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パトラッシュが駆ける!

ツアーつれづれ 

2013年07月20日 ナビトモブログ記事
テーマ:テーマ無し

出発予定の、八時を過ぎている。
「すみません、まだ、お見えにならないお客様がおります。
もう少々、お待ち下さい」
若い女性の、添乗員が言った。
「私、この仕事には、まだ慣れていません」
その顔に、そう書いてあるようにも、見える。
「でも私、一所懸命にやっております。マニュアルの通りに」
そう、言っているようにも、聞こえる。

「少々って、何分よ?」
前席のおばさんが、ぶつくさ言っている。
高架下の駐車場であり、排気ガスが籠るから、
バスは、エンジンを止めている。
だから、冷房が、かかっていない。
蒸し風呂のような、バスの中で、時間を守った客が、
がん首並べ、守らない客を待っている。

やっと現れたのが、熟年の夫婦だ。
それに、息子と思われる男が、一人付いている。
今時、珍しい組み合わせだ。
「あいつは、独身だな」
「嫁さんが居たら、親となんか、来ないもんね」
衆目は、たちまち、一致してしまう。

「当分、結婚出来ないな、あれじゃ」
「このまま、一生かもしれません」
「親の遺産を、食いつぶして行けばいいさ」
今後の人生まで、予測されてしまう。

「お待ちしてたんですよー」
先ほどのおばさんが、三人に向かい、声をかけた。
歓迎の辞でないことは、言うまでもない。

言われた方は、母親が代表し、しきりにエクスキューズを言っている。
男二人は、きまりが悪いのか、そっぽを向いている。
その家庭内が、見えるようだ。
いざとなると、役立たずなのである、男ってやつは。

それにしても、気の利かない一家ではないか。
もしも私だったら、どうするか・・・
バスに乗るや否や、すぐに乗客全員に向かい、
「すみませんでしたー」と、頭を下げてしまう。
先に謝られたら、尚も追及しないのが、日本人の良いところだ。
日帰りツアーとは言え、長時間を、一つバスの中に、
過ごすからには、仲良くやりたいではないか。

いや、その前に、この私に限り、遅刻することはない。
これだけは、自信がある。
何しろ、気が短いのである。

 * * *

群馬県に、吹割の滝というのがあり、それを見に行かないかと、
妻が言い出した。
ツアーの広告から、見つけ出したらしい。

「5980円なの。それで昼食が付くの」
「大した飯じゃ、ないだろ」
「それが、赤城牛のすき焼きだって言うの。
それから、夕食も付くんだって、お蕎麦の」

こういう時、私はつい、笑ってしまう。
ウマい話には、裏があるものだ。
その手に乗るもんか・・・
詐欺に遭わないようにと、普段から、そればかりを考えている。

「でも、K社だから」
妻は、詐欺ではないと言う。
彼女は、ツアーのベテランだ。
友人と何処かへ行くとなると、決まってこの会社を利用している。
値段の安さに驚くことはない。
このデフレの時代に、それは、珍しくないのだそうだ。

気は進まないけれど、仕方ない。
私は妻から誘われると、大概、これを断らないでいる。
家庭平和ということが、常に念頭にある。
私は普段、放縦を繰り返している。
気が向くと、さっさとリュックを背負い、旅に出てしまっている。
ランニングシャツの画家、山下清さんほどではないが、のべつ放浪している。
妻が留守宅を、守っていてくれればこそだ。
その誘いを断ることは、出来ない。
熟年離婚を求められるくらいなら、ツアーに付き合うなんぞ、
何ほどのことでもない。

 * * *

先ず、あじさい公園とやらに行き、園内を散策した。
それから、一時間ほど走り、吹割の滝を見た。
近くの休憩所において、すき焼きも食べた。
牛肉がたっぷり入っていたけれど、それが赤城と言う名の、
ブランド牛なのかどうか、私にはわからない。

困ったことになった。
感激と言うものが、薄れている。
我が家で食べるすき焼きの方が、ずっとうまい。

広い岩盤の川底を走った水が、岩の裂け目に、三方から流れ込み、
白い飛沫を上げている。
滅多にない滝ではあるのだが、息を飲むほどに、
驚くということがない。
東洋のナイアガラ?・・・
これが?・・・
醒めた目で見ている。

バスはまた、一時間ほど走り、谷川岳ドライブインに着いた。
何をするのかと思えば、ショッピングである。
それが終わると、夕食の蕎麦を出してくれる。
まだ日の高い、午後4時にである。

地図を見ると、土合の駅が近い。
かつて、そこから歩いて、谷川岳に登ったものだ。
残雪の頃であった。
初秋のこともあった。
上越線の夜行列車で着いて、そのまま暗い道を、
湯檜曽川に沿い、歩いたものだ。
ツアーから離脱し、その道を歩くことが出来たら、
どんなにいいだろうと思った。

ドライブインからは、一人一人に、お土産までくれる。
地元産の野菜と、果物だそうで、これがずっしりと重い。
「これで、採算が合うんですかね?」
前席のおばちゃんに、聞いてみた。
「ちゃんと合ってるのよ。皆さん、お土産を買うでしょ、たっぷりと。
それで旅行会社には、マージンが入るの」
だそうである。

皆さんが、嬉々として、ツアーに加わっているのに、
私だけが、醒めている。
その良さがわからないでいる。
私はきっと、変人なのであろう。
5980円・・・
そうだなあ、値段相当だなあ・・・
頷きながら、帰りのバスに揺られている。



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ツアーは女子で持つ

パトラッシュさん

レファさん、こんにちは。
女性はツアーがお好きなようで・・・
これきっと、「上げ膳据え膳」だからでしょうね。
主婦の皆さんには、これが日頃の、ストレス解消となるのでしょう。

男は、上げ膳にも、慣れているもので・・・

2013/07/23 19:14:39

同じ思いあります^^

レフアさん

読ませて頂きながら同じ思いです
>ツアーから離脱し、その道を歩くことが出来たら<
私もあります!あります!
一度夫を誘ってみました
リピートは駄目だと言われてしまいました
でもお友達に誘われて行きますよ〜
女性はバスの中のおしゃべりが楽しいのです
あとショッピング、わぁ〜わぁ〜いいながら楽しみ〜
女性は食事は二の次なんですね
パトラッシュさんは変人ではありません^^
殿方はみな同じ思いですよ

2013/07/23 12:23:43

結構ですね

パトラッシュさん

ミルフィーユさん、こんにちは。
お読み頂きまして、ありがとうございます。

男の料理が、意外に美味い時があります。
これは、「手間暇を惜しまない」「材料費をけちらない」など、市場原理とは、離れたところに存在するからです。
家庭料理が、町の飲食店より美味いと思われるのも、
これに似たところがあります。
これは、大事なことです。
料理ナルシスト、大いに結構だと思います。

2013/07/22 10:34:03

楽しく読ませていただきました

ミルフィーユさん

パトラッシュ家の安泰の訳がこれで良く分かりました。
カウンセリングは全く必要なしですね。

感激が薄れて来ていることを、私も時折感じます。
家ご飯が実は一番美味しいのも然りです。
(私って、なんて料理上手なんだろう・・笑)

動けなくなって、居間で日長一日のんびり過ごすのが極上と感じる様になるまで、もう少しうろつき続けようと思います。

2013/07/22 06:30:06

家庭平和のため・・・

パトラッシュさん

秋桜さん、こんにちは。

外で食事をした時に、我が家のそれよりも、美味くない。
これが、困るのです。
がっかりしてしまいます。

本当は、ツアーになんぞ、行きたくないのですが、晩年の安泰を目指し、時たま頑張ることにします。

2013/07/20 18:24:48

ふふ、わかるような気がします。

秋桜さん

文章を拝読していて、わたしもツアーに
行った気分になりました。
感激が薄れる・・・
あります、感じます。

お肉ならば、そりゃぁわが家でのそれに
越したことはありません。
安心素材ですしね。

群れて、おみやげやさん。
若いころは皆と同じようにバスに戻るとき
なんらかの袋をぶら下げていました。
いまはアイスクリームぐらいかなぁ。

ツアーの様子、どこも似たような感じですね。
奥さま孝行、おつかれさま。
晩年は安泰ですね^^

2013/07/20 10:36:11

喜美さんこんにちは

パトラッシュさん

女性は特に、ツアーがお好きなようで・・・
車内は、8割が女性でした。
中には、お腹の大きな人も・・・

2013/07/20 10:30:20

ツアー

喜美さん

私も友達や主人を誘って よくいきました
やはり安くてお土産まであるのなんか飛びついちゃいました 食べ物まずくてもいいの
友達とお話ししながら がやがやがいいの
道の駅にでも止まったらまた嬉しい
土地の珍しいものに会えたり食べたり
別れてからも お茶のみ二次会
今はそれも出来ません

2013/07/20 10:01:07

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