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パトラッシュが駆ける!
人は見かけに
2013年01月11日
テーマ:テーマ無し
妻は、テレビが好きだ。
キッチンで仕事をしながら、のべつテレビを見ている。
器用なもんだ。
背中で見ている。
大根を刻み、それを鍋に放り込みながら、しっかりと見ている。
「どうなってるの?」
わからないことがあると、私は妻に聞く。
大阪市の高校生の、自殺問題なんかにも、詳しい。
聞けば、大抵のことが分かる。
私はテレビをあまり見ない。
最近とみに、そうなっている。
今流行りのバラエティ番組、あれが先ず嫌いだ。
そして、その嫌いなのばかりが、各局に溢れている。
ニュースだけは、見ようとするのだが、これも最近、
気が入らなくなっている。
冒頭に、政治の動向が報じられ、そうすると、
政治家が出て来るからだ。
その顔々が見えると、途端に鬱陶しくなる。
出来もしないことを、また言っている・・・
腹が立って来る。
これでは、身体によくない。
すぐにチャンネルを、変えることにしている。
しばらく避難して、政治家が去った頃に、再びニュースに戻る。
津波警報が出るや、その都度、高台に避難するようなものだ。
そんなことばかりを、私はやっている。
* * *
「これって、スマホのコマーシャルに出てる、彼女じゃないか」
「そうですよ。女優が本業なんだから、ドラマにだって出ますよ」
「これはドラマか?」
「そうですよ。NHKでしょ、火曜ドラマですよ」
妻はさすがに、よく知っている。
若い女と、中年女の会話に、隠語が頻りに出る。
「前があるから」
前とは、前科のことらしい。
となると、二人とも服役者であったらしい。
美人であり、両者とても犯罪者には、見えないのだが
若い方は昏睡強盗、年増の方は、
人を殺した“マエ”があるらしい。
社会復帰の難しさ。
テーマはこれだと、すぐに私は、察しを付けた。
しかし、ドラマは明るいのである。
テンポもいい。
重苦しいテーマのはずなのに、なんとなく、
二人の前途に光明が見えている。
私は、ニュースに戻るのを忘れ、いや、忘れはしない、
こっちの方が面白そうだと、そのまま見続けることにした。
避難したところの避難所が、意外に快適で、
今さら陋屋に、戻りたくない。
そんなようなものだ。
知らない世界を覗く。
これがドラマを見る際の、大いなる楽しみだ。
服役者の社会復帰、それも若い女の、となれば、
これを確かめたくなる。
私はどうも、来週もこの「出所後ドラマ」を見ることになりそうだ。
その題名すら知らないのだが、来週その時になれば、
分かるであろう。
* * *
「前科者の社会復帰ってえのも、大変なんだな」
「そうですよ。社会の目は、厳しいですから」
「家族だって、縁を切りたいだろうな」
「そうですよ。犯罪者の肉親ってだけで、そりゃ、
世間に肩身が狭いでしょうから」
「保護司も大変なんだ」
「そうですよ。Tさんだって、苦労しているはずです」
「呑気そうに見えるがな・・・」
「尊敬してあげなきゃ」
「出来ないんだな、それが」
Tは、同じ町内の商店主であったが、今はリタイアして、
保護司をやっている。
保護司とは、犯罪者の更生に力を貸す、
有志の民間人と聞いている。
私とは、囲碁の関係で、つながっている。
ボランティア仲間と言ってもいい。
その囲碁ボランティアに対し、Tが熱心でない。
たまにしか、姿を現さない。
片手間にやっている感がある。
「やるなら全力投球をしろ。いやいややるくらいなら、
最初からやるな」
私は、物事に対し、全てこう考えている。
中途半端が何より嫌いだ。
「はっきりしなよ」
何時か、Tに向かい、こう言ってやろうと思っている。
「やめなさい」
妻が止める。
「あの人なりに、考えてるんでしょうから」
好きにさせなさいと、こう言う。
「あんな調子じゃあ・・・」
私には、Tが保護司をやっていること自体、信じられなかった。
簡単なことに対し、いい加減な人間が、
重大なことを、やり遂げられるものだろうか。
一事が万事ということがある。
そういう頭がある。
だから、町内のSから、Tについての話を聞いた時は、耳を疑った。
晴天の霹靂であった。
「Tがね、今度、叙勲を受けることになった」
「へえ、褒章か・・・」
「いや、勲章だ」
「へえ・・・」
聞かなくても分かる、その理由は保護司であろう。
その功績であろう。
どうやらTのやつ、仕事はきちんとやっていたと見える。
「ボランティアの方は、息抜きだったのかもしれませんよ」
「うーん・・・」
それでは困るのだが、仕方ない。
社会への貢献度となれば、それは保護司の方が、
はるかに高かろう。
それにしても、Tは何も語らなかった。
そりゃ、個別の事案については、守秘義務もあるだろう。
しかし、まんざら知らない仲ではない。
愚痴の一つくらい、こぼしたっていいではないか。
もしかしたら、意外な傑物なのだろうか。
にわかにTの、その人となりを、量り兼ねている。
困ったことになっている。
* * *
たまたまぶつかった番組に、オッと思わされることがある。
テレビだって、まんざら捨てたもんではないと思う。
しかし、ではもっと真剣に、テレビを見ようかとは、ならない。
平均すれば、見たくない番組の方が、多いからだ。
たまたま縁のあった人間に、へぇーと思わされることがある。
あいつもまんざらの男では、なかったかと思う。
しかし、まだわからない。
当分、尊敬は、しないでおこうと思っている。
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勲章はほしくない・・・
民生委員もそうですが、保護司も無給です。
無給で人を使うには、何かを与えねばなりますまい。
それが、「名誉」なのですね。
行政も、しっかり計算をしています。
私は、名誉がほしくないので、やりません。
とは、建前です。
本当は、激務に耐えられそうも、ないからです。
2013/01/12 08:42:43
勲章
保護司さんで勲章となればその貢献度は大きかったのではないでしょうか
縁がいない世界ですが、名誉欲をくすぐるお金で買える勲章が多いのも事実かと思います
>「ボランティアの方は、息抜きだったのかもしれませんよ」
いい加減んなら止めれば良いのにね
でもって、私はいい加減なのでボランティアはやりません
2013/01/11 10:12:17