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パトラッシュが駆ける!

サッカー見るなら 

2017年12月16日 ナビトモブログ記事
テーマ:テーマ無し

最近のサッカーでは、前線と最終ラインの間を、あまり空けない。
陣形をコンパクトに保つ。
私の、少年時代のサッカーは、違った。
縦に長い陣を敷き、バックスがハーフラインを越えることは、滅多になかった。
それが今は、フィールドプレーヤー全員が、平気で、敵陣に入っている。

ハーフライン付近で、ボールを受けた、背番号3が、短い助走を経て、
思い切り右足を振り抜いた。
その瞬間に思った。
そりゃ無理だろ……
ゴールまで、およそ40メートル。
ボールは、難なく、キーパーにキャッチされるか、それとも浮き上がり、
ゴール上空を通過することになるだろう。
それは俗に「宇宙開発」と揶揄され、サッカーでは、よくある光景だ。

しかし、驚いた。
ボールは、低い弾道を、スピードを保ったまま、飛び続け、
ゴール右上隅に飛び込んでしまった。
さながら、吸い込まれるように……である。
キーパーも、よもや、あの遠距離からとは、思わなかったであろう。
懸命にジャンプをしたが、その手のはるか先を、ボールは通り抜けて行った。

サッカーに、美しい得点と、泥臭い得点がある。
サイドから上げたクロスボールに、ゴール前に飛び込んだフォワードが、
ダイビングヘッドで合わせる。
背後から来たパスを、足元に受け止め、振り向きざまにシュートする。
ドリブルで、敵ディフェンスを二人、三人と抜き去り、ボールをゴールへ流し込む。
などが、ビューティフルゴールとされている。

一方で、泥臭いとは……
ゴール前の混戦で、ディフェンスの蹴った、クリヤーボールが、
倒れ込んだ選手の背中に当たり、そのままコロコロと、
ゴールラインを越えてしまった。
なんていうケースだ。

先ほど、日本代表チームが上げた、一点目がそうだ。
キーパーのクリヤーし損なったボールが、ゴール近くに転がっている。
フォワードの小林が、これを倒れ込みながら、
ゴールに押し込んだのであった。

試合は、膠着状態が続いていた。
我がサムライブルーは、チャンスを作るものの、決めきれない。
格下の中国代表を相手に、苦戦を強いられていた。
前半は0:0、後半も、無得点の状態が、長く続いていた。
観客の多くが、欲求不満であったろう。
私も、その一人だ。

そんな時に、小林が、シュートを決めた。
執念でもって、押し込んだ感がある。
汚いも何もない。
点は点だ。
スタンドは、総立ちになった。

それにも増して、観客を喜ばせたのが、次の一点だった。
背番号3は、センターバックの昌子。
サッカーを知らない人は、これを「まさこ」と読む。
実は「しょうじ」なのである。
昌子源、立派な男子だ。
本日の主将でもある

彼は普段、チームの最後方で、守備に専念している。
攻めて来る敵を、阻止するのが仕事であり、
華麗な足技を見せるフォワードに比べ、地味な任務を引き受けている。

それが、どえらいことを、やってのけた。
そのロングシュートの美しさは、我が国のサッカーファンの間で、
長く語り継がれるのではあるまいか。

いい場面を見た。
いい試合に遭遇した。
来てみるもんだ、スタジアムに……
ということを、つくづく思っている。

 * * *

「寒いんだから、お止めなさいって」
妻に、何度止められたか、知れやしない。
「テレビ中継があるんでしょ。コタツにでも入って、見たらいいじゃない。
風邪でも引いたら、どうするの?」
まったくもって、人を、半病人か何かのように言う。

「臨場感が違うんだ。何でもそうだが、生がいいんだ。
厚手のジャンパーと、マフラーを出してくれ。完全武装で行って来る」
妻の止めるのを、振り切り、出て来たのであった。

東アジアの王者を決める、サッカー大会である。
この日の第一試合では、韓国代表と北朝鮮代表が対戦した。
拮抗したゲームであったが、韓国が1:0で辛勝した。
私は、その試合も見ている。
一試合でも二試合でも、入場料金は同じ。
となれば、見た方が得だ。
というわけで、第一試合の始まる、4時30分には、
もう、スタジアムに来ていた。

選手権大会とは名ばかり、スタジアムは当初、空席だらけであった。
赤いユニフォームの、二〜三百人が、ゴール裏に陣取っている。
北朝鮮の応援団だ。
太鼓を鳴らし、声を揃え、叫んでいる。
意味はわからないが、なにやら「いち、に、さん、し」と
怒鳴っているように、聞えなくもない。
その一糸乱れぬところは、さすがに隊列の国だ。
集団示威行動には、慣れていると思われる。

一方の韓国側応援団は、はるかに数が少ない。
気勢もまた、まったく上がらない。
しかし、サッカーは別だ。
北朝鮮ゴール前の混戦から、アッと思う間もなく、
ボールがゴールに転がり込んでいた。
何のことはない。北朝鮮選手の足に当たり、つまり、
オウンゴールとなってしまった。
その選手の、悔しさたるや、ないだろう。

昔、よく語られたものだ。
あの国では、大事な試合に負けると、選手は、銃殺されてしまうのだと。
そんなことは、あるまい。
そんなことをやっていたら、選手が払底してしまう。
しかし、試合後の、北朝鮮の選手達の、落ち込みようたるや、なかった。

それに比べ、韓国選手は、当然のように、元気がいい。
試合後、自国応援団の陣取る、スタンド前に整列し、一礼した。
さらに足を伸ばし、北朝鮮側のそれにも、挨拶をした。
これを、勝者の余裕と見ることも出来る。
しかし、良い光景だ。
スポーツは、かくありたい。

私思うに、両国政府は罵り合っているけれど、民衆レベルの敵愾心は、
さほどでも、ないのではあるまいか。

 * * *

第二試合が始まる頃には、観衆が増えた。
現金なものだ。
我が日本代表チームが出場するからだ。
バックスタンド一帯に、空席が見えなくなった。

寒い。
満員の人いきれも、この際、役に立たない。
下半身から、冷えて来る。
その中を、ショートパンツのお姉さん達が、ビールを売りに回っている。
若さとは、大したものだ。

しかし、いくら足を見せようと、ビールは売れない。
この寒さで、売れるわけがない。
売れないから、彼女ら余計に、躍起になるのであろう。
もう、うるさいほどに回って来る。

生ビール一杯が、750円。
スタジアムのビールは、どうしてこうも、高いのであろう。
私は、そんなもの、意地でも、飲んでやるまいと思っている。

試合終了のホイッスルと共に、出口へ急いだ。
シャトルバスの乗り場へと、駆ける。
乗ってしまえば、もうこっちのもの。
じきに、JRの駅に着く。

赤提灯を探し、急ぎ飛び込む。
熱燗をやる。
駆け付け三杯飲む。
やっと、人心地がついた。
それから、もつ焼きを食べる。
焼うどんを食べる。
そうして入念に、体温の上昇を図る。

風邪で、寝込みでもしたら、何を言われるかわからない。
私は、平然たる顔で、帰宅しなければならない。



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いいお孫さんですね

パトラッシュさん

喜美さん、
サッカーは面白いです。
やっても見ても……
世界のスポーツの中で、最もファンが多いです。
お孫さん、家庭平和を考えるなど、きっと良き夫であり、父なのでしょう。

2017/12/16 14:06:04

夫婦別遊

パトラッシュさん

シシーマニアさん、
家庭平和のため、涙ぐましい努力をしております、私めは。
男やもめになったら、生きていけない身ですので……
(吾喰楽さんの、爪の垢でも、煎じて飲まねばなりません)
夫婦でも遊びは別々でして、それぞれ勝手に行動しております。

2017/12/16 14:01:43

サッカー

喜美さん

運動嫌いな私は全くテレビでも見ませんけれど孫が大好きで社会人になっても高校からのグループでやっているらしいです 最近我が家に来ても子供の(私のひ孫)世話をしたり奥さんの手伝いしたりで 聞くと時々休みに行くから居る時はなるべく手伝うのだとか言っていました そんな事までしても
サッカーやりたいのですね

2017/12/16 13:20:28

最後の二行に・・

シシーマニアさん

長い人生での、色々な場面を思い出して、クスっと笑ってしまいました。

2017/12/16 09:36:15

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