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パトラッシュが駆ける!

壁に飾る 

2019年01月05日 ナビトモブログ記事
テーマ:テーマ無し

囲碁サロンの壁にある、カレンダーを張り替える。
それが大晦日の、慣例になっている。
カレンダーを買ったことはない。
全て頂戴したものばかり、その中から、
最も秀麗なものを選び、サロンの壁に張る。

カレンダーとは、日付を見るだけでなく、その上にある、
写真や絵を、眺めることにも意味がある。
新聞販売店などが配る、数字だけのカレンダー、
あれはいけない。
野球選手の、背番号の羅列のようであり、情緒も何も、
ありはしない。
数字が大きいから、それは、業務の現場などでは、
見やすくていいだろう。

私の囲碁サロンは、業として、やっているわけではない。
道楽のつもりでいる。
マイルームに、客を招き入れるのだと思っている。

招いたからには、快適に過ごして頂きたい。
そこで、サロンの一隅に花瓶を置き、
花を欠かさないようにしている。
湯茶の接待もやる。
人により、ビールと言うこともある。
さらには、清酒やワインさえも、常備してある。
カレンダーだって、客の目を、楽しませるものでなければならない。

毎年、ある証券会社の、名入りのそれを掲げていた。
系列の美術館に所蔵される、絵を用いている。
鏑木清方、伊東深水、奥村土牛、川合玉堂、小林古径、
速水御舟、東山魁夷、安井曽太郎、山口逢春などなど……
私は、居ながらにして、近代日本の名画に、親しむことが出来た。

今年もまた……と思っていた。
しかし、待望していた、そのカレンダーは届かなかった。
これまで寄贈して下さっていたのは、Wさん。
囲碁サロンの客である。
そのWさんが、十二月に入り、ぷっつりと、姿を見せなくなった。

 * * *

迎えるは、亥年である。
カレンダーのかかっていた場所に、
イノシシの絵を飾ることにした。
今は亡き、仏画家、牧晃圭さんの描かれたものである。
縁あって、私はそれを、十二年前に頂戴した。

干支の絵と言うのは、不便なもので、その年を過ぎると
「六日の菖蒲」となり、「十日の菊」になり果てる。
何時までも掲げていると、美意識どころか、
その人間性をさえ、疑われかねない。
怠惰、放恣の象徴としてである。

だからこの絵、十二年ぶりに、日の目をみたことになる。
次はまた、十二年後。
私はそれまで、生きて居られるだろうか。
「これが見納め」と思った方がいい。
何でもそうだ。
明日ありと思う心の仇桜……と言うではないか。

大晦日も、暗くなってから、W氏が現れた。
その手に何もない。
やはり……と思いつつ、一方で安心もした。
ここでカレンダーを差し出されると、私はまた、
イノシシを飾る場所を、考えねばならない。

「いい絵がありますね」
「はい」。
私はW氏に対し、いそいそと、絵の由来を語った。
牧先生が、フランスのミレー展で、凱旋門賞を受賞したり、
日本では、文部科学大臣賞を得ていることなどを、
さながら我がことのように語った。

「カレンダーをお持ち出来なくて、すみません」
「いいえ。今年は趣向を変え、この絵で、行こうと思います」
「かつての部下が、次々退職しましてね。
もう、貰えなくなりました」
W氏は、もしかすると、責任を感じていたのかもしれない。
彼はこれまで、持参する度に、その名画カレンダーを自慢していた。
「どうです。いい絵ばかりでしょう」
これを文字通り、自画自賛ということになる。
そのカレンダーを提供出来ない
それで暫く、姿をくらましていたのかもしれない。
名付けて「カレンダー責任」
そんなものは、紙の如くに、薄いと知るべきだ。

痩せても枯れても、私だって、一城の主。
カレンダー如きに、不自由するわけがない。
しかし、名画のそれに比べるや、どれもこれも、見劣りがする。
それならいっそ、イノシシ方が良いということになる。

問題は、利便性だ。
「次は、10日に来たいと思いますが、
せんせ、いらっしゃいますか?」
「ちょっとお待ちください。えーと……10日はと……」
客にスケジュールを問われ、もそもそと、手帳を繰る。
あるいは、奥に引っ込み、新聞店からもらった、
例の不粋なカレンダーを眺める。
これが、一年間続く。
神将に扮したイノシシが、槍を構える、その絵を見ながら、
私は、善後策を、考えあぐねている。



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手ごたえを感じています

パトラッシュさん

漫歩さん、
本日、打ち始めを致しました。
小学一年生と、三年生が来ました。
どちらも、伸びそうです。
イノシシの神将をバックに、私も頑張るつもりでおります。

2019/01/05 15:03:17

製作経費

パトラッシュさん

喜美さん、
頭で覚えられないのは、まったく同じです。
スケジュール表を、のべつ眺め、それでも忘れてしまいます。嗚呼……
息子さんの会社も、経費節減ですか……
それは残念ですね。
意外にかかるものらしいですね、カレンダーを作るというのは……

2019/01/05 15:00:49

さすが生活巧者

パトラッシュさん

吾喰楽さん、
そつがないですね。
私は、スマホにしたものの、依然、使いこなせておりません。

2019/01/05 14:56:25

イノシシ効果

漫歩さん

神将に扮したイノシシの雄姿が、向こう1年間囲碁教室の生徒を鼓舞する。

嬉しいですねえ。

今年は有望株が続出しますよ。

2019/01/05 12:14:54

カレンダー

喜美さん

カレンダー我が家も毎年息子の会社
のを掛けていますけれど彼が言うのに
来年からは会社で出さない事にしたとか 此れも大変お金も掛かるのでしょうから仕方ありません
私は眼に付く所に(お勝手)簡単で字の大きく書き込みの出来るのが一番好きです 頭で覚えられなくなりました

2019/01/05 11:26:53

カレンダー

吾喰楽さん

居間には、国立演芸場のカレンダーを掛けてあります。
予定を記入できる数字だけのは、台所。
理由は、云うまでもありません。
少ないとはいえ、偶には来客があります。

外出予定は、スマホの予定表をお勧めします。
非常に使い易いですよ。

2019/01/05 11:03:39

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