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筆さんぽ
Such is life
2024年04月27日
テーマ:筆さんぽ
バスとはいうけれどひどくおんぼろで、窓にはガラスがなく、入り口にはドアがなく、年増太りの古猫のような腰をふりふりあちらへよろよろ、こちらへふらふらしながら走ってゆく。
タイの北の少数民族を訪ねたときに乗ったバスのことである。
ちょっと大きな石に乗りあげてガクンと体をふったらそのとたんにバラバラになるのではないかと思った・ほどである。
客は土地の人が・ほとんどだが、一日に数本しか走らないというからか、ぎゅうぎゅうで、入り口のステップに鈴なりにぶらさがっているが、窓から顔をつきだしてどうにか呼吸している者の流れる汗をぬぐおうとしても手をあげて払うこともできず、ひたすら忍耐している。窓の上に目をやると、欧米のバックパッカーが書いたのだろうか、黒いフェルトペンで「Such is life」とあった。
ふつう「世の中はそんなもんだ」と訳すのだろうが、ぼくはちょっとちがう。
「人生は、むなしい」と、日本的には考えたい。
高校生は受験勉強に励み、大学生は知力、体力をきたえ、サラリーマンは会社のために人生のほとんどの時間をささげ、主婦はあしたのレシピを考え、若い母親は、母乳を飲まないこどものために四苦八苦、そして定年後のオトコたちは、妻は「なによいまさら」と、散歩にもつきあってくれないので、テレビの大谷のホームランに大喝采している。バカみたいと、妻や息子、娘、そして町内会費集金にきたお隣の奥さん。
そうではあるが、
「人生は、むなしい」と、お釈迦さまにいわれなくても、だれもがわかっている。でありながら、人はけなげにも世を捨てない。
なまはんかなお坊さん(ごめんお坊さん)より私たちのような凡夫(ごめん、ぼくだけかな)のほうがエライのは、人生のむなしさ知っていながら、そのむなしさの上に自分の人生を日々構築してゆく点にあるのではないだろうか。
これに自分流の哲学をもって臨めば、さらにエライ凡夫になる。凡夫にランクはないか。
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