とかにじみ止めとか言われます。紙の姿が完成してから、ドーサ液を塗布して乾燥させてあるのです。ドーサ液は、明礬(みょうばん)と膠の混合液ですが、水たっぷりで絵の具をのせたときに、塗った領域が、横へ広がらないように食い止める作用をします。濃い液を塗ると、今度は水を弾くように作用するので、その濃度はとても大切です。各メーカにより、ドーサ液の濃度は異なるので、ちがうメーカの紙を使ったとき、なんとなく横への広がり方がちがうと感じるかもしれません。自分の経験では、イタリアのファブリアーノという紙は、ドーサが少ない印象で、絵の具が広がる気配で、絵の具が暴れる感じがしますが、自分は好きです(笑)。またもちろん、紙の中へ絵の具が入り込むのを阻止しているので、絵の具の顔料は、ごく表面に留まっているわけです。これが発色のよさにつながっています。ドーサが弱くて、絵の具の顔料が、紙の中にもぐりこんでいる状況では、絵の具の発色がぼんやりとして、眠い感じがします。■3 《表面の凹凸、目》紙の表面には、最後にプレスによって凹凸(目と呼んでいます)が作られます。毛布などといっしょにプレスして、わざわざこの「目」を、作っているのです。目はゴルフボールのディンプルと同じような構造で、小さな凹みです目には、粗目、中目、細目などがあります。なぜわざわざ目を作るのかというと、絵の具の水溜りです。ケント紙などのように表面がツルツルの紙に、絵の具をのせたことのある方はわかると思いますが、すこしでも紙が傾斜すると絵の具が流れてしまい、とても描きにくいのです。またこの目に溜まった絵の具が乾燥すると、色面に独特のウロコ模様が現われ、魅力的な風合いが現われます。■4 《紙の厚さ》紙の厚さは、ふつう1平方メートルの紙の重さで、表現します。専門的には、坪量と呼んでいますが、厚みを何ミクロンというよりも、重さでいうのが通例です。たぶん取引上の簡易さからも重さが使われるようになったと思われます。水彩紙のスケッチブックには、この厚さの表記が記載されていて、だいたい185g/m2〜300g/m2のものが市販されています。専門に水彩画を書く方は、たいていこの300g/m2の超厚口の紙を使われることが多いのではないでしょうか。というのも、水たっぷりで描くとき、300g/m2ほどの厚さがあると、紙のうねりが抑えられるのです。(本格的に描く場合は、やはり水貼りが必要です)ちなみに画用紙はたいてい、175g/m2以下の厚さが多いです。この点でも水彩を描くには厳しい紙だといえます。以上、水彩紙に関していろいろと述べましたが、スケッチブックは、原料、目、坪量、などの情報が記載されています。にじみ度合い(ドーサの量)だけは、経験で知るしかありません(笑)。水彩紙そのものは、海外メーカのものが多いですが、市販されているスケッチブックは、日本メーカが仕立てていることが多く、この辺をよく読み取るといいでしょう。にほんブログ村

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