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パトラッシュが駆ける!

がんばれよ 

2018年07月28日 ナビトモブログ記事
テーマ:テーマ無し

毎朝六時から、散歩に出る。
そういう習慣になっている。
麻薬みたいなもので、それをやらないと、
禁断症状が出る。
いや、苦悶を伴うほどではないけれど、
一日中、気分がよろしくない。

通行人は、まばらであり、毎朝同じ時間に会うから、
その多くの顔に、見覚えがある。
駅に向かう皆さんは、仕事であろう、
朝早くから、ご苦労様だ。
駅から遠ざかるのは、一部の朝帰りを除き、
概ね、生産に関与しない人々と、推察される。
これをヒマ人ということも出来る。
私もその一人である。

自転車で、新聞を配達している女子が居る。
おそらくは、販売店に住み込みで働く、大学生であろう。
しかし、顔にあどけなさが残るものだから、
高校生に見えなくもない。
長い髪を、無造作に束ね、後ろに垂らしてある。

えらいなあ……
遊び呆けている学生が少なくない中で、その勤勉さに、
頭が下がる。
同じバイトをやるにしても、かっこいい職場は、
いくらでもあるだろうに、販売店のロゴ入りの、
紺のTシャツを着て、朝早くから、自転車を漕いでいる。
雨の日も、風の日もだ。

彼女の労を、ねぎらってやる方法は、ないものか……
新聞を取ってやる、つまり購読してやる、
ということは出来る。
配達員も店員の一人、契約を取ってくれば、
それは給与に反映されるはずだ。
しかしながら、私には、現在購読中の新聞がある。
これを断らねばならなくなる。
一方の歓心を得たいがために、他の一方を切って捨てる。
これでは、いたちごっこにならないだろうか。

ポチ袋に、千円札を入れて渡す。
さながら寄席で、芸人に祝儀を渡すようにだ。
芸人なら、受け慣れているからいい。
ついでに言えば、タクシーの運転手もいい。
こちらは「釣りは要らないよ」の一言で済むから、
もっと簡単だ。

しかしながら、路上で見知らぬおじさんから、
いきなりポチ袋を差し出されたら、彼女はいったい、
どう思うだろう。
下心でもあるかと、疑われるかもしれない。
多分、受け取りを、固辞するであろう。

私は、自分を品性劣悪とは、思っていないけれど、
それは、自分の思いであって、他人の目というのは、
また別のものだ。

「ごくろうさん」
ある朝、思い切って、声をかけてみた。
彼女はきっと、戸惑ったのであろう、無言で小さく頷いた。
次の日は、会わなかった。
翌々日に会ったから、また同じように言った。
「おはようございます」
今度は、答えが返って来た。
その後、会う度に、声をかけている。
何処の誰とも、彼女は知らないだろう。
大方、購読者の一人とでも、思っているのでは、あるまいか。
それでいい。
私は一言でいい、彼女を慰労してやりたかった。
その目的は、果たせたことになる。

 * * *

宅配便の車が、民家の前に停まっていた。
この車を目がけて、後続車のクラクションが鳴り響いた。
慌てて出て来た配達員に向かい、乗用車の窓から、
男の怒声が響いた。
「曲がりきれねーよ、そんなところに、止められちゃー」
世の中には、相手が弱い立場の者だと見るや、
嵩にかかり、居丈高になる者が居る。

「そんなに怒ることは、ないじゃないか……」
という事を、普段怒りっぽい、この私が思っている。
相手が、宅配便の車であることは、見てすぐにわかる。
配達なら、ものの二三分で済むだろう。
どうして、おとなしく待ってやれないのか……
という事を、タダでさえ気の短い私が、思っている。

私もかつて、零細商店の主として、接客の最前線に立っていた。
客と争うことは、禁忌であった。
ご無理ごもっともで、面従しつつ、客を掌の上に乗せ、
巧みに転がすのが、商人の才覚とされていた。

その商店主からリタイアし、随分と年数が経つ。
よく、あの無理難題に耐えたな……
と言う思いが、年と共に強まっている。
当時は、当たり前と思っていたことが、今はもう、
バカバカしくて、出来なくなっている。

忍従のタガが外れた、その反動であろう、
私は、威張り散らす客が嫌いだ。
「お客様は神様です」
これほど嫌いな言葉はない。
これを真に受けた、早とちりの客が、
どれだけ夜郎自大へと、肥大したか。

客の横暴を嫌う、その反動として、
社会の最前線で働く人達への、惻隠の情が、
私の中で、より強くなっている。
もしも店の中で、客と店員とのトラブルがあったとすると、
私はきっと、店員の肩を持つであろう。
タクシーの運転手が……
駅員が……
デパートの店員が……
もしも客と揉めていたら、私は必ずや、
彼らの側に立つだろう。
抵抗出来ない立場の者が、それでも、憤るのは、
よくよくのことだからだ。

 * * *

これを、判官びいきなどと言われたら、大変に面映ゆい。
私は単に、かつて余儀なくされた、忍従の憂さを、
後輩の肩を持つことにより、晴らしているに過ぎない。

威張る客が嫌い。
その反動として、社会の最前線で、黙々と働く人達が好きだ。
その労をねぎらい、それぞれに、チップを渡したのだが、
それをやっていると、財政の破綻が、目に見えるので、
心情だけに、限らせてもらっている。



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阿諛

パトラッシュさん

吾喰楽さん、
三波春夫の真意は、ともかくとして、彼の結果責任は大きいですね。
サービス業に従事する、多くの人に、いわれなき忍従を強いたことになるのですから。
そのせいもあり、私は、彼が好きではありませんでした。
さながら、自分だけ「良い子ぶって」客に取り入った印象を、否めなかったからです。
彼に息子がいたようですが、結局は目が出なかったようです。
「阿諛」は一代限り、これでよかったです。

2018/07/29 07:02:20

そうですね

パトラッシュさん

モナミさん、おっしゃる通りかもしれません。
一つ言葉を葬り去っても、そこに「需要」がある限り、また新たな言葉を、創造するかもしれません。
相手を持ち上げるために、自らを卑下する、サービス側の人間も居るわけですし……
私だけは、尊大になるまいぞ……
と心に期すより、ないようです。

2018/07/29 06:51:59

三波春夫

吾喰楽さん

こんばんは。

今日は、昼寝が長かったせいで、こんな時間に起きています。

「お客様は神様です」を、云い始めたのは、三波春夫で間違いありません。
初めてこの言葉を聞いた時は、背中がゾクゾクしました。
勿論、悪い意味です。
真偽は分かりませんが、奥方が考えた言葉と、聞いたことがあります。

でも、本人の意思とは違う意味で、世の中へ広まったようです。
下記は三波春夫のオフィシャルホームページです。
お暇なとき、ご覧ください。
その辺の事情が分かります。
こんなサイトがあることに驚きました。

http://www.minamiharuo.jp/profile/index2.html

2018/07/28 23:05:52

今晩は

さん

 私は一時期 デパートでの接客経験がありますが
「お客様は神様」が 死語になっても
「ホスピタリティー・おもてなし」は 尊大な人には
同義語でしょう

自分の思い通りになるのが基準値になっているので 
ほとんど毎日 不満なのでしょう 
ご自身が気付かないなら いつも口角を下げて 
不幸に生きてもらうしかないです 

もちろん
笑顔の素敵なお客さんの方が多くおられましたが^^

2018/07/28 22:02:15

客に媚びるあまり

パトラッシュさん

シシーマニアさん、
言い出した男が、よくなかったのです。
(一説には、三波晴夫とか)
それを無邪気に受け止めた、私達も、よくありませんでした。
死語になってほしいと、心から思います。

2018/07/28 19:57:59

世の中には

パトラッシュさん

漫歩さん、
何処にも、そんな輩は、居るようです。
傲岸であることが、自らの尊厳を高めているのだと、錯覚している男が。
私の付き合いたくない男、その最たるものが、夜郎自大の男です。

2018/07/28 19:48:48

良い子なのです

パトラッシュさん

四つ葉さん、
私は少年の頃に、新聞配達をやっていた一時期がありました。
だから、余計に、彼女らに、惻隠の情を、抱いてしまうのかもしれません。
色気も化粧っ気もない、素朴な女子です。
私が独身なら、お嫁さんにしたいくらいに……

2018/07/28 19:43:31

お客様は神様

シシーマニアさん

多分、この言葉は遠からず将来、死語となるのではないでしょうか・・。

言うまでも無い言葉として。


最近、色々な場所で、対応の丁寧さに驚きます。
郵便局、役所、バスの運転手、病院、等など。

子供の頃は、待たせられて当たり前の場所であり、何かこちらにミスがあれば怒られそうな相手でした。

それが今や、ことごとく、善人達の集まりで・・。


これは多分、ツイッター効果ではないでしょうか・・。

下手をすれば、顔写真入りで、匿名による非難がネットに載る時代です。


大変な時代に突入している気もします。
私などはまだ、先が短い。

でも、若い人達が、前途を悪意に寄ってつぶされることもあり得る時代だと、思わざるを得ません。


一人一人の言動の重みが、計れない時代の気もします。

批評力を養いながら発言する一文と、他人をおとしめるための一文との間の境界線が、余りにもうやむやになってきている昨今だと嘆かわしく思います。

2018/07/28 14:05:41

夜郎自大

漫歩さん

私は自大な者には敏感です。
身の回りにも、大から小まで結構居ます。他でも見聞します。
傲岸、思い上がり、品性劣悪さを自らさらけ出している愚かさ。その醜悪な姿には憐れみを感じています。

2018/07/28 10:31:12

労をねぎらう。

四つ葉さん

パトラッシュさんおはようございます。

本当に読ませて頂きどの職種も生活していく為には必要なものです。それに相手の立場が弱い事につけ込むのは許せないですね。

新聞配達の女子学生パトラッシュさんの声掛けに優しさに気づくと思います。

常に労をねぎらい感謝したいと思いました。朝から心あたたまるブログで気持ち良く過ごせそうです。

2018/07/28 09:28:05

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