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人生いろは坂

ミツバチの羽音と地球の回転 

2011年07月24日 外部ブログ記事
テーマ:テーマ無し



 上映会に来てみないかとあちらこちらからお誘いを受けながら、何故か観に行く気になれなかった
映画である。

 その理由は、原発などと言う社会的な問題を扱った映画にありがちな、反対の立場からだけと言う
偏ったものが多くて、この手の映画を見飽きていたからである。

 私は長く原発反対の立場に立ちながら、単なる反対運動だけの映画は見たいとは思わなかった。その
考えは私自身の偏見であったことが、この映画を見て分かった。

 鎌仲ひとみ監督は山口県に建設途上の上関原発の反対運動の拠点になっている祝島にカメラを据え、
島民の日々変わらぬ生活をカメラで追いながら、今では島民の生活の一部となっている反対行動を
ドキュメンタリータッチで撮っている。

 島民の上関原発反対運動は20数年間にも及ぶ。むろん島民の中にも賛成派も少なくない。そうした
賛成派との軋轢もあって長く続いてきた島特有のお祭り「神舞」にも支障を来すこともあったようだ。

 島は他の瀬戸内海の島々と同じように高齢化と過疎化が進んでいる。その中でもUターン組の若者
夫婦もいる。彼は確たる人生観を持ち島に帰ってきた。そして父親と共に反対運動の先頭に立っている。

 この映画は福島の原発事故の前に作られた。映画の中で中国電力の関係者から「あなた達島民の将来
のために建設する」のだという言葉が繰り返されるが、福島の原発事故後の今となってみれば、その
言葉は実に空々しく聞こえてくる。何という皮肉であろう。

 上関周辺は豊かな漁場である。そして瀬戸内海ではほとんど失われてしまった豊かな生態系が残って
いる。いわば生物のホットスポットである。ここを原発のために埋め立ててしまおうというのである。
そうなれば永久に生態系は失われ、豊かな漁場は二度と戻ってこない。

 祝島と上関は海をはさんでわずかに3キロほどの距離である。今回の福島原発の事故を考えれば完全
な被災地になることは間違いない。島根原発と言い上関原発と言い日本の原発は一般の居住地に近すぎる。

 さて、この映画は原発反対運動と島民の日常生活を追いながらも持続可能社会とは何かをテーマに
している。この映画の狙いは原発反対だけではなく、あるいはこの持続可能社会の方にあったのかも
知れない。

 便利で豊かな生活を望むあまり、私達は持続可能と言うことを見落としていたのではないだろうか。
資源は使ってしまえば、それで終わりである。リサイクルにも限界がある。また、ゴミとして燃やせば
大気を汚し地球温暖化の原因になる。

 地球上のあらゆる資源が乱開発され減少傾向にある。地球温暖化や資源問題だけでなく、そうした
社会の在り方について、人間本来の生き方の問題として警鐘が鳴らされている。

 実は北欧の決して自然条件が良くないある村で画期的な試みがなされている。この村の資源と言えば
再生可能な森林資源と有り余る風力である。風を使って巨大風車を回し、森林資源を活用して熱を作り
各家庭に配っている。

 そして酪農で発生した家畜の糞尿や家庭の生ゴミを使ってメタンガスを作り燃料にしている。村の
住民にしてみれば有り余るほどのエネルギーを手にしている。酪農もロボットを導入し給餌から搾乳
まで全て自動化している。こうして時間的なゆとりも出来ている。

 実は、これが未来に向けての持続可能な社会の在り方なのかも知れない。生活の質を落とすことなく
気候変動に対応できる生き方である。

 これと同じようなことを実行して成功した事例が日本にもある。それは高知県と愛媛県の県境にある
梼原町という山間部の小さな町である。

 町の主たる産業はわずかばかりの棚田と牧畜、そして林業である。この町のカルスト台地に大きな
風車を二基建設したことから持続可能社会へ向けての取り組みが始まった。

 映画の中の祝島でも持続可能社会への試みが行われている。豚の力を借りて生ゴミや商品にならない
農産物の処理をしている。その上、豚たちは、かつて農地であったところに放し飼いにされている。
豚たちは与えられるエサだけでは満足せず荒れ地の草を食べ、せっせと根まで掘り返してくれるのだ。
やがて荒れ地はきれいな農地に戻っていく。見事なまでの労力を要しない無動力による農地の再開発で
ある。

 「ミツバチの羽音と地球の回転」は、声高に反原発を叫ぶ映画ではなく、坦々として実に説得力の
ある素晴らしい映画であった。この映画を観た故松田優作氏婦人の美由紀さんも絶賛している。

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