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パトラッシュが駆ける!

ああ釣果 

2013年08月16日 ナビトモブログ記事
テーマ:テーマ無し

鱗を取る。
鰓から包丁を入れ、頭を落とす
腹を開く。
ここまでは簡単だ。
中骨を取り去る。
これに難渋する。
昔やったはずなのに、手順を思い出せない。

アジやサバなら、簡単だ。
ざっくりと、三枚に下ろせばいい。
イワシならもっと簡単だ。
柔らかいから、手でさばける。
本日は、キスが相手だ。
それを松葉の形に、開こうとしている。

一匹捌くのに、何分もかかってしまう。
三十数匹ある。
このペースで行ったら、二時間もかかってしまうだろう。

背後では、妻が、目を光らせている。
キッチンは、彼女の城であって、そこを荒らされるのを、警戒しているのだ。
鱗は、そこらじゅうに飛び散り、臓物は、シンク内に散乱している。
不承不承、その使用を認めたものの、きれい好きの、彼女の心中は、
穏やかでないはずだ。

 * * *

N氏が、キス釣りに行くという話は、前に聞いていた。
「せんせ、キス食べますか?」
私の囲碁サロンで、碁を打っている時に、言った。
自分だって、歯医者をやっていて、先生であるのに、
私に向かって、せんせと言う。
碁に関しては、私が、教える立場だからだ。
互いに先生と呼ぶのも、変だから、私はNさんと呼んでいる。

「食べますよ。大きいのは、糸造りにすると美味いですよ」
私だって、キス釣りくらい、やったことがある。
当然、調理も、自分でやったものだ。

乗合船に乗ったり、時には浜でボートを借り、沖に漕ぎ出す。
短い竿を振り、軽く投げる。
海底に着いた仕掛けを、ゆっくり引いて来ると、その途中で、
キスが餌に食いつく。
メゴチのこともある。
「来たぞ」
小さな魚ながら、その引きは強い。
竿先に伝わる、この時の感触が、何とも言えない。

しかしその後、キスを含めた、釣りそのものから、遠ざかってしまった。
理由は特にない。
多分、他の遊びに、軸足が移ったのであろう。
私の人生では、よくあることだ。
よく言えば、変わり身が早く、悪く言えば、浮気性なのである。

「頂きますよ、何匹でも」
N氏に言った。
私には、さもしいところがある。
特に、食べ物と酒だ。
ただでもらえるものなら、何でもいい。
とりあえず、我がものとしておき、食べ切れなければ、
他へ回せばいいという頭がある。

私の見聞によれば、釣り師ほど、自慢の多い人種はない。
「釣り天狗」という言葉があるくらいだ。
「このくらいの大物が・・・」
両手で、五十センチを示した時には、三十から四十センチと思えばいい。
数だってそうだ。
「昨日は、百匹釣った」と言ったら、それは、六十から七十匹と思えばいい。
釣果がなく、おめおめと帰れないのだろう、魚屋に寄る者も居た。

「ぼくは、キス釣りには、少々、自信があってね」
N氏が言ったので、ああ、この人もかと思った。
自信のない釣り師なんか、この世に存在しないと思った方がいい。
「釣れなかった」のは「たまたま、魚影が薄かったから」であり
「天気が悪かったから」でしかない。

「じゃあ、夕飯のおかずは、用意しないで待ってます」
N氏に言った。
この時に、私は少し、笑っていたかもしれない。

 * * *

本日午後、四時前のことであった。
「せんせ、これ」
N氏がサロンの戸を開け、にやりと笑い、ポリ袋を差し出した。
ずしりと重い。

「こんなに?」
「ええ、本日の釣果の、一部です」
N氏が、「一部」のところへ、力を入れて言った。
それからである。
私の苦闘が始まったのは。

「今日は、ハンバーグにするつもりで、用意してたんだけどね・・・」
「明日にしてくれ。今日は天ぷらで頼む」
この際、女房に頭を下げるよりない。

先日の私の笑いが、本日の事態を、招いたのかもしれない。
それにしてもN氏、いったい何匹釣ったのであろうか。
疑えば、きりがない。
もしかしたら釣果の全部を、私のところへ、運んで来たのではあるまいか。



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魚は新鮮に限る・・・

パトラッシュさん

トパーズさん、
正に格闘でした。
うっかり貰うんじゃなかったと、後悔しながら。

しかし、食べたら美味かったです。
さすがに釣りたての魚でした。

2013/08/23 07:18:04

キスの天麩羅

トパーズさん

30尾のキスと格闘しているパトラッシュさんの
姿を想像したら、フフフ・・・・でした。
新鮮なキスの天麩羅、さぞ美味しかった事でしょう。
超羨まし〜い!

2013/08/23 01:22:30

坊主

パトラッシュさん

釣果なしを、坊主と言い、周囲の手前、沽券に係わると、思った人も、居たようです。

我太郎さん、私より、大分ベテランのようですね。
私は、やらない釣りの方が、多かったです。
鮎、ヘラブナ、タイなどなど・・・

2013/08/17 13:46:36

釣り

我太郎さん

小鮒釣りし、から数えれば60年になります
池から船までやらなかったのは、鮎とトローリングというくらいの何でも屋でした
デジカメやり出して釣りは休業?ですが、何時でも再開出来るように用具の手入れはしています
あまり上手くはなく、せいぜい大きくて40cm、数は30も釣れば大漁でした

>釣果がなく、おめおめと帰れないのだろう、魚屋に寄る者も居た。

何のためかは聞きませんでしたが、仲間に一人いました
自慢たらしい人ではなっかんですが、嫁さんのご機嫌取り?

2013/08/17 07:26:59

なーるほど

パトラッシュさん

ビニール袋が役立つのですね。
気づきませんでした。
これぞ、生活の知恵ですね。

天ぷらは美味いのですが、そうそうは揚げきれません。
そこで一夜干しにしました。そうすると水分が飛んで、これも、酒の肴に絶好でした。
(どっちにしても、飲み過ぎてしまう・・・)

2013/08/16 15:36:27

喜美さん

良いなあーそんな新しいのはありませんけれど 少し太ったのがあると必ず買って天ぷらにします ハンバーグ何て高いから勿体なくて作ったことありません 美味しいわね 考えただけでも鱚のてんぷらが浮かんでいます

鱗は大きなビニール袋の中でこしらえると中にたまります 外は汚れません 

2013/08/16 13:52:36

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