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パトラッシュが駆ける!

ときめかない 

2013年02月15日 ナビトモブログ記事
テーマ:テーマ無し

「女房と畳は、新しいほどいい」
昔、よく言われたものだが、昨今は、あまり聞かない。
それもそうだ。
世の中に、畳というものが、少なくなっている。
今時は、畳を踏まないで、生活している人の方が、多いのではなかろうか。

女房を、新しいのに換える。
そんなことは、夢みたいな話だ。
結婚しない男女が増えているというのに、自分だけ、
二度も三度もなんて、虫が良すぎる。
男の願望として、それは、よくわかるのではあるけれど。

だから、戯言としても、そこに現実感がない。
だから、使われないと、そういうことだろう。

 * * *

旅に出ようと思っている。
それで、少し考えている。
焦っている。
やるべきことを済ませ、後顧の憂いを無くして、旅に出たいからだ。

私が師と仰ぐ、山口瞳さんは、旅が決まるや、書き貯めをやっていた。
連載物の小説やエッセイを、前倒しで書いてしまい、
それを編集者に渡し、それから旅に出る。
その時の解放感がいいのだろう。
実際、旅行記の冒頭に、そんなことが、書かれてあったりした。

私も真似したいのだが、書き貯めは、寝貯め、食い貯めと同じく、
容易に出来ない。
才能と努力、その両方が足らないのだから、どうにもならない。
旅の中の時間を、有効に使えないだろうか。
そうだ、携帯用のパソコンを買おう・・・
思い付くのは、このくらいのことだ。

今度の旅は、ちょいと遠くへ行く。
新幹線で行く。
四時間半ほど、乗りっ放しになる。
これがローカル線ならともかく、新幹線の中は退屈だ。
話し相手は居ない。
スピードがあり過ぎ、車窓の景色にも親しみが湧かない。

それなら車内で、雑文でも書いて居ようか。
しかし恐ろしいことだ。
今の私は、紙と鉛筆では、ものが書けなくなっている。

手紙でさえも、パソコンで下書きし、それをペンでもって、便箋に書き写すくらいだ。
長年、パソコンのディスプレイにばかり、向かっていたせいだ。
習性とは、恐ろしい。
紙と鉛筆では、想さえも浮かばなくなっている。

 * * *

「それなら、タブレットはどうですか?」
店員は、こんなおじさんにも、最新の機器を勧める。
「いや、キーボードがないと、頼りなくっていけない」
「じゃあ、これなんか」
洒落た、小さなノートパソコンを指差した。

値段を見たら、十万を超えている。
冗談ではない。
そんなものを買い込んだ日には、妻に何と言われるか。
ただでさえ、その顔色を窺いながら、旅に出ようとしているところだ。

「一番安いのは?」
「中国製になりますけど」
「仕方ないな、この際」
「それに、ワープロソフトも入っていません」
「別売りであるだろ」
「こちらへどうぞ」
店員め、しぶしぶ案内する。

「これも、一割引きになるの?」
「はい、本日までです」
「決めた。これでいい」
「15.6インチは、携帯用には、大き過ぎませんか?」
「大きいことは、いいことだ」
「重さが2.8キロあります。重くありませんかぁ」
「山登りに行くわけじゃ、ないんだ私は」
店員め、よほど売りたくないと見え、人が買おうと言うのに、水ばかり差す。

 * * *

パソコンを買ったのは、これが4回目だ。
これは当然なのだが、買う度に、興奮しなくなっている。
十数年前に、初めて買った時は、大変だった。
買う前からして、大いに悩んだ。
この私に、使いこなせるだろうか・・・
使いこなせなかったら、みすみす二十万からの金を、どぶに捨てることになる。
買おか止めよか、買おか止めよか・・・
つぶやきながら、秋葉原の町を、行ったり来たりした覚えがある。

興奮とは、これも当然ながら、その価格に比例する。
その後、パソコンは、値下がりの一途を辿っている。
かつての高嶺の花が、次第に花でなくなり、今や、
そこらに生えている、雑草程度になってしまった。

四台目ともなると、もう、かなり冷めた目で、新しいパソコンを見ている。
梱包を開ける時の“ときめき感“これがない。
忙しいから、立ち上げるのは、来週にしようか・・・
使うのを、先延ばしするくらいだ。

中国製と言うこともある。
我が国の艦船やヘリコプターが、中国海軍によって、レーダー照射を受けたと聞く。
まったく・・・
腹が立って仕方ない。
北京のスモッグが、風に乗り、我が国に飛来すると言う。
何という国だ・・・
ますます腹が立つ。

それなのに嗚呼、私は、中国製品を買ってしまった。
金のためとは言え、慙愧に耐えない。
仕方ないよなあ・・・
新しいパソコンを前に、私はため息をついている。

 * * *

「女房とパソコンは、新しいほどいい」
こんな冗談を言ったのは、二台目を買った直後だ。
その頃は、まだまだ、嬉しかった。
どうだ、いいマシンだろ・・・
人に自慢したくなった。

三台目でも、それはあった。
性能がアップし、スピードが増したことがある。
ディスプレイが、大きくなったこともある。
それらが、ときめきにつながっていた。

四台目に至り、それらがなくなった。
何しろ、パソコン売り場で、最も安かったという頭がある。
文章さえ書ければいい。
使えるだけ使い、故障でもしたら、さっさと放り出してやろう。
そういう魂胆で居る。

パソコンでよかった。
これが女房だったら、えらい騒ぎになるだろう。
戯言に女房を持ち出すのは、もう止めた方がいい。
この、女性の強い時代である。
ろくなことにならない。

その、ときめかないパソコンを携え、私は近々、旅に出る。
こんなことで、ときめきのある文章が、書けるだろうか。
その辺が、気がかりではある。



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面白い

うどんスキさん

何しろ、面白い‼
パソコンを始めて迄2年に成らない、68歳です。
此の長文、何分で書かれる、のでしょうか?
いや貴方取っては、長文では無いですね。
小生に取っては、大変な事ですが、ロウマジで入れるのですが、字が分からない、小文字が解らない
漢字を選ぶのに迷う、妻に見せると、文章の内容で無く、誤字、脱字、ばかり見つける、腹立つ、なのに、貴方は長文で、その上内容が素晴らしい、尊敬します。 私も諦めずに、少しずつ、コツコツが小生の信条です。

2013/03/01 11:26:45

もう、替えようもありません

パトラッシュさん

みのりさん、コメントを、ありがとうございます。
ええ、もちろん、感謝しております。
おかげさまで、仲よくやっております。(笑)

2013/02/15 19:41:16

携帯が苦手です

パトラッシュさん

我太郎さん、拙文をお読み頂きまして、ありがとうございます。
私は、タブレットも携帯も、その小さいゆえに、苦手なのです。
重くても、かさばってもいい、大きなノートパソコンを持って、旅に出ます。
リュックに入れて、背負ってしまえば、何とかなると思います。

2013/02/15 19:39:03

ときめかない〜〜?!

みのりさん

パトラッシュさん

>「女房と畳は、新しいほどいい」

男性は良く思うようですね!

でも考え方で 良くここまで付いてくれたと
感謝もできるのでは〜〜♪

残り少ない人生を仲良くお過ごし下さいね〜♪

PCは新しいほうがいいですね〜♪

2013/02/15 15:15:56

便利な時代ですが

我太郎さん

もう買ってしまったようでいかな?

>15.6インチ、重さが2.8キロ

確かに大きいと扱いやすいですね
私のカメラは約2.5kg
結構重いです
旅行の目的は分かりませんが荷物になりますねえ
私はブログを携帯で下書きしてメールで送って、コピペして編集しています
ブログと小説では一緒に出来ませんが、携帯だと荷物にはなりません
何度も書いては送りの手間は、電車の暇つぶしにはもってこいです
ブログのコメント返信も返礼も電車の中が便利です
紙に書かないと言うのは文字を忘れる原因で、努力して手書きしないと、と思っています

2013/02/15 12:49:05

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