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パトラッシュが駆ける!
秀吉vs.勝家 in my salon
2014年01月18日
テーマ:テーマ無し
「ぼくは、口の達者なやつが、嫌いなんだ」
A氏が、憤然として言った。
その語気に、圧(お)されるように、B氏が黙った。
A氏は、はっきりと、ものを言う人だ
その直截な性格は、碁にも表れる。
彼は盤上の、どの局地戦においても、妥協と言うものをしない。
強気一辺倒に戦う。
彼はまた、いわゆる、名人気質の歯科医であるのだろう。
患者に対し、厳しいことを言い、時には、治療を断ることも、あるらしい。
そんな医院の内情を、私が聞きもしないのに、しばしば語る。
歯に、何かを被せるのが、その仕事であろうに、自分は「歯に衣着せず」でやっている。
B氏は、そんなA氏の性格を、知っていなかった。
挨拶代りに、軽い冗談を飛ばしたつもりであろう
しかし、B氏の冗談は、時に、軽くないことがある。
「おや、先生でしたか。私はまた、やくざが現れたかと思った」
これは、よほど親しい仲でないと、通用しない冗談だ。
確かに、精悍なA氏の顔に、黒メガネがかかっていれば、
反社会的勢力風に、見えなくもないのだが。
「あはは」
笑い飛ばしてくれると、B氏は、思ったのであろう。
ジャブのつもりで出したパンチが、ストレートとなり、その顔面に、
当たってしまったようなものだ。
B氏に悪意のないことは、私もわかっている。
A氏の憤りもわかる。
それで、困っている。
お二人とも、私のサロンの、常連客である。
客同士、出来れば仲良くやってほしい。
しかし、当分だめだろう。
碁は、勝負を争うゲームであり、ただでさえ、激しやすい。
* * *
「清州会議」という映画を見た。
信長亡き後の、織田家の跡目相続を巡る、重臣達の協議である。
いや、協力なんかしないのだから、争議あるいは、
謀議と言った方がいい。
羽柴秀吉と、柴田勝家の対立を軸に、そこにお市の方、
丹羽長秀などが絡み、権謀術数が入り乱れる。
随所に、現代風会話を交え、その決着までを、コミカルに描いている。
娯楽映画として面白い。
妻は途中で、舟を漕いでいたが、私は最期まで、飽きなかった。
剛毅な性格の、勝家にとって、秀吉の調子の良さは、鼻持ちなるまい。
先輩であり、格上である、自分を差し置いて、何を出しゃばるかと、
それこそ、虫唾が走るように、腹立たしかろう。
その存在自体を、認めたくないくらいにだ。
人を嫌うとは、突き詰めると、そう言うことであろう。
勝家の怒りを見ながら、私はA氏を思い出していた。
元々、B氏の剽軽なところを、苦々しく思っていたのだろう。
だから、ジャブが飛んで来た、この際とばかりに、
ストレートを打ち返したものと思われる。
一方で秀吉は、勝家を苦手としつつも、不倶戴天の敵とは、
思っていない。
暗殺の気配を察するや、それを企てた勝家の居室に、
ちゃっかり逃げ込んでいる。
死中に活を、求めるようなものだ。
考えてみれば、飛び込んで来た窮鳥を、剛毅の者が、
手にかけるわけがない。
巧妙な秀吉は、その辺を、すっかり読んでいる。
「豪胆なやつめ」
さすがの勝家も、秀吉には、舌を巻くことになる。
両者かすかに、気脈が通じるところも、あったのだが、
そこはそれ、その人となりが違う。
後に、賤ヶ岳において、両者が戦うのは、やむを得なかったと思われる。
* * *
私が、B氏と打っている時、ガラス戸越しに、人影が見えた。
顔は見えないが、その小太りの身体でわかる。
A氏だ。
その足が、一瞬止まりかけたが、次の瞬間には、踵を返していた。
逆の場合もあった。
B氏もまた、A氏が対局中と見るや、そそくさと去って行く。
彼もまた、その顔は見えなくても、その腹部の出具合で、彼とわかる。
我がサロンの、秀吉と勝家、どちらも少し太っていて、タイプとしては似ている。
もしかすると、そこに、同類嫌悪があるのだろうか。
困ったことだが、仕方あるまい。
所詮、囲碁の付き合いだ。
賤ヶ岳なんてものが、ないだけ、良しとしなければなるまい。
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類は類を・・・
世の中には、いろいろな人がいますね。
その中でも、特に個性の強い(変人ともいう)
お二人が、出くわしたわけです。
もっとも、それを言えば、席亭もかなりの変わり者です。
これを、類は類を呼ぶと、こういうのかもしれません。
2014/01/20 20:48:51
たまげました。
紳士のサロンでもいざこざが起こるのですね。
両者とも狭量と言えば狭量。
先に「○○ザ」という言葉を発した方も不味かったですね。でもこの場合か視界と同音異義語の方の苛烈な生き方が良くない方向に作用してますね?
せっかくのサロンに気まずい空気が流れては台無しというもの。サロンの皆様も大変ですね。
2014/01/20 20:10:57
笑って別れればいいのですが・・・
トパーズさん、何時もお読み頂きまして、ありがとうございます。
「たかが囲碁」なのですが、勝負がかかるゲームでもあり、遺恨も生じやすく、昔(江戸時代)、刃傷沙汰に発展したこともありました。(笑)
2014/01/20 09:58:37
当分・・・
風香さん、何時もお読み頂きまして、ありがとうございます。
女性と違い、男の争いは、からっとして、
和解も案外簡単なことが、少なくないのですが、
今度ばかりは・・・
サロンでかち合わないように、当分気を付ける以外にありません。
2014/01/18 13:27:01
雪と違って
秋桜さん、さっそくにお読み頂きまして、ありがとうございます。
どちらかが、一歩引けば良いのですが、
男には、面子という、厄介なものがありまして、
一度こじれると、修復は難しいです。
豪雪だって、何時かは雪解けするのにねえ・・・
2014/01/18 13:23:06
いつもながら
興味深く読ませていただきました。
どこかで読みましたが、
女の仲間うちの争いは意地悪や仲間はずれ程度だが、
男は社会からの抹殺まで進むと。
そうなると、子供の喧嘩以上に厄介ですね。
A氏とB氏、お互いの垣根が低くなることも難しそうです。
2014/01/18 11:38:50
同類嫌悪?
まぁ、サロンのなかでいろいろ人間模様が
あるのですね。
百戦錬磨の殿方でも、いや
それだからこそ受容するというのが
小憎らしいのでしょうか。
パトさんは、お困りでしょうが
微笑ましく感じてしまいました^^
2014/01/18 11:17:27