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手紙 

2018年12月01日 ナビトモブログ記事
テーマ:テーマ無し

所属するSNSに「よろず相談所」というのがあり、
会員からの相談や、質問が寄せられる。
時に、思いがけないことが、そこに書き込まれる。

「手紙の書き方がわかりません」
相談者A子は、甥の就職のことで、友人の友人である、
B子の世話になった。
と言っても、実際に力になってくれたのは、B子の旦那である。
B子には、菓子折を持参し、お礼に行った。
しかし、旦那は、アメリカに単身赴任中だ。
電話ではなく、お礼の手紙を書きたい。
しかし、どう書いていいか、わからない。
特に、書き出しが、スムーズに運ばない。
どなたか、ヒントを下さるか、見本を示して頂けませんか。
という、お願いであった。

いい歳をした大人が、そんな簡単な手紙も、書けないのか……
自ら努力をしないで、安易に、他人を頼る。
今の世の風潮が、ここに垣間見える。
手紙離れも、ここまで来たのか……ということも、嘆かわしい。

私は、わけあって、手紙を書き慣れている。
礼状くらい、朝飯前に代筆してやれる。
しかし、それをやっては、彼女のためにならない。
私は、口も手も出さなかった。
当然ながら、その相談に対し、寄せられた回答はなく、
従って、ヒントどころか“模範文”を見ることもなかった。

相談所は、私にとって、世相を垣間見る場、
見せてくれる場であり、折あらば、覗いていた。
それが癖になり、今は、折なんかなくても、覗いている。

 * * *

手紙離れが進んでいる。
年賀状の発行枚数は、年々減少を続け、来年のそれは、
今年に比べ、約20%減であり、
最盛期のそれに比べ、半減に近付いているという。
若者ばかりでない。
私達シニアだって「年賀状は、今年限りとさせて頂きます」
なんて断わりが増えている。
況や、一般の封書や葉書である。

だからこそ、逆に、紙の手紙の価値が増す。
ということもある。
スマホやパソコンで見るよりも、紙に書かれたそれには、
情がこもっている。
手間ひまがかかっている分、ありがたみがある。
私はそこを計算し、手紙を多用するようにしている。

今の時期、喪中欠礼の葉書が来る。
毎年、何枚かは、必ず来る。
私はなるべく、その返信を書くようにしている。
特に、故人と関わりがあった場合だ。
私は、追憶の中に、逸話を交え、ご冥福をお祈りしますと伝えている。

後に、何かの機会に、言われることがある。
「ありがとうございました。
あのお手紙は、今も仏壇に供えてあります」
これこそ、手紙冥利に尽きる、というものではないか。

 * * *

南信州に、友人が一人居る。
かの地は、果実栽培の適地であるらしい。
夏から秋にかけ、多くのフルーツが、収穫期を迎える。
桃、ブドウ、メロン、梨、リンゴ、柿……
友人のMが、これらを送ってくれる。
彼が栽培したわけではない。
懇意にしている、農家から、入手してである。

ちなみに、酒は来ない。
かの地にも、地酒の、ちょっと良いのがあるのだが、
それは送って来ない。
理由は一つ、彼が酒を飲めないからだ。

今年は何回、Mからのプレゼントを受けただろう。
「いいの?こんなにもらって……」
「仕方ないだろ、送って来るんだから」
妻には、甘んじて、受け取るように言ってある。

果物が届く度に、私は先ず、メールで礼を言う。
これつまり「食前」の挨拶である。
それから数日後に、手紙を書く。
これつまり「食後感」である。

ただ「美味しかったです」では、芸がない。
どう美味しかったか、そこに比喩を交える。
例えば桃である。
それは、箱入りで、二十個ほどが、送られて来ていた。

「当初、硬かった桃が、大分やわらかくなりました。
気のせいか、甘みも増して来たように思われます。
柔らかい方が、食べやすい半面、少々硬い桃にも、
美味さがあります。
それを一言で言えば、歯ごたえ、そして瑞々しさでしょうか。

人間に喩えれば、まだ初々しさの残る、
少女を見るようなそれです。
一方で、年長の女性に、爛熟の魅力があるように、
熟した桃には、濃密さがあります。
どちらが好みか……それは、人によりけり……
ということになります。
ちなみに私は、どちらも好きです」

なんてことを書く。
誇張が入っていることは、言うまでもない。
これが、いけなかったかもしれない。
賛辞、それは人を勇気づけるものだ。
私はMを、果物が送られて来る度に、
勇気づけてしまったかもしれない。

同じ賛美は、二度と使えない。
果物は、また来るだろう。
年末にかけ、米が来る。
干し柿のブランドの一つである、市田柿が来る。
私は年内、あと二つほどの、賛美を考えねばならない。

「友人からの、贈り物の多さに、戸惑っております。
私の礼状が、彼からのプレゼントを、
誘発している可能性があります。
私は、手紙を出すのを、止めるべきでしょうか?」
こんな悩みを、よろず相談所に、書き込んでみようかと思っている。



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心機一転

パトラッシュさん

タンポポ@さん、
昔取った杵柄で、たまに、書かはったら、いかがでしょう。
タンポポ@さんなら、肺腑をえぐるような文が、書けること請け合いです。

2018/12/01 20:45:54

手紙

タンポポ@さん

こんにちは<(_ _)>
そうですね手紙書かなくなりました。
中学生の時は、ペンフレンドが何人も
いて手紙のやり取りが、楽しかったです。
もっぱらラインや時々のメールです。

2018/12/01 20:21:05

困りました

パトラッシュさん

風華さん、
新規の賛辞を見つけることが、困難になって来ました。
何か、適当なフレーズがありましたら、風華さん、教えて下さい。

2018/12/01 16:45:21

物くるるは……

パトラッシュさん

漫歩さん、
ありがとうございます。
彼は、徒然草に書かれた以上に、良き友です。
もらうばかりで、心苦しくはありますが、
この際、好意に甘えることと致しましょう。

2018/12/01 16:43:09

みごとです

風華さん

いつも経験に裏打ちされた記事に感心です。
今回も前半の「手紙の書き方がわかりません」に
昨今のブログ見て感じたことなので納得。
と、喪中欠礼の葉書の返信に「なるほど」の思いです。

>私は年内、あと二つほどの、賛美を考えねばならない。
パトラッシュさんなら文面に困らないでしょう。

2018/12/01 10:53:35

嬉しさを奪うべからず

漫歩さん

パトさんの信州の友人は好人物ですね。

送られた心底の喜びが必ず返ってくる。ご友人にはそれが何よりも嬉しいのだと思います。

これからも送られ続け、礼状を出し続けて下さい!

2018/12/01 10:41:10

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